第25話
文字数 1,634文字
用務員のおじさんが死んでいるなら、学校はどう反応するんだろう?
多分、犯人が捕まるまで休校をするだろう。
ドアをノックする音がした。
ぼくは瞬時に涼しい顔を張り付けて開けると、妹の亜由美だった。A4ノートを破いて書いてある言葉を見せた。
「遅かったじゃない。服がびしょびしょだから、お風呂に入ったら?」
亜由美はたまに優しいことをする。
ほんの気まぐれみたいに。
ぼくは「解ったよ」と言うと、お風呂へ向かった。
和室から幸助おじさんの唸り声が聞こえて来た。
お風呂の中で考えた。ぼくはこのことを警察には知らせられないみたいだ。
生きた首を持ってきていない。恐らく羽良野先生が隠したと思う。バラバラ生き事件なんて、聞いたこともないから、警察は大人より僕を疑うことは間違いなしだと思うんだ。
だって、そうでしょう。
大人の言葉は大抵は立派に見えれば誰もが信じるけれど。子供の言うことなんて誰も信じないんだ。
僕が戦っているのは、この不思議な事件だけではないと思う。そういった周囲の見えない何かとも戦わなければいけない。
夜遅く、ぼくの家にも電話がかかってきた。
父さんが出たけれど、話の内容は解る。
キッチンにある電話の受話器を置いた父さんの顔は、険しく少し赤みがあった。
「歩。亜由美を呼んできなさい」
ぼくは二階にいる亜由美を階段越しに呼んだ。
キッチンにはみんな揃った。
父さんが静かに言った。
「学校はいかなくていい。何かよくないことが起きたみたいなんだ。しばらく休校になるそうだ。危ないから、あまり外へと出ないことと、不審な人には近づかないこと。父さんに約束してくれ」
父さんはテーブルに座る。ぼくと亜由美の顔を覗くように言った。
「このところ、何が起きているのか解らないな」
おじいちゃんが呟いた。
おじいちゃんは僕の頭を優しく撫でて、にこやかに言った。
「何も心配ないくていいからね……。時間が経てば何もかもよくなるさ」
おじいちゃんは、それから亜由美にも優しい言葉で話している。
僕はその通りだと思った。
時間の方が強い。
羽良野先生はじきに捕まる。
そして、この不可解な事件は解決するかも知れない。
次の日。
リンリンと鳴る風鈴の涼しい音と蒸し暑い空気でぼくは目を開けた。
ベットから起きて、反対方向に向いたタオルケットを直すと、一階へと降りて行った。まだ、誰も起きていない。
玄関の郵便受けから今日の新聞を取出し、キッチンで広げた。
何ページか読んでいると、昨日の学校での事件の見出しがあった。
そこには、こう書かれていた。
昨日。午前六時頃。H県。御三増町の稲荷山小学校で、用務員の松田 順平さん(38歳)が用務員室で何者かに殺害されていた模様。
松田さんは刃物で数十回刺され、頭部と右手のない遺体で発見された。午前八時十分頃に教師の通報で駆け付けた警察によると、死後。15分間。体が痙攣のために動いていたとのこと。
H県戸井田警察暑は殺人事件と断定。
警察は……。
二階から母さんが降りてくる音を聞いた僕は、素早くヤカンを取出しお湯を沸かすことにした。
「あら、今日も早いわね。関心関心。でも、学校には行っちゃ駄目よ」
丸っこい母さんはすぐに、朝食の準備に取り掛かる。
今日は丁度、日曜日だ。
これからは、自分の身を守るために調査をしていかないといけない。
まずは、隣町で起きた幼稚園バスの事件を調べよう。
「母さん。裏の畑でも遊べないから、ちょっと熊笹商店街に篠原君と藤堂君と行ってくるよ。いくらかお小遣いがほしいんだ。あそこなら人が多いし大丈夫だよね」
「……解ったわ。あそこなら人が多いし、大丈夫でしょう……ね。でも、母さん心配だわ。気を付けてね」
母さんはサバを焼きながら、ぼくに真面目な顔を向ける。
いつも母さんは料理の時は一生懸命だ。
でも、その時の顔とは全然違う顔をしている。
ぼくは涼しい顔で頷くと、隣町まで行ける往復分の電車賃を貰った。
多分、犯人が捕まるまで休校をするだろう。
ドアをノックする音がした。
ぼくは瞬時に涼しい顔を張り付けて開けると、妹の亜由美だった。A4ノートを破いて書いてある言葉を見せた。
「遅かったじゃない。服がびしょびしょだから、お風呂に入ったら?」
亜由美はたまに優しいことをする。
ほんの気まぐれみたいに。
ぼくは「解ったよ」と言うと、お風呂へ向かった。
和室から幸助おじさんの唸り声が聞こえて来た。
お風呂の中で考えた。ぼくはこのことを警察には知らせられないみたいだ。
生きた首を持ってきていない。恐らく羽良野先生が隠したと思う。バラバラ生き事件なんて、聞いたこともないから、警察は大人より僕を疑うことは間違いなしだと思うんだ。
だって、そうでしょう。
大人の言葉は大抵は立派に見えれば誰もが信じるけれど。子供の言うことなんて誰も信じないんだ。
僕が戦っているのは、この不思議な事件だけではないと思う。そういった周囲の見えない何かとも戦わなければいけない。
夜遅く、ぼくの家にも電話がかかってきた。
父さんが出たけれど、話の内容は解る。
キッチンにある電話の受話器を置いた父さんの顔は、険しく少し赤みがあった。
「歩。亜由美を呼んできなさい」
ぼくは二階にいる亜由美を階段越しに呼んだ。
キッチンにはみんな揃った。
父さんが静かに言った。
「学校はいかなくていい。何かよくないことが起きたみたいなんだ。しばらく休校になるそうだ。危ないから、あまり外へと出ないことと、不審な人には近づかないこと。父さんに約束してくれ」
父さんはテーブルに座る。ぼくと亜由美の顔を覗くように言った。
「このところ、何が起きているのか解らないな」
おじいちゃんが呟いた。
おじいちゃんは僕の頭を優しく撫でて、にこやかに言った。
「何も心配ないくていいからね……。時間が経てば何もかもよくなるさ」
おじいちゃんは、それから亜由美にも優しい言葉で話している。
僕はその通りだと思った。
時間の方が強い。
羽良野先生はじきに捕まる。
そして、この不可解な事件は解決するかも知れない。
次の日。
リンリンと鳴る風鈴の涼しい音と蒸し暑い空気でぼくは目を開けた。
ベットから起きて、反対方向に向いたタオルケットを直すと、一階へと降りて行った。まだ、誰も起きていない。
玄関の郵便受けから今日の新聞を取出し、キッチンで広げた。
何ページか読んでいると、昨日の学校での事件の見出しがあった。
そこには、こう書かれていた。
昨日。午前六時頃。H県。御三増町の稲荷山小学校で、用務員の松田 順平さん(38歳)が用務員室で何者かに殺害されていた模様。
松田さんは刃物で数十回刺され、頭部と右手のない遺体で発見された。午前八時十分頃に教師の通報で駆け付けた警察によると、死後。15分間。体が痙攣のために動いていたとのこと。
H県戸井田警察暑は殺人事件と断定。
警察は……。
二階から母さんが降りてくる音を聞いた僕は、素早くヤカンを取出しお湯を沸かすことにした。
「あら、今日も早いわね。関心関心。でも、学校には行っちゃ駄目よ」
丸っこい母さんはすぐに、朝食の準備に取り掛かる。
今日は丁度、日曜日だ。
これからは、自分の身を守るために調査をしていかないといけない。
まずは、隣町で起きた幼稚園バスの事件を調べよう。
「母さん。裏の畑でも遊べないから、ちょっと熊笹商店街に篠原君と藤堂君と行ってくるよ。いくらかお小遣いがほしいんだ。あそこなら人が多いし大丈夫だよね」
「……解ったわ。あそこなら人が多いし、大丈夫でしょう……ね。でも、母さん心配だわ。気を付けてね」
母さんはサバを焼きながら、ぼくに真面目な顔を向ける。
いつも母さんは料理の時は一生懸命だ。
でも、その時の顔とは全然違う顔をしている。
ぼくは涼しい顔で頷くと、隣町まで行ける往復分の電車賃を貰った。