回収
文字数 1,058文字
空中で待機していたヘリの下部分に取り付けられたコンテナが地面へ降りていく。地上わずかになったところで、片面の正方形が開く。
中からは人影。
国館の建物周辺を囲うコンクリートに足をつけると、正面の玄関へ歩を進めた。すぐに倒れている二人の人影をみつける。
ウォンダーザー中尉とカーター少尉を確認…。
近付いて身状態を確認する。
横向きに倒れるウォンダーザー中尉の前にしゃがみ、仰向けに動かして傷の部位を確認する。肩からかなり出血している。仰向けにさせた時に手についたかもしれない。ゴーグルからも血が垂れた。よく見ると片目をやられている。
傷を開かないように、反対側の肩を背負ってとりあえずコンテナに運ぶ。人をただ運ぶなら楽々に2人はいけるが、傷を気遣い……ながら運ぶとなると、1人で手一杯だ。
ウォンダーザー中尉をコンテナ内のベッドへ運ぶと、再び外に出てカーター少尉の回収に向かう。
カーター少尉は背中を丸めて倒れていたため、腕にケガがないことを確認してから起き上がらせた。腹部を縦に大きく切られている。だが服が体に密着しているため、内臓までは出ていない。
カーター少尉の脇に腕を挟んで立たせてから運ぶ。万が一内臓がもれることがないように丁寧に運んだ。
外の2人を運びきってから、館内に目を移した。
…あ、ヨセフ少尉。
壁にもたれかかっているガイゼリン少尉をみつけた。
足を思い切り切られているようだったので、肩を貸そうかと近付いて手を出そうとしたが、手の平で制止された。
俺は自力で行くよ。
え、でも脚が…
僕がそう言うと、ガイゼリン少尉はケガをしている側の脚の太ももに手を添える。
片足だし。
大胆…。
大げさに肩を落としてみせた。
そんな僕の様子は全く気にせず、ガイゼリン少尉は奥に倒れている…ウィリアムズ大尉を指した。
お前はこっちを持ってけ。
物じゃないんだから…と思いつつウィリアムズ大尉の様子も確認する。
ウィリアムズ大尉も腹部…
と、首だ。
そう言われてみると、首の方向に違和感を感じる。骨がやられているのだろうか。確認のために屈んで軽く触れる。感触も違和感があった。
これは…、絶望的ですか…。
ああ。
そっと背負う。背負った瞬間、息のおとが聞こえた。
あれ。
…どうした。
壁を頼りに立ち上がって進み始めていたガイゼリン少尉はこちらへ振り向く。
息、ありますよ。
え…
ガイゼリン少尉は体ごとこちらに振り向き、壁に背中をうった。
運だか強度だか…。
まったくだ。
ガイゼリン少尉は再び前を向き直して進み始めた。そしてぼそりとつぶやく。
…貸し１だな。
