第17話

文字数 820文字

 次の日から登下校がしにくくなった。
 登校の時だけは、通行人や自動車の多い時間帯なので、いつも通りに通学路にPTAのおばさんたちがいるけれど、下校は毎日というわけじゃないけど保護者の迎えを待つことにしたみたいだ。
 保護者が迎えにこれない場合は、通学路をおばさんたちが緊張して見張っていた。
 みんな未だに隣町の児童たちが帰りのバスからいなくなったことを気にしている。
 警察の調べでは、送迎バスの出発の時間から15分後の2時20分には、児童たちはバスにいたのだそうだ。交差点を曲がるバスを商店街で働いている人達が見ている。
 その後、15分の空白があって、その間に児童たちと保母さんとバスの運転手が普通の道路を走行中に忽然と消えたのだそうだ。
 僕は亜由美と汗をかいて、居酒屋で藤堂君と篠原君を待っていた。学校へと登校する時間だ。昨日の夜は僕は少しだけ怖くなって布団の中に籠っていた。
 今朝になって、強い日差しに照らされた裏の畑を見て元気をだした。子供たちの仇をとるとか、そういう意味の感情はでなかったけれど、なんとなく、僕が頑張んなきゃ誰もいないんだって思った。
「亜由美。昨日の体育館で全校生徒が待機している時に、少しどこかへ行ったよね。一体どこに行ってたの?」
 亜由美は僕の顔を興味なさそうに見つめると、A4ノートをランドセルから取り出すと、さらさらと綺麗な字を書いて僕に渡した。
(校舎の花壇に人が落ちてきたから、一人で見に行ってたの)
「え!?」
 僕はそれを読んで、真っ青になってひどく驚いた。
「誰が落ちてきたの?!」
 藤堂君と篠原君が走ってやってきた。亜由美はランドセルにA4のノートを無情にも仕舞ってしまった。
 僕は訳も分からずに叫びそうになったけれど、さすがに藤堂君と篠原君もいるし、亜由美が可哀想だったから、我慢して学校へとみんなと走った。真っ白な入道雲の下で、それと反対に真っ赤な顔をして走った。一時間目がもう始まる時間になっていた。
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登場人物紹介

石井 歩。


周囲からは賢い子と言われているが、空想好きな小学生。

石井 歩のおじいちゃん。 ずる賢いようでいつも歩と亜由美を見守っている。

羽良野(はらの)先生。 石井 歩の通う学校の担任。石井 歩を色々と気遣う反面……。

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