その4 「ちゃんと書かなきゃ」をいったんゼロにしてみるといいと思う

文字数 931文字

このページも、迷えるヒツジのお話のつづきです。
「あるある」って笑いながら読んでください。
いまでも覚えています。
ヒツジはずっとずっと小説を書きたかったのに、書けなかったのです。
とにかく、「ちゃんと書かなきゃ」って思いこんでいて。
自分は「地の文が苦手」なんだ、ということには、早くから気づいてました。
描写や説明が苦手なのです。
「ちゃんと書かなきゃ」プレッシャーがすごくて。

会話だけなら、書いてて楽しくて、
わりとずーっと書いていられるのに……。
(だから脚本から書きはじめたんですね。)
ようするに、
小説を書くなら、
芥川龍之介の「羅生門」とか、中島敦の「山月記」とか、
ああいう格調高い感じで書かなきゃと勝手に思いこんでいて!!

もう理想がめっちゃくちゃ高すぎて、一歩も踏み出せなかったんです。
あたりまえだわ。
あーはずかしい、あーはずかしい。
ところが、ある日、ふと気がついたんです。
「わたし、羅生門や山月記に憧れてるつもりになってるけど……」
「ほんとに夢中になって読んできたのは、
『桃尻娘』『なんて素敵にジャパネスク』だよね?」
笑笑笑
橋本治『桃尻娘』シリーズ、ですよ。
氷室冴子『なんジャパ』シリーズ、ですよ。

「あたし最近、お酒ってちょっとおいしいと思うのよね」
から始まる(すみませんいま手もとに桃尻娘なくて記憶で書いてます)、
女の子たちと男の子たちがひたすら、もうひたすらわちゃわちゃするだけの感動大河小説、
『桃尻娘』。

平安時代のはずなのに、姫が平気で野山を駆けまわって
「おととい来やがれ!」
って叫んじゃう、痛快青春ラブコメファンタジー、
『なんて素敵にジャパネスク』。
あんなふうに書いてみれば? まねして。
あんなふうに、ひたすらわちゃわちゃと、
頭の中で登場人物たちがしゃべってくれるとおりを書き留めていけば?


あんなふうに、自由に。

自分の中で、コルクの栓が、ぽん、と抜けた瞬間でした。
きっと、逆のケースもあるのでは、と思うんですね。
「一人称のが易しい、初心者は一人称で書くべし」と言われて、
無理して一人称で書いて、行き詰まっているかたが、
三人称にしただけで、
すごく、自由になれるかもしれません。
コルクの栓、ぽん!かもしれません。
このことが言いたくて、このエッセイを書いてます。
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登場人物紹介

ミミュラ


このチャットノベルの管理人。ときどきアマビエに変身する。

ヒツジのくせに眠るのが下手。へんな時間に起きてしまったり寝てしまったりする。
紅茶もコーヒーも、ココアも好き。(下戸)

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