ヒヤチュー vs 全マシ

文字数 893文字

「俺、冷やし中華やめるわ。」
なんだいきなり。
といっても、このアニキの唐突発言は今に始まったことではない。

「なんでまた?」
「どこかで聞いたことがあるかもしれないけど、冷やし中華と、醤油ラーメンのカロリーと糖質を比べたら、どちらも冷やし中華の方が高いらしい・・・あくまで一般論だが。」

あー、ネットかなんかで見たことある。
でも・・・この場面でそれを言う?

「アニキさー、ここがどこで、アタシたち今何食べてるか、わかってる?」
「ここは、ラーメン・メガ郎。食っているのは、極モリ全部マシマシ。」
アタシは、小盛りを頼んだが、名前はあてにならない。普通のラーメン屋さんの大盛の量は十分にある。

かわいい妹よ昼メシを奢ってやるぞ、というので喜んでついてきたのが間違いだった。

アニキの決意に水を差す。
「きっとこれ、冷やし中華の倍以上のカロリーあるよ。こっちをやめればいいじゃん。」
「お前、わかってないな。」
むっとして答える。
「あのさー、一応アニキの健康のこと思って言ってんだけど。」
「いいか、よく聞け。冷やし中華はなんかサッパリしてるし、生野菜多いし、体によさそうなイメージあるだろ。」
「まあ、確かに。」
「だから、食べても安心してしまうんだ。ああ、ヘルシーな食事だったって。」
「まあ、確かに。」
「一方どうだ? 今の気持ちは?」

アタシは、まだ半分以上麺が残っている丼に視線を落とす。
「そうだね・・・あーやっちまったなーとか、なんか体に悪いことしてるなーとか。」
「そうそう、その『罪悪感』こそが大事なんだ。」
「そういうもん?」
「ああ、アタシ、イケナイことしちゃった。しばらく食事の量、セーブしなくちゃいけないわって思うだろ。」
「何でオネエ言葉だかわからないけど、説得力があることは認める。」
アタシは三日は食事制限しようと決意する。

何とか小盛りを食べ終えて、店を出た。アニキは極モリ全部マシマシを普通に完食だ。

「あー、久々にやっちまったなー。」
「アタシ、今日は夕ごはん、いいや。ていうか、食べられない。」

「俺もセーブしないとな。今夜は、コンビニの冷やし中華単品でヘルシーにいこう。」
「おい、ボケ度もマシマシかよ!」
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