不思議の星のアリス
文字数 2,624文字
アリスちゃんの星は不思議な星でした。
昔はみんなから「不思議の星のアリス」と呼ばれたものです。
それは、美しい緑色をした星と、灰色のコンクリートのような殺風景な星の二連星でした。
昔はみんなから「不思議の星のアリス」と呼ばれたものです。
それは、美しい緑色をした星と、灰色のコンクリートのような殺風景な星の二連星でした。
見れば、灰色の星には、コピー機が一台と、星の裏側に給湯室があるだけ。
その寒々とした有り様に王妃様は胸を痛めました。
その寒々とした有り様に王妃様は胸を痛めました。
ちょっと痛々しくて作者の私も切なくなってくるほどです。
しかし、それでもアリスちゃんは王妃様に向かって健気に微笑み、そして、タイトスカートの端を摘まんで行儀よく持ち上げながら腰を屈めてもみせるのでした。
しかし、それでもアリスちゃんは王妃様に向かって健気に微笑み、そして、タイトスカートの端を摘まんで行儀よく持ち上げながら腰を屈めてもみせるのでした。
なるほど、言われてみればその星は、短く刈り揃ったきれいな芝生に覆われております。
いかにも草食系が好きそうな星です。
いかにも草食系が好きそうな星です。
王妃様か゛そう尋ねたとき、折よく緑の星からポコーンという音と共に小さな白い球が飛んできて、王妃様の足元に転がりました。
アリスちゃんは王妃様の前であることも忘れて、いまいましげな深いため息をついてしまいました。
見やれば、その緑の星の地平の向こうから、ゴルフクラブを担いだハンサムな男の人が、球を探してやって来るではありませんか。
上司様は、見目麗しい王妃様を目にしても何の感心も示さず、ただただ自分が飛ばしたゴルフボールの行方だけが気になる様子。
王妃様は合点がいきました。
王妃様は合点がいきました。
上司様は、なかなか高雅な見た目をしておりました。
金色の髪は飴細工のようで、どんな女の人でも、柔らかなその光る毛髪に手を差し込んで梳いてみたいと思うことでしょう。
スーツもばっちりと決まっておりました。とても威厳をそなえて見えます。
更に言えば役職は「総統」でしたから、これは王妃様とほとんど並ぶほどの高い地位なのです。年収もきっと申し分ありません。
ですが、ひとつだけ。
金色の髪は飴細工のようで、どんな女の人でも、柔らかなその光る毛髪に手を差し込んで梳いてみたいと思うことでしょう。
スーツもばっちりと決まっておりました。とても威厳をそなえて見えます。
更に言えば役職は「総統」でしたから、これは王妃様とほとんど並ぶほどの高い地位なのです。年収もきっと申し分ありません。
ですが、ひとつだけ。
王妃様はつとめて顔に出さぬよう気を使いながら、小さな声でアリスちゃんに囁きました。
これは、やんごとなき身であり、誰に対しても遠慮をする必要のない王妃様としては実に珍しいことです。
上司様の顔色はそれほどに、我が目を疑うほど青かったのです。
これは、やんごとなき身であり、誰に対しても遠慮をする必要のない王妃様としては実に珍しいことです。
上司様の顔色はそれほどに、我が目を疑うほど青かったのです。
まどろっこしいことを抜きにして言えば、見た目は「宇宙戦艦ヤマト」のデスラーでした。
二連星も、灰色の星がガミラスで、緑の星がイスカンダルみたいなものだと……まあ、そう思っていただければ。
ご存じない方はご存知ないでいっこうにかまいません。
あと、上司様の顔色についてもうひとつ言うなら「使い回し」などではありませんからね!
上司というのは組織の中の人間です。組織には予算があり、できる上司はコストカットに厳しいものなのです。「使い回し」ではなく「合理化」なのです。色々大変なんです!
二連星も、灰色の星がガミラスで、緑の星がイスカンダルみたいなものだと……まあ、そう思っていただければ。
ご存じない方はご存知ないでいっこうにかまいません。
あと、上司様の顔色についてもうひとつ言うなら「使い回し」などではありませんからね!
上司というのは組織の中の人間です。組織には予算があり、できる上司はコストカットに厳しいものなのです。「使い回し」ではなく「合理化」なのです。色々大変なんです!
さて、王妃様の耳打ちに、アリスちゃんはうなだれました。
王妃様は頷きました。
こんな青い男の人が、グイグイなどとは想像もつきません。
こんな青い男の人が、グイグイなどとは想像もつきません。
畏れ多くも、アリスちゃんは異議を申し述べました。
これも譲れないところだったのです。
これも譲れないところだったのです。
と、頬まで染める始末。
王妃様は不服でした。
どうやらここに来て話が合わないというか……萌え所って各人各様で難しいですよね。
とにかくアリスちゃんはそっち系だったのです。
肌の色にとどまらず、角が生えていたりも好きでした。
どうやらここに来て話が合わないというか……萌え所って各人各様で難しいですよね。
とにかくアリスちゃんはそっち系だったのです。
肌の色にとどまらず、角が生えていたりも好きでした。
……とかそういうアレですね。
大事なことなのでアリスちゃんは二回言いました。
しかし、うっとりとばかりもしておれません。
しかし、うっとりとばかりもしておれません。
ついに、その不満をぶちまけたのです。
ぶっちゃけついでに過激なことも言いましたが、ここは聞き流しておいてあげてください。
それだけイライラが募っていた、ということですね。
それだけイライラが募っていた、ということですね。
やめて下さい。迷惑ですから。
それは聞き流せません。
しかし、実際にそこまで情熱的に迫られたいという憧れは理解できなくもありません。「もうどうにでもしてぇ~」というのはロマンです。
それは聞き流せません。
しかし、実際にそこまで情熱的に迫られたいという憧れは理解できなくもありません。「もうどうにでもしてぇ~」というのはロマンです。
王妃様も、我が身に降り注ぐ放射能爆弾を思い描いてうっとりとしました。
ここの部分の趣味は合うようです。
ここの部分の趣味は合うようです。
そんな女二人の気持ちなど、まるで頓着せずといった様子で、上司様はただニコニコと微笑んで佇んでおりました。
せっかくなのだから「ひとつご一緒にラウンドしませんか、ご婦人方」と誘うぐらいすればいいのに、まったく草食系男子ときたら!
……ところが、そうではなかったのです。
せっかくなのだから「ひとつご一緒にラウンドしませんか、ご婦人方」と誘うぐらいすればいいのに、まったく草食系男子ときたら!
……ところが、そうではなかったのです。
無関心のようでいて、実はしっかりとヒソヒソ話に聞き耳を立てていた上司様は、ニヤリと顔を歪めて言いました。
そのニヒルな口元のセクシーさに目を奪われ、アリスちゃんはドキッとしました。王妃様もハッとしました。