救出

文字数 802文字

 意識を取り戻した。覚醒しきらない思考と視界で膝の辺りの血だまりを捉える。徐々に感覚も取り戻していく。だがまだ痛いという感覚が生き返ってこない。

 不思議な感覚に襲われながらも、少しずつ意識が鮮明になっていく。

 そこで周りを見渡してみる。

 …ここは、日本国館か。夢じゃないとすれば、自分は意識を失ったあと再び目を覚ましたということになる。失血死をしていない不思議。

 前に腕を上げて軽く手の動作確認をしてみる。問題なかった。ただ体がすこしだるいと感じるだけだ。

 そこで目の端に足が見えた。そちらへ視線をうつす。

 …ベーミンだ。しっかりと首をやられてしまっているな…。骨も出ていないし折れきっている感じもしないが、ふつうのようには見えない。でもありゃ、さすがに死んでんのかな。

 天井を見上げる。…せっかく救ってやったのになー…。

 扉の外側にも倒れている人影を視認した。あれは、ザースとジュンメス…だろうか。ザースは顔面から出血、ジュンメスはうずくまっていたため詳細にどこが致命傷なのかは判断できなかった。

 だが、この感じからすると壊滅的…いや、もう全滅か………………ん?

 勢いよく首を振って周囲を確認する。首の骨が鳴りヒヤっとした。
(…ミレイズ中尉は?)
 ハッと思い出してゴーグルに画面を開く。とりあえず連絡をしておかなければならないな。
…こちらヨセフ。
〈!!

ガイ……ヨセフ少尉!そちらの状況は?〉

再度周りを見渡す。
4人の死体がごろりだ…
俺含め、と付け加える。
〈…あと1人は〉
ミレイズ中尉。

俺が気を失っている間にどこかへ連れて行かれたか行ったか―――…

 そこまで言ってから少し遠くに風使いの日兵の首があることに気付く。実はクローンであっただなんてでもない限り確実に死んでるな。
日兵の死体を確認した。

…どこかへ行ったんだろう。

〈…ですかね。

とりあえず回収しに行きます。敵影はありますか?〉

…見たところ。
〈了解。〉
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登場人物紹介

ラギー・ミレイズ(中尉/少佐)

 自由な行動をとり、謙虚な性格。

精鋭部隊の隊長であったが、とある作戦で部下を失ってしまったショックなどで自殺をしようとした。しかし直前に回収に来た兵士によって阻止された。ザースは当時の部下の1人。

 彼女がいた、というがまだ誰かわからない。

ザース・ウォンダーザー(中尉)

 頭が良く正義感が強い。基本冷静な判断をするが、無茶をすることもしばしば。

銃の扱いや常識人さに定評がある。

もともとはラギーらと精鋭を組んでいたが、ラギーが記憶を失ってからは同僚として一緒に行動している。

メデゼン・イラスティア(救護班長)

 どの兵士とも仲がよく、親しい。

熟練の観察眼と馴れた手さばきで多くの兵士を救ってきた。面倒見もいいので、兵士たちの良い相談相手にもなっている。優しいが厳しい面もある。

エナ(動力源)

 日本につかわれていたところを連合軍に保護された。

大人しい性格だが、自分の意思は意外にはっきりしている。

日本にくる以前の記憶がおぼろげらしい。

日本軍では海軍の艦の動力源(昔でいう石油などの代わり)として艦に乗せられていた。〈機器に繋ぐことによって〉

ジュンメス・カーター(少尉)

 少し楽観的な思考をもつ。あまり頭脳派でない。

第六感が鋭く、危機的な状況になると消極的になる。

ヨセフ・ガイゼリン(少尉)

 名家ガイゼリンの長男。本人はガイゼリン家を嫌っている。ベーミンにはそれについて性懲りなく何か言われるので毛嫌いしている。

頭が良く、冷静に物事の判断を行う。周りを冷たく突き放すこともあるが、根本は仲間思い。

ベーミン・ウィリアムズ(大尉)

 常に陽気でよく他人をからかう。ガイゼリン家について少し知っていることがあるらしく、ヨセフによく絡む。

平等な立場を好むため、階位を表に出されるのを苦手とする。

デンジャラスじゃない、とMAの作戦をサボることがよくある。元少佐だったがその休みすぎの影響で落とされた。

佐竹(日本軍兵士)

 常に冷静な判断を下し、上司に忠実。

刀と風を使いこなしている。刀術については上司に習った。

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