病室[2]

文字数 620文字

次のは絶対、行かせて下さい。
 拳を固く握り、ベッドの中央に座りながらも前のめりになって、横の椅子に座るメデゼンに訴えかける。

 メデゼンはため息をついた。

今のところ結局一回も症状がみられない。
なら……!
そんなに行きたい?
はい。
 決意揺るがずというようにハッキリと答えた。

 するとメデゼンはさっきのため息と比べより長いため息をついた。

…しょうがない、今回ばかしは反対理由が浮かばないわ。

上に通したげる。

ただ、そこで却下されたら諦めて。
と言ってもラギーの表情は全く変わる様子がなかったので、付け加える。
それでも諦めきれないならあなた自身で訴えに行って。

私はそこまで関与しないわ。

そこまで言うとメデゼンは指をぴんと立て、ラギーの腹部に向ける。
ただ、脇腹を怪我していることを忘れないこと。
あ、あぁ……。
ラギーは腕を軽く上げて怪我のほうを見る。
もう忘れてたってふうだけど。
ええ。
正直だわ…。
 メデゼンは浮遊端末を開き、メールのあて先に大将を選択する。
とりあえず上に連絡しておくから。
お願いします。
まぁ、今の状態だし、そんなに拒否されることもないでしょうけれど。
…願っています。
よし、と言うとメデゼンは椅子から立ち上がった。
とりあえず連絡を待ちなさい。
そう言うとくるりと回転して扉のほうへ向かう。

そして出る直前で上半身だけこちらへ向ける。

大人しく。
とどめをさすようにキッパリと言った。

ラギーに言葉が刺さったのを確認してからまた向き直り、扉から出て行った。

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登場人物紹介

ラギー・ミレイズ(中尉/少佐)

 自由な行動をとり、謙虚な性格。

精鋭部隊の隊長であったが、とある作戦で部下を失ってしまったショックなどで自殺をしようとした。しかし直前に回収に来た兵士によって阻止された。ザースは当時の部下の1人。

 彼女がいた、というがまだ誰かわからない。

ザース・ウォンダーザー(中尉)

 頭が良く正義感が強い。基本冷静な判断をするが、無茶をすることもしばしば。

銃の扱いや常識人さに定評がある。

もともとはラギーらと精鋭を組んでいたが、ラギーが記憶を失ってからは同僚として一緒に行動している。

メデゼン・イラスティア(救護班長)

 どの兵士とも仲がよく、親しい。

熟練の観察眼と馴れた手さばきで多くの兵士を救ってきた。面倒見もいいので、兵士たちの良い相談相手にもなっている。優しいが厳しい面もある。

エナ(動力源)

 日本につかわれていたところを連合軍に保護された。

大人しい性格だが、自分の意思は意外にはっきりしている。

日本にくる以前の記憶がおぼろげらしい。

日本軍では海軍の艦の動力源(昔でいう石油などの代わり)として艦に乗せられていた。〈機器に繋ぐことによって〉

ジュンメス・カーター(少尉)

 少し楽観的な思考をもつ。あまり頭脳派でない。

第六感が鋭く、危機的な状況になると消極的になる。

ヨセフ・ガイゼリン(少尉)

 名家ガイゼリンの長男。本人はガイゼリン家を嫌っている。ベーミンにはそれについて性懲りなく何か言われるので毛嫌いしている。

頭が良く、冷静に物事の判断を行う。周りを冷たく突き放すこともあるが、根本は仲間思い。

ベーミン・ウィリアムズ(大尉)

 常に陽気でよく他人をからかう。ガイゼリン家について少し知っていることがあるらしく、ヨセフによく絡む。

平等な立場を好むため、階位を表に出されるのを苦手とする。

デンジャラスじゃない、とMAの作戦をサボることがよくある。元少佐だったがその休みすぎの影響で落とされた。

佐竹(日本軍兵士)

 常に冷静な判断を下し、上司に忠実。

刀と風を使いこなしている。刀術については上司に習った。

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