第3話

文字数 909文字

私は通学し始めて三週間経った。学校へ近付くと、自分は今から授業を受けに行くのだがキャンパスからは明るい表情で楽しそうに昼間の学生が出てきたりする。すれ違うと寒い風が自分の心の隙間を抜ける。

私は通学中、心の中でいつも思っていた。
「あー、昼間だったらな。こんなに自分は成績が悪そうに見えるだろう、とか変に惨めにならないのに。」
と。このように夜間=惨め、成績が悪そうに見える(しかも付属校から上がってだと特に)とこのことばかりが頭をよぎって要するに受験の敗北者感を味わっていた。

その気持ちは通学の度に強くなり、とうとう両親に「大学を辞めたい」と伝えた。困惑した両親はしばらく考えて休学にしたらどうかと提案した。私はその提案を受けることにした。

一年間、休学したからといって私自身も私の周りも何一つ変わらなかった。私は休学の間、自宅からバスで四十分くらいの距離にある手作りケーキが有名な喫茶店でウェイトレスのアルバイトをしていた。週四日か週五日くらいフルタイムで入っていたのでオーナーは私服にエプロンが基本の喫茶店だったが私のために「制服を作ったほうがいいかもね」と言いながら一年経ってしまった。

そうこうして復学の準備をしなくてはいけなくなった。一年間という休学期間で特に建設的なことは何もしなかったけれど、一年という時が私の二部への学歴コンプレックスを解決してくれたことは大きい。学校に復学するにあたって、私の決意はまずはダイエットだった。痩せすぎの身体ではもともとなかったが明らかに太ってしまったのだ。当時流行ったエステサロンにお金を生まれて初めて何十万も費やしたが全く効果がなかった。そこで自分なりにダイエットの仕方を考えて運動量を増やして元の体重に戻すことができた。なんだかそれだけで気分が明るくなった。そして復学したのだ。

新しい仲間と新鮮な授業。私は心身ともに回復して以前のような、一年前のような自己卑下した感情を持たなくなった。

 お堀に沿って咲いているほのかなピンク色のそめいよしのの下で新入生の歓迎会をやっているサークルがいくつもある中、私は履修要項を鞄に入れて仲良くなった友達より一足早く夜桜の道を去って行った。
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