その10 聞き取れない「私」のほうがかえって面白かったりして

文字数 952文字

視点人物が「何でも知ってて何でも理解できる人」ではなくて、
逆に
「視野の限られた人」
のほうが面白くなることもある、という話です。
例えば……
ミステリーは基本的にそうかも。

シャーロック・ホームズのシリーズにワトソンさんが必要なのは、
ホームズさんが視点人物だと、
ちょっと見たり聞いたりした瞬間にすべてわかっちゃって、
話がそこで終わっちゃう

からですよね。

「え、なになに? どゆこと?」
という時間を、読者は楽しみたいわけです。
いっしょにとまどって知りたがってくれる人が欲しいわけです。
そういう人の目線で読みたいわけです。
『キノの旅』シリーズも、主人公のキノ視点じゃなくて、
相棒のエルメス視点だと、
無口なキノがきゅうに動きだして不可解な行動に出たとき、
「なになに?」
とわくわくできるわけです。
『キノの旅』について説明する必要もないでしょうけど、
ヒツジは初めて読んだとき、エルメスって、
しゃべる二輪車(オートバイ)って、
漱石先生のしゃべる猫以来の発明じゃない?と思って大喜びしたです。

同時に、自分の自転車に名前をつけて、
こっそり(頭の中で)自転車くんとの会話を創って遊んでいた、
小学校のころも思い出したです。

それはともかく。
信頼できない語り手

というのもありますよね。


Wikipediaだと「狂人」とか、アブノーマルな人みたいに定義されてますけど、
そうじゃなくて。
叙述トリックというのもあるけど、そこまで凝った話でもなくて。

視点人物が何か誤解していて、読者がそれに引っぱられて誤誘導されるとか。
視点人物のかんちがいが、読者にはちゃんとわかるように書かれていて、
「そこ違うし!」
と読者がツッコミながら読めるようになっている
とか。

「信頼できない」って言うとイヤな響きがしちゃうけど、
視点人物の視線が「ちょっとずれてる」、
視界が「ちょっと限られてる」、
そういうのってすごく楽しくて、
「信頼できる」語り手にはない楽しみがあると思うんですけど、どうでしょうか。
ヒツジの大好物は、「両片想い」ってやつです。
主人公カップルがおたがいに好きなのに、モジモジのジレジレで、
「ああもうっ! 早くけっこんしてしまえ!!(きゃー)」
ってなるやつ。
キャラクターたちの視野が限られていないと、これ成立しません。
ああ、早く恋愛小説書きたくなってきたー!
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登場人物紹介

ミミュラ


このチャットノベルの管理人。ときどきアマビエに変身する。

ヒツジのくせに眠るのが下手。へんな時間に起きてしまったり寝てしまったりする。
紅茶もコーヒーも、ココアも好き。(下戸)

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