虫すだく 4 (6)
文字数 406文字
「この間高速で大事故があっただろ? そのご遺族らしいよ」
二人が行ってしまってから、火葬炉から立ち昇る煙を見上げていた矩が口を開いた。
のぞむは驚いた顔を矩に向ける。矩がよその告別式の事情を知ってるなんて。
「大人たちが噂してたよ、事故を起こした運転手はあの事件の関係者だからね」
「へえ……」
気のない返事をもらした。
「興味なさそうだね」
矩は苦笑した。
本当に興味がなかった。
全国を揺るがした大事件であるが、のぞむには高速道路建設とか旧石器時代の遺跡とか、どうでもよかった。
「でもあの子には興味があるんだろ?」
「そお?」
「だって見とれてたじゃないか」
「そうかしら……」
少年の感情がうかがえない顔をぼんやりと眺めただけだった。
家族が死んだのに、平然と歩いていく少年が不思議だった。
また、視界が歪んだ。
生温かい滴は、今度は頬を降りていく。
雨粒だと思っていたのは涙だったのだと、のぞむはようやく気がついた。
二人が行ってしまってから、火葬炉から立ち昇る煙を見上げていた矩が口を開いた。
のぞむは驚いた顔を矩に向ける。矩がよその告別式の事情を知ってるなんて。
「大人たちが噂してたよ、事故を起こした運転手はあの事件の関係者だからね」
「へえ……」
気のない返事をもらした。
「興味なさそうだね」
矩は苦笑した。
本当に興味がなかった。
全国を揺るがした大事件であるが、のぞむには高速道路建設とか旧石器時代の遺跡とか、どうでもよかった。
「でもあの子には興味があるんだろ?」
「そお?」
「だって見とれてたじゃないか」
「そうかしら……」
少年の感情がうかがえない顔をぼんやりと眺めただけだった。
家族が死んだのに、平然と歩いていく少年が不思議だった。
また、視界が歪んだ。
生温かい滴は、今度は頬を降りていく。
雨粒だと思っていたのは涙だったのだと、のぞむはようやく気がついた。