回収・2回目

文字数 1,237文字

再び国館前に足をつける。
ミレイズ中尉ー…
定期的に名前を呼びながら、周辺の物音や動きに警戒しつつ中央広間へ向かう。


 結局何事もなく広間の手前まで着いた。さすがにそんな簡単には相手がお出まししてはくれないか。奇襲をかけられても困るものだけど。

 この辺りまでくると、さすがに腐ったような臭気を感じる。たしか前の作戦でここで銃撃されたんだっけか。自分はその作戦には参加していなかったため、他から得た情報だが。

 塊の死体だけは回収されているらしい。だが掃除はされてないようだ。黒い塊を視界に含んですぐ違うところに視線を逸らした。よく床を見ていると、血とは別に焦げ後らしいものが残っていることに気付く。点々と広がっている。

 それを追って広間に1,2歩踏み込むと、右にのびた階段の一段目の向こう側に足を見つける。靴の形的には連兵だろうか。唯一死体が…じゃない、あれは…

中尉!!
 周囲を軽く見渡してから近付いた。手前で屈んで状態を確認する。

 なぜか頭部を保護する装備を全て外しているうえにケガだらけ…いや、おもいきり重傷まみれだった。急いで脈拍を確認する。

…怖いほど、この班は生存率が高いらしい。人間の集団か?と皮肉を言いたいくらいに。

 そして次に目についたのは、横に不気味なほど綺麗に並べられた装備やナイフの数々。ヘルメットやゴーグルも並べられている。ざっと5本以上のナイフと、もちろんあのナイフも。

 それらのナイフは全て、血痕を拭いたように血が全くついていなかった。もしくは、当てられていないのか。いや、そんなことはないはずなので拭いたのだろう。身元の特定を避けるためだろうか。今のところ中尉が誰と戦闘をしていたのか見当がつかない。

中尉ー… 

…まあ、だめだよなあ…。

 この状態的には自分で這い上がってきたとは考えにくい。そもそも装備が並べられているわけだし。

…それだと誰がここにって問題になるんだな…。

 とにかく連絡をして、ヘリに戻れる態勢にしてもらおう。

ミレイズ中尉、見つけましたよ。

どうやら瀕死状態みたいですね。

〈!

周囲は?〉

再び周囲を見渡す。
人影なし。

…ですが、必ず中尉を瀕死にさせた奴はいるはずです。

人数は推測不能ですがね。

〈…一応、降ろす。

回収は頼んだ。〉

頼まれました。
 そしてまず並べられた装備をまとめる。

…そもそもこの量のナイフをどこにしまってたんだか。

 装備をまとめきると、本人の腕を丁寧に自分の肩へかけ、腰を上げさせる。かなりこの重傷者には強引な運び方だが。

痛かったら言ってくださいねー……
 もし今意識があったら痛みでとぶだろう。自分にかけた左腕の肩は切られているようだったし。いや、自分にかけるために左腕を掴んだ時点でたぶん2,3箇所のケガを潰した気がする。全て切り傷であったと思うから、おそらく大事ではないだろう。

 それよりもとりあえず今は早く止血できる環境へもっていくことが先決だ。一歩一歩慎重に進みながら、敵が来ないことを願って、外に見えたコンテナへ向かった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ラギー・ミレイズ(中尉/少佐)

 自由な行動をとり、謙虚な性格。

精鋭部隊の隊長であったが、とある作戦で部下を失ってしまったショックなどで自殺をしようとした。しかし直前に回収に来た兵士によって阻止された。ザースは当時の部下の1人。

 彼女がいた、というがまだ誰かわからない。

ザース・ウォンダーザー(中尉)

 頭が良く正義感が強い。基本冷静な判断をするが、無茶をすることもしばしば。

銃の扱いや常識人さに定評がある。

もともとはラギーらと精鋭を組んでいたが、ラギーが記憶を失ってからは同僚として一緒に行動している。

メデゼン・イラスティア(救護班長)

 どの兵士とも仲がよく、親しい。

熟練の観察眼と馴れた手さばきで多くの兵士を救ってきた。面倒見もいいので、兵士たちの良い相談相手にもなっている。優しいが厳しい面もある。

エナ(動力源)

 日本につかわれていたところを連合軍に保護された。

大人しい性格だが、自分の意思は意外にはっきりしている。

日本にくる以前の記憶がおぼろげらしい。

日本軍では海軍の艦の動力源(昔でいう石油などの代わり)として艦に乗せられていた。〈機器に繋ぐことによって〉

ジュンメス・カーター(少尉)

 少し楽観的な思考をもつ。あまり頭脳派でない。

第六感が鋭く、危機的な状況になると消極的になる。

ヨセフ・ガイゼリン(少尉)

 名家ガイゼリンの長男。本人はガイゼリン家を嫌っている。ベーミンにはそれについて性懲りなく何か言われるので毛嫌いしている。

頭が良く、冷静に物事の判断を行う。周りを冷たく突き放すこともあるが、根本は仲間思い。

ベーミン・ウィリアムズ(大尉)

 常に陽気でよく他人をからかう。ガイゼリン家について少し知っていることがあるらしく、ヨセフによく絡む。

平等な立場を好むため、階位を表に出されるのを苦手とする。

デンジャラスじゃない、とMAの作戦をサボることがよくある。元少佐だったがその休みすぎの影響で落とされた。

佐竹(日本軍兵士)

 常に冷静な判断を下し、上司に忠実。

刀と風を使いこなしている。刀術については上司に習った。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色