第5話 忍者と皇帝と魔導士団長
文字数 3,193文字
どんな仕組みで浮かんでいるのか気になって、
「おぃポレイト。なーにやってんだ」
「いや、どうやって浮かんでるのかなって……」
さっきまでのキザな喋り
「アハハハ! お前は風の
なるほどそういうことか。水の精霊が必死にこの小船を
それはさておき、さっきからチラチラと視線を送ってくるティーナに
「どうしてニッポンジンのことを知ってるんだ?」
「ウチの
「……お父さんの名前、聞いてもいいかな」
「サクラヨシオ。あなたの本当の名は?」
「ぽ、ポレイト。ポ・レ・イ・ト」
ティーナは困り顔で微笑む。
「そんなに何回も言わなくても分かってるよ。……
黙って聴いていたリエムが口を挟む。
「まぁ、そいつは別の機会に話そうぜ。もうすぐ崩れた城壁が見える。城ではおれに失礼な物言いをするな。おれの部下に殺されるぞ」
「え……。あ、はい」
「あと、陛下と話す時も気を付けろよ」
「そういえば、なんで俺は呼ばれてるのかな」
「お、いっけね。言ってなかったな。クライモニスへの遠征の手伝いをして欲しいとさ。おれの騎士団だけじゃ不安なんだろ」
「遠征? 手伝い?」
リエムは
「ちゃんと見返りを求めておけよ。
なにかとても変なことに巻き込まれそう、いや、もう巻き込まれてる気がする。ティーナから日本人の父親の話を聞きたいが、それも今はお預けのようだ。
困惑顔の
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
細マッチョな男たちが、崩れ落ちた大きな石の
「この石はどこから持ってきたんだ……でしょうか」
リエムが
「この丘……レミルガムは元々、山だったんだ。それを切り拓いて城を築き上げたのが初代と2代目の皇帝。城が完成した時に余った石材は、城の北側に積まれている。今回はそれを使ってるからすぐに用意が出来るというわけ」
レミルガムってこの場所そのもののことだったか。うーん、地理、歴史についてはディロスにでも聞いてみよう。
「で、皇帝……陛下はどこにいるん……でしょうか」
「ププッ。無理しなくてもいいぞ。陛下はまだお見えでないな」
お前が
「ティーナの姿が見えなくなりましたけど」
「彼女は用事が済むとすぐに消えるんだよ。なんだったかな、確か……ニン、なんとかっていう種族の真似事をしているらしい」
「ああ、ニンジャ……かな」
「そうだ、それだよ!」
楽しそうに話すリエムだが、ふと城壁の内部である
「ついて来い。陛下の元へ行くぞ」
急に真面目顔になった彼に対して苦笑しながら、
城壁内を
「ポレイト。こちらがこの辺り一帯の国を治めるフィゼアス皇帝陛下。そしてレミルガム魔導士団長であるゼミムだ」
白髪の男がふたり。整った
ただ、もうひとりのローブを
ゼミムが
「リエム。用が済んだならすぐに修復を指揮せよ。騎士団の動きが悪くて日ばかり過ぎているぞ」
「ですが遠征の用意もありなかなか人員を
「兄にクチごたえする気か? お前は言われた通りに動いていれば
「……分かりました。すぐに指揮を」
苦虫を噛み潰したような表情を見せて、リエムは石階段を
それを見届けて、皇帝が話し始める。
「旅人よ。先の戦いでは塔を守ってくれたそうだな。まずは礼を言おう」
「い、いえ……。俺はその、リエムと共に動いただけです」
巻き込まれただけですとは言い
「それで、もう一度リエムを助けてやって欲しいのだ。騎士団は一夜明ければクライモニスへ旅立つ。聞くところによれば
明日、か。やっぱり王都の観光はさせてくれないみたいだ。それは別にいいとして、ディロスやミディア、モナークが承諾してくれるかどうか。クライモニスに行くということは、またシイラと戦うことになるかも知れなくて、モナークはシイラに一度負けている。それでも行くと言ってくれるだろうか。
「
「これは依頼ではなく命令だァ。断ればダークエルフを王都に引き入れた罪でリエムを罰することになるぞ」
「命令? 陛下は頼みごとのように
「お前もクチごたえか。やはりリエムも、リエムの連れてくる者たちも、揃いも揃って役立たずだなァ!」
なんだ、こいつ……。
「リエムは……!」
「ゼミム、お前は下がりなさい。この旅人は
ゼミムは歯をギリギリと鳴らし歩き始め、
「
耳に
皇帝がひと息フゥと
「あれをどう思った?」
「え、あれ……とは」
皇帝は視線を回廊の先へと移す。どうやら魔導士団長ゼミムについての感想を述べよということらしい。
「怪しい……、いや、えっと……」
「フッ。素直に言ってくれて構わんよ。怪しい、か。初めて会う者にそう言わせてしまうのでは困りものだな」
「リ、リエムは面白い……です」
皇帝は豪快に笑う。
「ハッハッハ! ……ありがとう。実は
それ以上何を言えば
「リエムの命を守ってやってくれ。残念なことだが、ゼミムの心は闇に取り込まれつつあるようだ」
いつの間にか
『確かにあの男の心の奥には闇が
なにこの