作戦通達(3)

文字数 1,253文字

呼ばれた理由は察しているだろうか。
 正面からみて左から、ベーミン・ウィリアムズ、ジュンメス・カーター、ザース・ウォンダーザー、ヨセフ・ガイゼリンと座っている。その机をはさんだ前には大将が座っていた。
んー…なんかやらかしたかねー
 ベーミンが茶化す。しかし大将は真顔で受け流したため、ベーミンは首を振ってみせた。

 それを横目にザースが問う。

……次の作戦、ですか…。

でも、このメンバーとは?

精鋭だ。
びし、と人差し指で前に座る兵士らを指した。
…精鋭?
へぇ
で、も、精鋭って5人じゃなかったです?
ジュンメスは手で5を表してみせる。

大将は頷いた。

勿論5人いるぞ。
(まさか…!)
本人の要求だ。

ラギー・ミレイズ中尉、彼が残りの1人だ。

4人が一斉に驚きの色をみせる。
もう作戦に出れるんですか…?
あぁ、問題はないそうだ。
雄姿に期待、ですねー。
だが、くれぐれも無茶はさせないように、と言われている。
ベーミンは全身で呆れを表す。
あいつにゃ無理だろうけど。
大将は目をつむり、否定をしなかった。
というかなぜ、日兵を一掃した後の調査をわざわざ精鋭で?
大将は浮遊端末で情報を確認しながら答えた。
センサに反応があった。

前回日兵が集まっていたという1F中央辺りだ。

誰が……
ヨセフは顎に手を当てた。
そこが確認できないからだ。
堂々と情報不足を公言した。

ベーミンがからかうように大将に向けて人差し指を回した。

いつも肝心なところが謎ですねー
大将はちらりとベーミンを見たが、再び端末に視線を戻した。
だからその”肝心なところ”を調べてもらう。

そして地下室の存在も、な。

前作戦のときみたいな強い奴と遭わなきゃいいんすけど…
ザースのこれの人か。
そう言ってベーミンは自分の額を指してみせた。

つられてザースも治療の施された額に触れる。

風の男、か。
前回が初めての報告だったが、どうやらミレイズも遭っていたらしいな。
ケガの原因…。
ジュンメスが不安げに呟いた。
気をつけろ、としか言えないな。なにしろ情報がない。
それで俺ら全員行動不能になったらミレイズ中尉は止められませんね。
大将は少し考え込んでから話しだした。
少佐も期待できないとはいえないが?
ベーミンは肩を跳ねさせた。
……や、やな冗談ですね……。
いや、冗談ではないだろう。
きっぱりと否定される。
実質この5人でまともに少佐の能力をもっているのはウィリアムズ大尉のみだろう。
ベーミンは大将の論破に折れるように顔を床に向けながら苦しい言い訳をした。
で、でも……あの、今、俺、大尉なんで……。
それでも一番高位だ。
その様子を見ていたヨセフは愉快そうにニヤついていた。
えー……
その場の指揮はお前が執ってくれ。
…しゃーないですね、わかりました…。
覆らないと察したようにベーミンは手のひらを見せて降参を示した。
少佐だったってこと…初耳なんですけど…。
不祥事ってやつだよ。
そこまで大層に悪いことはしてないぞ。誤解を招く。
…とにかく、何が出てくるかわからないってことですね…?
ああ。
ベーミンは吹っ切れたように笑む。
任せてください、ってか。
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登場人物紹介

ラギー・ミレイズ(中尉/少佐)

 自由な行動をとり、謙虚な性格。

精鋭部隊の隊長であったが、とある作戦で部下を失ってしまったショックなどで自殺をしようとした。しかし直前に回収に来た兵士によって阻止された。ザースは当時の部下の1人。

 彼女がいた、というがまだ誰かわからない。

ザース・ウォンダーザー(中尉)

 頭が良く正義感が強い。基本冷静な判断をするが、無茶をすることもしばしば。

銃の扱いや常識人さに定評がある。

もともとはラギーらと精鋭を組んでいたが、ラギーが記憶を失ってからは同僚として一緒に行動している。

メデゼン・イラスティア(救護班長)

 どの兵士とも仲がよく、親しい。

熟練の観察眼と馴れた手さばきで多くの兵士を救ってきた。面倒見もいいので、兵士たちの良い相談相手にもなっている。優しいが厳しい面もある。

エナ(動力源)

 日本につかわれていたところを連合軍に保護された。

大人しい性格だが、自分の意思は意外にはっきりしている。

日本にくる以前の記憶がおぼろげらしい。

日本軍では海軍の艦の動力源(昔でいう石油などの代わり)として艦に乗せられていた。〈機器に繋ぐことによって〉

ジュンメス・カーター(少尉)

 少し楽観的な思考をもつ。あまり頭脳派でない。

第六感が鋭く、危機的な状況になると消極的になる。

ヨセフ・ガイゼリン(少尉)

 名家ガイゼリンの長男。本人はガイゼリン家を嫌っている。ベーミンにはそれについて性懲りなく何か言われるので毛嫌いしている。

頭が良く、冷静に物事の判断を行う。周りを冷たく突き放すこともあるが、根本は仲間思い。

ベーミン・ウィリアムズ(大尉)

 常に陽気でよく他人をからかう。ガイゼリン家について少し知っていることがあるらしく、ヨセフによく絡む。

平等な立場を好むため、階位を表に出されるのを苦手とする。

デンジャラスじゃない、とMAの作戦をサボることがよくある。元少佐だったがその休みすぎの影響で落とされた。

佐竹(日本軍兵士)

 常に冷静な判断を下し、上司に忠実。

刀と風を使いこなしている。刀術については上司に習った。

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