第20話

文字数 967文字

ポコラートvol.2での入選を機に私は何か自分が欲していた表現を満たすことができ、自分にも形ではっきりしない自信がついた。その入選した作品は自分の高校時代の物であったけれど、そんなことどうでもよかった。それから展示が終わるとあっという間に2012年になってしまったが私は十数年ぶりに画材屋に赴き、一そろいのデッサン用具から色鉛筆画や水彩画や油彩画の道具を少しずつ買い足していった。もちろんスケッチブックもキャンバスもだ。三月から四月にかけて入院してしまったが、退院するとあっという間に数点の油絵を描いた。特にF20号というサイズで描いていた。四月は近くの横浜公園のチューリップが何万本も鮮やかに色彩取りどりに咲いていて、その公園の様子を描いて「憩いの公園」というタイトルで四月に公募して締め切りの県展に出品した。残念ながら選外という結果だったがコメントが添えられて嬉しかった。そのあと立て続けに第十三回日美絵画展の公募に亡くなった祖母を描いた人物画「教育者マリア・ジョセフィン・くに」を出品した。こちらは入選し、国立新美術館で八月に展示されることになり、大変嬉しかった。この頃から近所のベテラン講師の絵画塾に通うようになった。デッサンを描いている。今もデッサンを引き続き描いている状態だ。八月頃に年齢的にぎりぎりだったシェル美術賞の公募に二点出品したがこちらはまた選外になった。次々と創作意欲に掻き立てられ精力的に描いていた。

 そして二〇一二年のポコラートvol.3の全国公募が始まった。私は最大の五作品を応募した。昨年の人生の転機となった公募だけに結果を待つのがドキドキだった。結果が昨年と同じようにメールで送られた。私は一点入選することができた。その作品は「8月15日 
 終戦のインスピレーション」というタイトルのF20号の油絵だった。嬉しいことに今回もまた二〇一二年ポコラートVol.3に展示することができた。
 今回のポコラートvol.3は全国公募ではあるが謳い文句のキーワードが前回と少しことなった。前回は「障害のある人×ない人×アーティストが、自由な表現の場を目指してつくる全国公募」だったのに対し、「アールブリュット? アウトサイダーアート? ポコラート?  福祉×表現×美術×魂」というキーワードを織り込むことになった。
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