クリットラ

文字数 2,298文字

中国ではオナニーのことを、「飛行機を撃ち落とす」だったり「飛行機を操縦する」という意味の言葉で表現することがあるのだそうです。

男性のアレのソレが、まるで戦闘機を狙う高射砲のように見えるからだったり、その最中の姿が飛行機の操縦桿を握っているようだからなんですって。

勇ましくも、どこかユーモラスな表現ですね。
英語だと、男の子は「ジャック・オフ」、女の子なら「ジル・オフ」なんて言い方も。

男女の区別をジャックジルというキャラそれぞれが受け持っていて、これはこれで可愛い感じがしていいですね。

女性が夜分に自分を慰めるのを「ナイト・ジリング」なんて言うこともあるそうですよ。なんだかロマンチックで素敵じゃありませんか。
男女の区別と言えば、スウェーデンでは、これまで女性のオナニーを表す言葉がなかったということで、国語辞典に載せるための新しい単語をわざわざ一般公募したそうです。

そうまでして決めないといけないことなのかなー、そんな言葉必要な人居るの? とも思えますが……。

ところがなんと、1200を超える応募があったというから驚きです。
厳正な審査の末「クリットラ」に決まったそうです。
わらわの考えた案が発表に載っておらぬではないか! 1000通は送ったというのに、ちゃんと届いたのであろうな!
……貴女でしたか。
じゃが、クリットラというのも悪くはないのう……気品があって良いぞ。
そうですか。
まあ、確かにちょっとエレガンスな感じありますよね。
いっぽう、日本はどうかと申しますと……。

「抜く」
「シコシコ」
「せんずり」
「皮つるみ」


これはこれで、力感もあって生々しく、なかなか味わいが……ありすぎです!
他の国と比べて、ちょっと生臭すぎやしませんか!?

もう、なんか、やってることそのまんまです。これはいかがなものか。
こういうとこ、変えていきたい。
『ひとりエッチ』というのがあるではないか。あの言い方は奥ゆかしくて好きじゃぞ。
……ありましたね。

さすがは王妃様。
あ、ドヤ顔ですか。
まあ、そんなふうに、ところ変わればなんとやら、お国柄で色々なのが面白いですね。今回はそんなお話です。


王妃様の星から遥か遠くに離れた所に、少し大きめの星がありました。

立派な天守のあるお城では、たいそう羽振りの良い殿様が、家来を従えて暮らしておりました。

殿様はケチケチした性分ではありませんでした。
気前よく褒美を取らせるのが趣味だったので、家臣の者から平民にいたるまで羽振りが良く、陽気で明るい星でした。

王妃様の星から見て南十字星のある方角にありましたから、南国気質と言ってもいいかもしれませんね。

どれぐらい明るいかと言いますと、挨拶の言葉からしてもう違います。
皆の者、オナにちは!
お殿様、オナにちは~!
とにかくもう、あけっぴろげな感じだったのです。
もちろん、オナニーも大好きです。

昨日のオカズのことを、まるで昨日のオカズについて話すように屈託なくお喋りするようなお国柄。

それもそのはずで、この星に暮らすフルーツたち(そう、南国フルーツの星だったのです)は皆、男性でした。

男性に限らず、同性同士だと、そういうのってオープンになりがちですよね。

そんなわけで、もう男子校のノリです。

ある日、誰かがノリで頭に男性のアレがソレな感じのかぶりものを乗せて大ウケして以来、それが「ちょんまげ」などと可愛らしい名前までついて大流行。

今では皆が趣向を凝らしに凝らした「ちょんまげ」を競うほどにまでなっておりました。
どうだ、やはり大きいのが一番えらいのだ。
そっ、そんことないだろ!
ジャックフルーツが、ずんぐりむっくりのパパイヤに向かってそう誇示すれば、テングヤシが鼻で笑ってまぜっかえします。
サイズがご自慢とは、若い、若い。硬さじゃよ、硬さ。これがご婦人方を一番喜ばせるのじゃ。
……。
硬さと聞いて黙り込んでしまったのは、すぐに熟して柔らかくなってしまうバンレイシでした。

しかし、すぐさまマンゴーが横から口を挟みます。
いやいやご老体、それよりも張りとツヤでしょう!
何を言ってるんだ、大切なのはそんなんじゃなくて気遣いだよ。ほら、僕のを見てごらん。
そう言って澄まし顔のサポジラが、自分のちょんまげにスッポリと被せているのは樹液から作った自家製のゴムでした。

痛いところを衝かれて皆が顔を見合わせました。
しかし、すぐにツリートマトの異名を持つタマリロがやり返します。
そんなの中出しをキメる勇気がないだけだろう。責任を取ってこそ男というものじゃないかね。
ドッと笑い声が起き、恥をかかされたサポジラは顔を真っ赤にして怒り出しました。
お前だってなんだ、ちょんまげにタマまでぶら下げやがって! 変態じゃないか!
フン、田舎者には最新モードが理解できないようだね。
ここはやっぱり一番太くて大きいのが……。
デカイのは痛いから嫌われるんだぜ?
なにを! フルーツの貴公子を愚弄するか! 決闘を申し込む!
まあまあここはフルーツの女王であるこのマンゴスチンに免じて穏やかに収めるざます。
黙れオカマ野郎!
なんざますって!
……と、まあ毎日がこんな調子に。

皆、もともとは気が良い果物だったのに、いつしかこのように、顔を合わせればプライドを賭けた喧嘩となるようになってしまいました。

これには、さしものお殿様でも閉口しました。
……これは、褒美をくれてやっても解決できそうにないのう。

そうでございますね、お殿様。下手に褒美など出せば、むしろ火に油でしょう。
相槌を打ったのは側近のパイナップルでした。
毎日毎日これではかなわぬ。どうにかこの騒々しい諍いを鎮めることはできぬものか。
私めによい考えがごさいます。
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登場人物紹介

王妃様

小さな星でひとり暮し。

パイナップル

頼んだ憶えはないのに届いた。

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