第21話

文字数 709文字

アールブブリュットという言葉はポコラートを通じて私も知った。アールブリュットとは、既存の美術や文化潮流とは無縁の文脈によって制作された芸術作品の意味で、英語ではアウトサイダーアートと称されている。加工されていない生(き)の芸術、伝統や流行、教育などに左右されず自身の内側から湧きあがる衝動のままに表現した芸術である、と説明されている。フランスの画家ジャン・デュビュッフェによって考案された言葉だ。artは芸術brutはワインなどが生(き)のままである様子いうことも補足しておこう。正規の美術教育を受けていない人が自発的に生み出した、既存の芸術のモードに影響を受けていない絵画や造形のことである。

 とてもデリケートなカテゴリーの言葉のようで精神を病んだ者による芸術、というニュアンスは持ってはいないが、精神の療養の手段として絵を描くなどの創造行為が有効であるとしばしば考えられるため、治療の一環として描いた絵が後にアールブリュット作品として評価を受けるというケースが多い。したがって、このような条件を満たす作品の多くが結果的にそのような人々によるものなのである。

 ジャン・デュビュッフェの言葉に「芸術はわれわれが用意した寝床に身を横たえに来たりはしない。芸術は、その名を口にしたとたん逃げ去ってしまうもので、匿名であることを好む。芸術の最良の瞬間は、その名を忘れたときである。」アーリュブリュットの概念と根幹なのであろう。またジャン・デュビュッフェいわく「われわれが目の当たりにするのは、作者の衝動のみに突き動かされ、まったく純粋で生の作者によって、あらゆる局面の全体において新たな価値を見出された芸術活動なのだ。」と。
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