星と王妃様

文字数 1,165文字

そっ……そなた、どうしたのじゃ!
興奮しているのであります。慰められているのです。王妃さまのそのお姿に!
それは素晴らしい!
どうかその調子でお続けください!
あいわかった!
王妃さまはことの全てが理解できました。

なるほど、これなら自分の知りたかったこと、やりたかったことが満足させられます。
ふあああっ……くふぅ~んっ!
そう思うと、自然とやり方にも気が入り、声も大きく、乱れたものとなります。

どんどんますます、いやらしく喘ぎたくなってきます。
ハァンッ! 素敵……素敵じゃ! もっと……もっと見て……もっと大きく膨らませて!
そうだ……もっと俺を興奮させてくれ。この眼にはもう、お前しか映っていない。俺はお前という淫らな美獣の虜なんだ。
んっ! んんっ……んんんっ! ぅああっ……。
ひときわ深く、指で掻き混ぜた瞬間、王妃さまの腰がガクッと下へと落ちました。
王妃さま! 美しいです、王妃さま! なんてステキなんだ貴女は!
パイナップルがそう賛美の声をあげたそのとき、王妃様はまさに「そのとき」を迎えたのです。
アーーーーーーーーーーーーーーーーッ! イクゥゥゥゥゥゥゥッ!
ああっ、王妃さま、王妃さまあぁぁぁあぁぁぁっ!
パイナップルも絶叫し、ついに限界に達しました。
あああああああああああああああああああ、王妃さま! 王妃さまぁっ!
ずどおぉぉぉぉおおおおぉぉおおん!

地響きと共に、パイナップルは白煙を上げ、宇宙に向かって打ち上がって行ったのです。
おさらばですぅぅぅぅ。王妃さま、ありがとうございました……お達者で~!
……。
王妃様は達した余韻の中で、かつてない充足感を味わっておりました。

そして、ロケット雲を筋ひいて、小さく、天に吸い込まれてゆくその果実を見送りました。
わらわも満足であった……そなたも達者で……。
王妃様の美しい目じりに浮かんだ涙は、絶頂のためのものなのか、それともパイナップルとの別れを惜しんだものなのか。

それは王妃様自身にもわからないことでした。


毎年11月の中ごろに地球から見ることのできる、しし座流星群。

王妃の星はその方角にあります。

そして、しし座の方向にある無数の星々の、数知れぬ寂しい王妃様たちは、みなそれぞれに、その頃になるとパイナップルを打ち上げるのだそうです。

地球では多くの恋人たちが、そのパイナップルの描く美しい光の流影に、胸をときめかせ、あるいは口づけの背景とするのかもしれません。

素敵な、素敵な……ひと夜の思い出として。
第一章 星の王妃様 Fin





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登場人物紹介

王妃様

小さな星でひとり暮し。

パイナップル

頼んだ憶えはないのに届いた。

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