第33話
文字数 652文字
真っ暗な階下で母さんが診察室のドアを控えめにノックし、返事を待っていたところだった。ぼくは階段から屈んで聞き耳を立てた。
村田先生が顔を出した。
「歩君の傷のことだね。中へ入って」
神妙な面持ちの白髪の村田先生と母さんが診察室へと入ると、ぼくは古く薬品の匂いのする木製の階段の隙間で固唾を飲んだ。
少し戸惑いの声が村田先生の口から出ていた。
「歩君の体。正確には傷から。高濃度の農薬とオニワライダケの成分が検出されている。さっぱり解らないが、前にもこんなことがあったんだ。隣……でね。その農薬は……。というより、今でも毒性が認められているオニワライダケにはまだ明らかになっていない成分が……。その成分と高濃度の農薬の影響かは解らないが、歩君の体内は今は仮死状態になっている……。何故か動けるんだがね……。」
中々聞き取れない。
ぼくは点滴を持って一階へ行こうかと思ったが、母さんの不安な声と鳴き声が同時に聞こえた。
「まあ! 歩はどうなるんですか?」
「現状では隣町の総合病院へ入院した方がいい。農薬には精神面への影響もあるし、毒性の強いオニワライダケの方も心配だ。私が推薦状をだすから。さあ、奥さん。今は何とも言えないけど、これから健康になる可能性を否定したら。我々は何もできないんだ。今日はもう遅いから明日歩君とゆっくり今後の相談をした方がいい」
母さんのすすり泣く声が診察室のドアから漏れ出した。
ぼくは閃いた。
農薬だったんだ!
裏の畑で大根が辛くなったのは!
村田先生が顔を出した。
「歩君の傷のことだね。中へ入って」
神妙な面持ちの白髪の村田先生と母さんが診察室へと入ると、ぼくは古く薬品の匂いのする木製の階段の隙間で固唾を飲んだ。
少し戸惑いの声が村田先生の口から出ていた。
「歩君の体。正確には傷から。高濃度の農薬とオニワライダケの成分が検出されている。さっぱり解らないが、前にもこんなことがあったんだ。隣……でね。その農薬は……。というより、今でも毒性が認められているオニワライダケにはまだ明らかになっていない成分が……。その成分と高濃度の農薬の影響かは解らないが、歩君の体内は今は仮死状態になっている……。何故か動けるんだがね……。」
中々聞き取れない。
ぼくは点滴を持って一階へ行こうかと思ったが、母さんの不安な声と鳴き声が同時に聞こえた。
「まあ! 歩はどうなるんですか?」
「現状では隣町の総合病院へ入院した方がいい。農薬には精神面への影響もあるし、毒性の強いオニワライダケの方も心配だ。私が推薦状をだすから。さあ、奥さん。今は何とも言えないけど、これから健康になる可能性を否定したら。我々は何もできないんだ。今日はもう遅いから明日歩君とゆっくり今後の相談をした方がいい」
母さんのすすり泣く声が診察室のドアから漏れ出した。
ぼくは閃いた。
農薬だったんだ!
裏の畑で大根が辛くなったのは!