待宵草 2 (5)

文字数 217文字

「おい?」
 ムカデの死体と飛散した体液を放っておいて、一体どこへ行くのかと詰問したかったのだが。
 呼びかけにふり返った朔を見て、高橋は言葉を失った。
 
 白い肌に真紅の花びらが張りついたかのようだった。
 
 息を飲み、思わず見とれてしまう。

 高橋が呼びとめたものの何も言わないので、朔は作業票を社長に渡すため、さっさと店へと入ってしまった。

 朔が歩き去った後には、ムカデの登場で高橋に取り落とされたプレゼントが、無惨にも踏み(にじ)られていた。
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登場人物紹介

加賀美 朔 (かがみ さく)

他人に興味がなく、感情というものを持ち合わせていない。

人に言えない秘密を抱えている。

自動車整備士。

桂木 奏凪 (かつらぎ そな)

姉に虐待を受け続け、逃げ出した先で朔に出会う。

そのまま朔のアパートに住みつく。

桂木 のぞむ

奏凪の血のつながりのない姉。

地元でも評判の美人だが、近寄りがたい雰囲気を持つ。

倉沢 矩 (くらさわ ただし)

優等生で、かわいそうなものを放っとけない性格。

のぞむの幼なじみで、短大の図書館司書。

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