ガールズトーク

文字数 1,202文字

ところで、そなた。アラサーとやら。
アリスです!
うむ。わかっておる。アラサであったな。
いいえ、アリ……
言いかけてアリスちゃんは口をつぐみました。
アラサーともなると、色々とあきらめることを憶えるものなのです。
アラサよ。そなた、どうしてわらわの星へと参ったのじゃ?
それが、迷った挙句。
少女の困り果てた様子に王妃様は憐みの心をゆり動かされました。

下々の者たちの悩みを聞くのも王妃の仕事です。
自分の下々にばかりかまけているわけではないのです。

そして、王妃様は慰めることにかけては、それはとても情け深いお方でした。
何をどう迷ったというのじゃ。申してみよ。
意中の殿方に振り向いて貰えなくて、どうしたものかと。
かつては白いウサギの尻を追いかけて道に迷った幼い子供が、今では男性の尻を追いかけて道に迷っている様子。時の経つのは早いもの。
ほほう、それは難儀なことじゃ。もそっと詳しゅう申してみよ。
王妃様も女の人ですから、この手の相談には目がありません。
ガールズトークというやつですね。

アリスちゃんに椅子をすすめると、相向き合いとなって目を輝かせ、身を乗り出してその話に聞き入ったのです。
それで、そなたの意中というのは、いかなる殿御か。
はい、私の上司でございます。
上司とはなんぞな?
王妃という職業には上司は居ませんからね。王妃様が知らないのも無理はないことでした。
上司といいますのは、我儘なものでごさいます。
ほうほう。
厳しいことや無理を言って私を困らせるのが仕事です。そして、ときにグイグイ来るものでございます。
グイグイとかえ。
はい。グイグイでごさいます。強引に。
王妃様は、なんだかよくわかりませんでしたが、「グイグイ」というのには引き込まれるものがあると思いました。興味津々です。
それで、グイグイと来て……どうなるのじゃ?
それから思わせぶりをするのです。
思わせぶりを!
これはどういうわけか凄く惹きつけられます。心を捕らえる不思議な魔法のようです。
思わせぶりとは、いかようなことか。
王妃様は尋ねずにはおられませんでした。
たとえば、突然そっけなくするのです。
あるいは、他の女の影を匂わせるのです。
かと思えば、気のある素振りも見せるのです!
おお! それはたまらぬな!
上司とはなかなか良いもののようです。
王妃様は自分にも上司が欲しいと思うほどでした。

しかし、それは心に仕舞ったまま、アリスちゃんに話を続けるよう促しました。
上司には他にどんな良い所があるのじゃな?
そうですね……たいていは仕事もできます。
たいていは?
はい。中には、できない上司もおりますが、これはほとんどの場合で仕事ができないように見せかけているだけです。
なるほど。
そして、どうであれ、スーツでビシッとしております。
それは大事じゃな。
はい、何よりも。
上司について、だいたいのことは把握できたので、王妃様は新しい質問をすることにしました。
それで、何が問題だというのじゃ。
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登場人物紹介

王妃様

小さな星でひとり暮し。

パイナップル

頼んだ憶えはないのに届いた。

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