39*天武天皇と神々の話

文字数 1,548文字

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 和歌山県(紀伊国)、奈良県(大和国)から離れた愛知県(尾張国)の熱田神宮の摂社に高座結御子神社がある。創建は天武天皇で、熱田神宮と同時。伊勢湾に面した愛智に建ち、愛智はオハリ族の本拠という。祭神は高座結(タカクラムスビ)の神。タカクラジ。熱田大神の子神。熱田大神は、出自不明の神で、色々な説がある。
 オハリ族の祖神はホノアカリとアマノカグヤマ。ホノアカリは、神話でニギハヤヒと同神。畿内に天ツ日神以前の日神を祀る神社がある。祭神の天照御魂神、天照神は、女神でなく、男神のニギハヤヒ、またはホノアカリという。
 アマノカグヤマはニギハヤヒの従神。降りた後にクリヒコ、タカクラジと名のる。
 オハリ族も出自不明の一族で、一説に九州北部の海人族が移り、大和国高尾張を本貫とする。高尾張は天ツ軍がまつらわぬ土雲(土蜘蛛/八束脛大蜘蛛)を討ち、葛城と地名を変える。葛(カズラ)を編んだ網で討ったという地名。後にオハリ族は愛智に移る。強制移住と考えられる。
「つ、土雲の長は女が、多い。長が戦に出た後に、む、村を守るのは巫、長の母、姉妹、娘だ。し、神話で、トミビコの妹が、新城の姫と、か、書かれてる」
「え、そうなの?」
「ああ、た、高尾張に蜘蛛塚が。ある。甦らないように、あ、頭、胴、足を刻み、祀った」
 名草の姫と同じ。
 オハリ族は愛智で勢力を拡げる。后妃供給一族となり、外戚となる。14代仲哀天皇の小碓皇子(ヤマトタケル)は天ツ神に抗う西国(熊曾)、東国(東夷)の征討を行った。その東国征討軍の副将は、オハリ族の長イナダネヒコで、軍功を挙げて尾張国を治める。尾張国は中ツ国の東の境界にある。東国に対する防衛で要所。
「あ、天ツ神は西国の、従う熊曾(隼人)に西国、東国の、し、従う東夷(俘囚)に西国の征討に遣わした。イ、イヅメと同じ。毒で毒を、せ、制する」
「笑えない」
 そしてイナダネヒコの妹は小碓皇子の妻となる。イナダネは稲種と書く。稲の種。妹を嫁がせて稲の種になる。
「し、しかし小碓皇子は、こ、皇位を継ぐほどの、強い力と強い心を持ってたが、い、伊吹の山神に、殺された」
 オハリ族は、がんばって更に勢力を拡げる。40代天武天皇へ援助を行い、壬申の乱で軍功を挙げて熱田神宮の宮司となる。伊勢神宮に次ぐ権威のある神社となる。天武天皇の即位で宮処は飛鳥(奈良県高市郡明日香村)となる。
「し、しかし高市皇子は、こ、皇位を、継げなかった」
 天武天皇の皇后、草壁皇子の母親の41代持統天皇に殺されたという説もある。そして若く14歳即位の42代文武天皇の父親は草壁皇子。持統太上天皇(史上初の太上天皇)のもとで政(マツリゴト)を行った。

 神話で、タカクラジは神話で高天原の神剣を授かり、天ツ軍に渡す。
 ニギハヤヒは国ツ大神に成るために必要だったけど、下賜はなかった。
 神剣は、フツの剣といい、ニギハヤヒを祀る神社にある。
 神話で、もう一振の神剣が書かれてる。アマクモの剣、またはクサナギの剣といい、伊勢神宮から熱田神宮へと移る。曰くのある神剣で、なぜかフツの剣と同じ神社にある、と。
「わ、笑える。タカクラジは2振の神剣に、か、関わってる。神代三剣の、も、もう一振はスサノヲの剣だ。こ、このハバギリの剣も、同じ社にある。そして三剣はイセとコシに、か、関わる」
 伊勢国と高志国。こ、この思わせぶりな展開は……。

 天武天皇死後、オハリ族は嫡子がいながら、神託を受け、熱田神宮の祭祀を婿養子に譲り、歴史からいなくなる。
 高座(高御座)は天皇の御座所。高座結の神は、高座とオハリ族、アヤ族を結ぶ神。または高座の下に座る神。または高座に座れなかった神。信じるか信じないかは私しだい。
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