第28話

文字数 1,114文字

それから20分ほどで先生のアパートに着いた。
アパートの2階の角部屋らしい。
普通のアパート。下手したら学生さんの住んでるような簡素な外観なのに、先生が住んでいると言うだけでシックな造りに見えてしまう。
いや、私の頭の中は先生の家にお邪魔する、と言う一点で血が上りすぎてボーッとしてた。
「さあ、どうぞ。と、言っても狭くて汚いところだけど」
「・・・お邪魔します」
緊張のためようやくそれだけ言うと、中に入った。
先生は狭くて汚いと言ってたけど、なかなかどうして。
スッキリと片付いていて家具なんかもシンプルだけど、品の良さがある。
私個人としては可愛い物で固めたい方だけど、先生の部屋は大人の男性らしさがあって格好いい。
一緒に住んで、一部屋をもらってそこは私好みの可愛いお部屋にする。
そして、先生のシックで品のある家具を毎日掃除するんだ。
この落ち着いたキッチンには可愛いお鍋とかフライパンとか合うのかな?
何か違和感が・・・
エプロンは可愛い物を着けてもいいかな?
それとも合わせた方が?
いや、先生なら私の好みを尊重してくれるだろうから大丈夫。
そんな妄想が頭に浮かんで、ぼんやりと突っ立ってしまっていた。
「日高?どうした?」
先生の声でハッと我に返った。
マズいマズい。本当にこの妄想癖直さなきゃ。
「あ、すいません・・・何でも無いです」
ああ、恥ずかしい。
「ならいいけど。そろそろ浴衣、着替えなきゃだね」
「そうですね・・・で、あの・・・お部屋借りても良いですか?」
そう言うと先生は一瞬キョトンとしたがすぐに察したのか「もちろん。良かったらこっちの部屋使って」とにこやかに示してくれた。
流石に先生の前で着替えるのは抵抗があるどころでは無い。
中学に入って最初の水泳の授業では、他の男子に混じって先生の前で着替えはしたけど、あの時も本音は男性の前で裸を見せたくは無かった。
毎年、苦痛すぎてプールの授業前日は胃痛で食事が取れないくらいで・・・
パパもママも私が泳ぐのが嫌いなんだと思ってたようだけど、泳ぐこと自体はむしろ好きな方。
でも、男子の下腹部を見たくないし自分のを見せるのは辛い。
まして、あの当時は先生のことは意識していなかった。
今の私はとてもあんな事出来ない。
それこそ恥ずかしさで失神してしまうかも。
そんな事を考えながら、ゆるゆると服を脱いでいく。
下着は・・・迷ったけど、履いておく事にした。
鏡に映る自分の裸をじっと見る。
透けるように白い肌。
元々骨格が華奢な事に加えて、生来筋肉が付きにくい体質。背も男子にしては低い方。
そのため、男子っぽさは無く女子の服を着るときにはそれが幸いしているから有り難い。
「色々、間違ってるよね・・・」
思わずポロリと口から漏れた。
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