第2話

文字数 928文字

大学の内部からの進学の可否を決定する学期末試験の二週間前に祖母が亡くなった。亡くなるまでは祖母の介護のために睡眠を削って看病したこともあった。一度だけ徹夜をして点滴が外れないように兄と見守る番もした。身近に医師の親族が多かったため、在宅で点滴など打ちながら介護していたのだ。徹夜は生まれて初めての経験でこんなに辛いものなのかと十七歳の私は思った。大切な試験前だし、時間に追われているようでひとりで焦っていた。

また、学校の体育会系のようなのりの硬式テニス部で後輩との人間関係にものすごく悩んでいた。今思えば、取るに足らないことなのだが、青春という時期を濃厚に過ごしていたのかもしれない。後輩からは私たちの方針に従えない、と突っぱねられた。今は後輩との軋轢なんて全く感じないのだがその時は真剣そのものだった。自分自身が先輩としてどう思われているのかも不安になるし、人間不信に陥った。

そうこうしているうちに学期末試験が始まり、私は二日目で精神的に変調をきたしてしまった。睡眠がいっさい取れない。翌朝、母に「学期末試験を休んでいい?」と小さくか細い声で尋ねた。母は私の様子を察して、少し驚いていたが了解してくれた。しばらく・・・数日間休んでいると心の健康が危うくなっていった。母は私に精神科を受診することをすすめた。

暗い精神病院で長々と医師と話している私。三時間があっという間に経ち、ひとりでこんなに長く話していたことも気づかないくらいだった。医師は「状態はすぐよくなるでしょう。経過を見ていきましょう。」と話したがその数週間後には入院しているとは夢にも思わなかった。

十七歳の私にとって当時の入院生活はどうしようもないほど辛かった。真っ暗闇のむき出しの便器がひとつ置いてある窓もない部屋、保護室に隔離もされた。一日が長く長く感じた。あまりの辛さに泣き叫んでいた。ときには足でバンバンと鉄の扉を蹴ったりもした。

そんな暗い、過ぎ去った話はもうやめたい。

ようするに学期末試験が受けられなかったために私は法政大学の二部、夜間のコースに入学することになったのだ。付属校の友達のほとんどは昼間の時間帯に勉強する。なんだか、エスカレーター式で二部だと成績も悪いようなイメージだ。
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