逃亡

文字数 735文字

 新藤は国館から遠く離れた森の中、一本だけ通った道の前に立っていた。片手にはスーツケース、もう片手には手持ちのケースを持っていた。既に夜も深いため、森林に全身が馴染んでいた。

 しばらくすると向こう側から光が漏れる。

 近付くにつれ直射日光のように光が主張してくる。目を細めた。

光の影になってよく見えなかったが、その車は自分の前までくると停車した。そして手前の窓が開く。

よっす。
 奥側に座っていた日本兵がこちらの顔をのぞくように腰を折って軽い敬礼をしてみせた。それを見てから新藤は後部座席に乗り込む。
ありがとう。
どうでした?最後の国館は。
スリリングだったよ。
そう言いながら腕やらに小さくついた擦り傷を撫でる。

 その様子を見た彼はこちらを指差して軽く笑う。

意外とケガしてんじゃないすか。
さすがに相手が相手だったさ。
彼は窓枠に肘をついて、つまらなさそうに先を見つめる。
俺も観たかったなー……あ。
視線だけこちらに向ける。
そいや、ちゃんと殺しましたよね?
いや。
即答した。彼は呆れたように話す。
そういうところがアウトロー。
そして一つため息を挟む。
だから上の人に色々言われちゃうんですよ…。

頭と刀術はいいのに。

自由にやってる、って言うのさ。
さいですか。で、結局佐竹は
死んだ。
引くように数秒沈黙が続いた。
………人命軽視。

敵の命は助けるのにね。

僕が殺したんじゃないし。
責任転換すか…

でもあなたの作戦上でも佐竹は死んでたんでしょう?

………………まさか。
少し引いた様子の苦笑いで彼は座席にもたれかかる。
これ以上は俺も殺されたくないんで控えますよ。
そうかい?
彼はまたため息を吐く。
とりあえず、本部へ戻ったらまず報告しろ、らしいっす。
了解。
車はそのまま小笠原諸島をつなぐ海底トンネルへ入っていった。
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登場人物紹介

ラギー・ミレイズ(中尉/少佐)

 自由な行動をとり、謙虚な性格。

精鋭部隊の隊長であったが、とある作戦で部下を失ってしまったショックなどで自殺をしようとした。しかし直前に回収に来た兵士によって阻止された。ザースは当時の部下の1人。

 彼女がいた、というがまだ誰かわからない。

ザース・ウォンダーザー(中尉)

 頭が良く正義感が強い。基本冷静な判断をするが、無茶をすることもしばしば。

銃の扱いや常識人さに定評がある。

もともとはラギーらと精鋭を組んでいたが、ラギーが記憶を失ってからは同僚として一緒に行動している。

メデゼン・イラスティア(救護班長)

 どの兵士とも仲がよく、親しい。

熟練の観察眼と馴れた手さばきで多くの兵士を救ってきた。面倒見もいいので、兵士たちの良い相談相手にもなっている。優しいが厳しい面もある。

エナ(動力源)

 日本につかわれていたところを連合軍に保護された。

大人しい性格だが、自分の意思は意外にはっきりしている。

日本にくる以前の記憶がおぼろげらしい。

日本軍では海軍の艦の動力源(昔でいう石油などの代わり)として艦に乗せられていた。〈機器に繋ぐことによって〉

ジュンメス・カーター(少尉)

 少し楽観的な思考をもつ。あまり頭脳派でない。

第六感が鋭く、危機的な状況になると消極的になる。

ヨセフ・ガイゼリン(少尉)

 名家ガイゼリンの長男。本人はガイゼリン家を嫌っている。ベーミンにはそれについて性懲りなく何か言われるので毛嫌いしている。

頭が良く、冷静に物事の判断を行う。周りを冷たく突き放すこともあるが、根本は仲間思い。

ベーミン・ウィリアムズ(大尉)

 常に陽気でよく他人をからかう。ガイゼリン家について少し知っていることがあるらしく、ヨセフによく絡む。

平等な立場を好むため、階位を表に出されるのを苦手とする。

デンジャラスじゃない、とMAの作戦をサボることがよくある。元少佐だったがその休みすぎの影響で落とされた。

佐竹(日本軍兵士)

 常に冷静な判断を下し、上司に忠実。

刀と風を使いこなしている。刀術については上司に習った。

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