第18話 届け物と本音と悪の企て
文字数 3,509文字
エメキオは
「どうしたのォ。その書状を貸してごらんヨ」
門兵から半ば強引に薄革の書状を引ったくり、じっと読み
「団長からポレイトとモナークに剣を渡すよう書いてあるわネ。まったく、
エメキオのピリつく発言は無視して、ミドリがポレイトとモナークのところまでトコトコ歩いて来た。
「ポレイト久しぶり。それと……もしかしてアンタがモナークかい? クヌワラートの鍛冶屋からふたりにお届け物だよ」
そう言って、ミドリは
「ありがとう。でもなんでミドリが?」
「いやぁ、実は王都までの道で迷っちゃって。砂漠の
モナークが長剣を
「すごい。こんな短い
「鍛冶師のブダクドがね、今度は大切に使って! だってさ。あと、代わりの剣はいつかまた
「そんな、銀貨5枚でそこまで……」
「何か、斬ってみたいなぁ」
「あたしも。別に人じゃなくてもいいから」
不穏な言葉を放つモナークに笑いながら、エメキオが提案する。
「それなら明日、
日本刀を鞘に納め、
「ミドリはどこに泊まるんだ?」
「さっき
モナークが鞘に納めかけた長剣を再び引き抜いた。その
「そ、そうじゃなくて! ミドリの
長剣をチラッと見遣る。すでに鞘に納まっていて、そいつで斬られる心配はなさそうだ。銀の腕輪も反応していない。
「それならブダクドにも聞いたよ。他にも頼まれ事が色々あって、明日は宿の近くの鍛冶屋に行くからそこで落ち合おうよ」
ミドリは鍛冶屋の場所を説明して去って行った。
野次馬含め一同解散して、
「あたしは、ポレイトのためなら命を捨てられるよ。……ポレイトは、どう?」
「俺は……」
リュミオに振り落とされて川で溺れ、世界を選択する羽目になった時、モナークのためにこの世界を選んだ。それ以前にも、この世界に留まることを決めた時だって、モナークのために、彼女と旅を続けたくてそうしたはずだ。
でも今まで決定的な言葉は
「モナーク、俺は君のことが、……君のことを愛してる。この命に換えても、君を守るよ」
灯火が、地面に落ちる彼女の涙を
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一夜明け、
「お、来た来た。まあ、そこに座ってよ」
「お前の店じゃねぇだろ」
いきなりの寸劇はさておき、3人は雑然と置かれた木椅子に座る。
「そこの大きい人、えっと……」
「エメキオ。よろしくネ!」
「あ、うん。よろしく。エメキオは騎士団だよね。近々、
「どうしてそう思うの?」
「
エメキオは、まるで猛獣の寝起きみたいな
「俺も聞きたい。急に隊長が剣を教えてくれたり、ティーナがずっと宿を見張ってたり、……何か
「……ハァ。団長からは口止めされてるけど、そうよネ。気になるわよネ」
エメキオはその巨体を立ち上げ、壁にズラッと並んだ
「ここでは話をし
「あ、ああ。オイラは奥で作業するから、好きに使ってくれ」
店主はそう言って、奥の扉を
「良かったワぁ。ポレイト、この
「ミドリなら、信用出来ると思います」
「分かった。……ティーナ。出てきて」
突然、
「うわっ!」
椅子から転げ落ちた
「そんな驚かなくても。モナークは私がここに居ること分かってたはず。何回か目が合ったから」
「うん。昨日の城門でのやり取りも、他の人たちに
話しながらティーナはミドリに歩み寄り、じっと彼女の
「……本物。火の
「
「
そういうものなのか。しかし、色んなものを疑って、たくさんの人を監視してるあたり……。
「俺たちも完全に信用されてないってことか」
「そういうわけじゃないけど、ポレイトは……、とりあえず話を進めましょう」
メチャクチャ気になるところで切られたが、おとなしく話の続きを聴くことにした。
「魔導士団、いえ、ゼミムが悪事を
悪の国王については、以前バンサレアでミドリに聞いた。王都では災厄の魔導士とやらが暴れてたとかなんとか。
「それを北の独立国、アルウェイナで進めてる。皇帝が同盟を持ちかけても全く
「それはリエムも知ってるのかな」
「もちろん。
エメキオがまた
「皇帝の様子がおかしいのよネェ。すっごいダンディだったのに、すっかり痩せこけちゃって。魅力半減だワ」
皇帝という
「クライモニスに向かう前、皇帝が『ゼミムの心は闇に取り込まれつつある』って言ってたな。ただ性格が悪くなったのかと思ってたけど……」
少しの静寂。
『ふわぁ。寝てる時に起こすの、やめてくれない?』
「寝てるかどうかなんて、どうやったら分かるんだよ。それより、噂とか、
『人族とか魔物とか戦争とか陰謀とか、精霊にとってはどうでもいい。キミがいなくなったら他の遊びを見つけるだけだし、どこの国が栄えようが滅びようが、精霊には関係ないもの。面白いことなら協力してあげるけどね』
がっくり
「ポレイトはどうして
「緑色の光がくるくる回ってるね。精霊かな」
ふたりの疑問にモナークが答える。
「ああ、ポレイトは風の精霊と話が出来るんだよ。たまにああやって突然ブツブツ話し始めるんだ」
エメキオとティーナとミドリが目を大きく
『精霊って、喋るの?!』