第8話

文字数 699文字

 春が過ぎて私は大学三年の半ばに入り、自分はこの大学生活で何をしてきただろうか、と自問自答した。一年生のときは良い成績が取れたが次第に怠け心が現れたため、自分のやってきたこと、主に大学生活での学問に対しずる休みをしたりして無駄にしてしまったことを反省しているうちに鬱っぽい症状になり始めた。通学では駅のホームで電車を待って立っていると、もういっそのこと死んでしまいたい、など思って飛び込む自分を想像しては、「いや、これはよくない。家族が心配してしまう。父が私の死のショックのあまり気が狂ってしまうのではないか」そう感じて家族の愛情のみが私の死への衝動を抑えてくれた。私はまた入院することになった。

 大学四年生になり今まで取れていなかった履修項目がいつの間にか増え四年生は毎日連続で授業を受けていた。精神的な体調はあまり良くなく、心配した父親は高齢なのに授業が終わって地元の最寄りの駅に着く夜十一時四十五分くらいに毎日車で迎えにきてくれた。この頃英文学を授業で取っていてその授業が私には楽しかった。イギリス文学の話が多くて有名なシェイクスピアなどはもちろん抜けていないがとにかく私はその授業が好きでイギリスに憧れていくようになった。

 無事、卒業論文もとおり、卒業が決まった。二部にいる自分、夜間のコースに通っている自分が嫌でコンプレックスを持っていたが無事卒業できることは嬉しかった。卒業式は袴をはいて近所の写真館で朝早く写真を撮ったあと、式にでた。武道館だ。今ではなんだか心の景色が昔とは違う。辛いのは乗り越えられない自分だったのだ、自分の現状を悲観して他人と比較していた弱い自分だった、と思った。
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