作戦通達(2)
文字数 1,072文字
今度の作戦は、前回に続き日本軍に仕掛ける。
第一作戦を通達された時と同じ”1,000人分近く席のある台形のように上辺と下辺のある楕円形のホール”で大将は声を響かせる。今回は前回のまた3分の1程度の人数だ。大体120人ほどだろう。
今回は前作戦ほど人数押しの作戦ではないということだ。中の上程度の実力を求められている。だが自分の経験上からして、さほど緊張するものではなかった。
前作戦と場所は同じく国館だ。
衛星から転送されてきた画像によると、周辺にあまり動きがないらしい。だが建物内での大きな衝突が十分に予想される。Mode B(MB)でいく。防具の点検をしっかりとしておけ。こちらで事故が起こってしまっては元も子もないからな。
前回の資料に載っていた国館自体の資料は抜かれたため、薄くなった資料をぱらぱらと何度もめくりながら言った。
前回は死者ゼロだった、が、今回は相手も警戒して武装しているだろう。気を抜くなよ。
あくまで死者は、だ。怪我人は数人出ているのだろう。重傷は…いないと思っていたが、そういえばいたと聞いたな。
先日のイラスティア救長からの呼び出しの内容を思い出す。
―――とりあえずラギーは入院。ってことを仲の良いあなたに伝えておくわ。
えっと…すいません、何があったんですか？
原因不明の傷の激痛。
激痛……。
ラギーが作戦の翌日、そんなに痛くないと言っていたのを思い出した。わざわざ嘘をついていたのだろうか…？
そして無根拠な不安がよぎった。
死には…しませんよね。
少しイラスティア救長の発言までに間があった。事実を伝えかねているのかと不安が増す。
その可能性は今はあまり見られない……けれど
その逆接につばを飲み込む。その先の言動を脳が拒絶しているようでもあった。しかし制止する言葉は口から出ない。少し期待しているのだ。
あなたを死なせなかった名医よ？
その言葉にはっとした。思わず安堵の息が漏れる。先ほどまで脳内で駆け回っていた渦が雲が晴れるように消えていった。
ザースは無意識に左腕に触れていた。イラスティアはその行動に気付いていたが、何も指摘しなかった。必要性も感じなかった。
…そう、ですよね。
信頼して。
自信たっぷりな表情と、言葉に力を入れて信憑性を増させる。
自殺しようとした奴が、こんなことで死ぬなんて恥かかせないわよ。
……本来は俺が言う事じゃないですけど…ありがとうございます…。
本当はいっしょに頭の回る人にまで戻したいけど、また自殺行為をされちゃ困るから、とりあえず本人の訴えてるものだけね。
ザースは心底安心そうな表情をしていた。
