資格

文字数 512文字

もはや、私が行くべき場所ではない。
それは、十分わかっている。

でも、今。
自分を受け止めてくれるのは、
あそこしかないのだ。

小さい頃は、毎日のように通った。
美味しいご飯が食べられるというだけで。
いや。
私に辛くあたる母親といる時間が減るというだけで。

お陰さまでなんとか高校を卒業し、就職もできた。
稼げれば、こっちのもんだと思っていたが、そう甘くはなかった。

母親にせがまれ、お給料の大半を渡す。
何に使っているのかわからない。

学生時代、人とのつき合いで、崩壊していった私。
いい気になってそれを忘れていた。
仕事とは、人とぶつかり合ったり、意味のない干渉で成り立っているものだと思い知らされた。

私の足は、自然にそっちの方に向く。
もう、私の居場所なんか、とっくにないのに。

店の入り口まで来てしまった。
ドアの横には、黒いボードが架かっており、白と蛍光色のピンクで文字が描かれている。

ーーーーーーーーーーーーー
    子供食堂

    だけども

子供みたいな大人も大歓迎!
ーーーーーーーーーーーーー

店長独特のヘタウマ文字が、涙でかすむ。

ドアを開けると、コワモテでひげ面の顔がニコッと私を迎え入れる。

おかえり。よく来たね。
キミのもう一つのお家だよ。
と。

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