その3 初心者のヒツジが「私」で書くか「彼女」で書くか迷ったお話

文字数 775文字

「小説の初心者は、一人称で書くとよい」

というハウツーをまにうけて、

ヒツジが一人称で書いてみたら、うまくいった、

的な、調子のよい話をしました。

ごめんなさい。

ちょっとウソつきました。

そんな一筋縄ではいかなかったです。

紆余曲折、試行錯誤ありました。

迷いました。
ヒツジだけに。
メ~~~~~~~。
その迷えるヒツジの失敗談、お話ししますね。


まず、小さな地方自治体の文学賞を見つけたんです。

ちょうどヒツジの勤め先のある区で、なじみの深いエリアだから、

そこを舞台にした小説を書いてみようと思い立ちました。

半分リアルで、半分フィクション。

忘れられないある体験を、題材にすることにしました。

主人公は自分に似た女性。

初心者らしく、素朴でナチュラルな設定にしてみた、つもりでした。

ところが。
このヒロインを「私」で書くか、
「彼女」で書くかが、決まりません。

最初は「私」で書いてみたんです。
名前や職業、年齢などなど、変えて。
でも……

心の声が言うんですね。
「あんた、こんな美人でも若くも性格良くもないやん笑」

って!

「初心者は『私』で書いてみるといい」

というアドバイスをする先生も、

そのとおりに「私」を主語にして、自分をモデルに書ける生徒さんも、

きっと、「ちゃんとした」人々なんだなぁと思いました。

ヒツジと違って。

ヒツジには無理だったんです。

ダメな自分を、正直に書けなくて、

どうしても美化しちゃうんです。

恥の多い人生を送ってきましたから!

その美化が自分ではずかしくて、

けっきょく、「私」から「彼女」に変えて、

「これは私じゃない。

私によく似た、もっと素敵な人のお話」

ということで無理やり自分をなっとくさせて、完成させました。

でも、その結果、

最初に書こうとしていた気もちも、

どこか「きれいごと」になってしまいました。

「小説は向いてないかもなぁ」

と、あきらめて……

次のページにつづきます。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ミミュラ


このチャットノベルの管理人。ときどきアマビエに変身する。

ヒツジのくせに眠るのが下手。へんな時間に起きてしまったり寝てしまったりする。
紅茶もコーヒーも、ココアも好き。(下戸)

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色