病室[3]

文字数 1,027文字

はい。
 そう言ってメデゼンは大きめの紙袋をラギーの膝の上へのせる。ラギーはベッドの中央で座っている状態なので、ベッドにのせたともいえる。

 紙袋の端には「ミレイズ」と宛名が記名されていた。


…なんですか、コレ…。
 袋の外側をじっくり観察してからメデゼンへ説明を求めた。
神様からのクリスマスプレゼントみたいなものとしておきましょう
クリスマスはとっくに過ぎませんでしたか……。
 そういって軽口に呆れながら袋の中身をのぞく。

 中に何が入っているのか理解した後、ラギーは目を見開いて数秒固まった。

い、いいんですか!?
いいから渡すのよ…、正式な許可。
しかも、と続ける。
精鋭よ。
え、俺が?
 自分を指差しながら驚いたように言う。

 メデゼンは「ええ。」と頷いた。

中を出してみなさいな。
 そう言われるとラギーはすぐに袋の中身に手をつけた。

 マスクやら手袋やらの小物から取り出していく。

着るのはー…まあ、感覚で。

ま、明後日よ。動く準備しときなさいね。

わかりました!!
 威勢よく返事をすると、紙袋を脇に置いて斜めにベッドから飛び出し、横に立って腰に手をあてた。
(やる気も気合も十分、か。)
明日から訓練参加していいんですね?
 いかにも今から走り出しそうな雰囲気で腕を伸ばしたりのストレッチをし始めた。
しないとだめね。

でも痛くなったらすぐ休みなさいよ。

でも相当長いこと起こってませんし、大丈夫ですよ。
 メデゼンはひとつため息をついた。
だと、いいけど。
「さ、」と言ってメデゼンは椅子から立ち上がり、扉のほうへ向かう。
私はもう行くけれどー……
そこで上半身だけをくるりとラギーの方へ向けて人差し指を立てた。
今日1日は大人しくして頂戴。
 屈伸していたラギーが動きを止める。

 メデゼンの視線の圧に気付き、普通に直立に戻る。

わかりました。
ホントに?
睨みを強める。ラギーはささっとベッドの中へかえった。
わかりました。
その様子を確認すると、メデゼンは再び前を向いて歩き出した。

 メデゼンが部屋から退出し扉が閉まると、ラギーは視線を横に置いた紙袋に移した。

 紙袋を手に取り膝の上へ乗せる。そしてまた中身を取り出して拝見し始めた。

(精鋭の服ってどんなもんなんだろう…。)
 ラギーはインナーを取り出す。インナーといっても全身だ。
(なんか予想通りって感じだなあ…。)
 次いでヘルメットやゴーグルを取り出した。
(これは…なんか、見覚えあるなあ…。なんでだ。初めて見たはずなんだけど…)
ラギーは1人で首を傾げた。
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登場人物紹介

ラギー・ミレイズ(中尉/少佐)

 自由な行動をとり、謙虚な性格。

精鋭部隊の隊長であったが、とある作戦で部下を失ってしまったショックなどで自殺をしようとした。しかし直前に回収に来た兵士によって阻止された。ザースは当時の部下の1人。

 彼女がいた、というがまだ誰かわからない。

ザース・ウォンダーザー(中尉)

 頭が良く正義感が強い。基本冷静な判断をするが、無茶をすることもしばしば。

銃の扱いや常識人さに定評がある。

もともとはラギーらと精鋭を組んでいたが、ラギーが記憶を失ってからは同僚として一緒に行動している。

メデゼン・イラスティア(救護班長)

 どの兵士とも仲がよく、親しい。

熟練の観察眼と馴れた手さばきで多くの兵士を救ってきた。面倒見もいいので、兵士たちの良い相談相手にもなっている。優しいが厳しい面もある。

エナ(動力源)

 日本につかわれていたところを連合軍に保護された。

大人しい性格だが、自分の意思は意外にはっきりしている。

日本にくる以前の記憶がおぼろげらしい。

日本軍では海軍の艦の動力源(昔でいう石油などの代わり)として艦に乗せられていた。〈機器に繋ぐことによって〉

ジュンメス・カーター(少尉)

 少し楽観的な思考をもつ。あまり頭脳派でない。

第六感が鋭く、危機的な状況になると消極的になる。

ヨセフ・ガイゼリン(少尉)

 名家ガイゼリンの長男。本人はガイゼリン家を嫌っている。ベーミンにはそれについて性懲りなく何か言われるので毛嫌いしている。

頭が良く、冷静に物事の判断を行う。周りを冷たく突き放すこともあるが、根本は仲間思い。

ベーミン・ウィリアムズ(大尉)

 常に陽気でよく他人をからかう。ガイゼリン家について少し知っていることがあるらしく、ヨセフによく絡む。

平等な立場を好むため、階位を表に出されるのを苦手とする。

デンジャラスじゃない、とMAの作戦をサボることがよくある。元少佐だったがその休みすぎの影響で落とされた。

佐竹(日本軍兵士)

 常に冷静な判断を下し、上司に忠実。

刀と風を使いこなしている。刀術については上司に習った。

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