カレー ヒストリー

文字数 677文字

「はい、今日のカレーは、パパの通っていた高校の正門前にあった、米米亭の、サラサラポークカレーだよ。このカレーはね・・・」

パパの作るカレーのレパートリーは、大変豊富だ。
今まで食べたきたカレーの中で、思い出深い味を再現してるそうだ。
だから、カレー皿とともに、思い出話が食卓に供される。

小学校に上がる前、パパのママ(わたしのおばあちゃん)が病気で入院した時に、その間世話してくれた叔母さんの、子供には辛すぎたカレー。

サッカーの試合で大ミスをして、しょげて家に帰ったら、パパのママが作ってくれた、『追い』リンゴとはちみつ甘々カレー。

中学の宿泊野外学習で作った、大振り人参ジャガイモ・ゴロゴロカレー。当時好きだった女の子と一緒に作ったそうだ。

その他、
ママと神田の古本屋巡り初デートの時に食べた本格インドカレー、
私が小さい時、初めて食べさせた、ア◯パンマン・デコレーションカレー、
出張先で食べた、青いカレー、白いカレー、
などなど。

全部、パパの超個人的歴史秘話付きだ。
正直、パパの蘊蓄話はどうでもよくて、家族みんな辟易してるけど、まあ美味しいから我慢して聞いている。

私が嫁いでいく前夜も、パパのカレーだった。

「はい、どうぞ。」
「?」

いつもの、カレーヒストリーがない。
カレー自体は、オーソドックスな欧風ビーフカレーだ。

「これで、おわカレー。」
「なにその親父ギャグ?」
「これからは、カレー(旦那)と一緒に、新しいカレーの味と、想い出を作っいってくれ。」
「親父ギャグ連発かよ。
 ・・・このカレー、ちょっと辛すぎない? 涙が出るわ。」
「はは、そういうことにしといてあげよう。」

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