第1話

文字数 3,589文字

「……はあ、はあ、はあ……」

(ひたい)に第三の()を持つ異相の男は汗をかいていた。
夜の波打ち際とでも呼べそうな場所で、油断なく身構えていた。
第三の眼と同じく異相である二対の腕には、剣と槍、槌と斧が握られている。
頭部以外は地肌がほぼ見えない、完全な重武装。
此処(ここ)は戦場だった。

(終わった――? ……いや、まだだ――来る!!

勘は外れなかった。
目の前で空間が歪み、自身を軽々と一()みにできる、馬鹿でかくて馬鹿長い異形の首が現われる。
そして、問答無用とばかりに襲い掛かってきた。

(何匹目だ、これで――!?

内心で愚痴りはしたが、数える事には重心が無い。
なぜなら、覚えていない。覚えておくつもりがない。
今までに撃破した敵の数は100万や200万ではきかないからだ。

頭部と頸部だけで構成された有機物とも無機物ともつかない巨大な首が、生え揃っていた巨大な牙を銃弾のように吐き出す。

「……っ!」

掠っただけで即死。そんな威力があるのはとっくに承知していた。

「はっ、その程度か! その程度で俺が獲れると思うなら――くたばるのは、貴様だっ!!

牙の砲弾を防ぐ壁のように歪んだ空間から光の柱が撃ち出され、異形の頭部を直撃する。
一瞬で根元まで破壊されて、消失した。

「……はあ、はあ、はあ……」

(終わりか!? それともまだ、増援が――)

油断なく、周囲に気を配る。

どれだけ身構えていただろうか。音すらろくに無い空間で、男はようやく構えを解いた。
そこへ。

「よう、お疲れさん」

いきなり、親し気に声を掛けて来る男が現われた。

「――――」

額の眼と二対の腕は魔族にのみ許された異相。目の前の男は、同族。
だが。

「どうしたよ?」

気を許すどころか顔を硬くした男に、新しく現れた男は笑いかけた。

「……くたばった、と聞いていたが――()まれたのか……!」

笑顔が拍子抜けしたように歪んだ。

「なんだ、バレてたのか――」

そして、悪意が加わる。

「だったら、解ってるだろう? もう、俺は昨日までの俺じゃない! お前達全てを呑み下せる力と(うつわ)を手に入れた偉大な存在だと――!!

「寝言は、寝てからにしろ――!!

疲れ果てていた。このまま、気絶したいほど。
だが、食われるわけにはいかない。
それでは意味が無い。全てを捨てた意味が無い。幾人もの先達を、後続達の死を看取ってまで戦い続けた意味が無い――!
残してきた者の為にも、戦い続け、勝ち続けなければ――。

己の内から力を呼び覚まし、練り上げて、敵に最適な武具に変えていく。

敵には増援が在る。無尽蔵と言ってもいい戦力が控えている。けれど、男には無い。男が最後の一人だ。
ただ、戦場は此処のみではなく、基地と呼べる場所も他に在る。
だが、救けを求めることは出来なかった。
ギリギリのところで戦っているのは、男だけではない。皆同じだ。そもそも、そんなことをしている暇自体が無い。
食われたくなかったら、護り続けたかったら、生き続けていたかったら――――

殺せ。

戦い続けろ。
泣き言を言う間に剣を(ふる)い、魔力を叩きつけ、全ての敵を破壊し尽くせ。
それ以外に(すべ)はない。
此処は――戦場だ。支えも、寄る辺も、何一つ無い。
弱音など吐ける暇が有るのなら、一匹でも多くの敵を(ほふ)れ――己が守るものの為に。

けれど、今日は何時になく疲弊していた。
もしかしたら、狙われたのかもしれない。この戦場で最古参になる男を食らおうと、手ぐすねを引かれたのかもしれない。


しかし。
今日に限っては、余計な割り込みがあった。


「――――!!

世界が一瞬で光の乱舞に染め上げられた。

不意を打たれた、と死を覚悟した。盟約を果せずに力尽きた(ともがら)の一人に自分の名前が追加されるのが、(たま)らなく悔しかった。
不毛以外の言葉では形容できない戦いを何万年も戦い抜いた。最後まで、戦い続けたかった――。

「……あのう、感傷的になっているところ、大変申し訳ないのですが――」

妙に緊迫感に欠けた、しかし、男の声に、割り込んできたものの正体を悟る。

「まさか、……(とき)が……?」

男は愕然と呟いていた。

視力が戻った世界はモノクロで(かたど)られ、敵と男とを隔てるように光の球が輝いてる。

刻……それは、盟約が果たされた瞬間。男が不毛な戦場で戦い続ける唯一の理由にして、たった一つの褒賞を手にする時間。ずっと、待ち望んでいたもの。焦がれ続けていたもの。

「ええーと……、どう言ったらいいかなあ……?」

今さら言葉を選ぶ他人行儀に、男は失望を覚えた。
待ち望んでいたのは、この果ても切りも存在しない戦場に自身を送り込んでくれたモノ。
あらゆる感情を叩きつけて尚足りない、この世でたった一つの存在(モノ)
目の前のそれは……違う。男の知るそれとは違う。
悪びれられる筋合いは在っても、他人のように遠慮される義理は無い。

「失せろ。お前に用は無い」

「ええーっ、そんな言い方は――!」

「……お前、俺を此処に送り込んでくれた奴じゃないだろう!」

「うっ。…………御名答、だけど。でも、助けてあげたんだよ? 話ぐらい聞いてくれても!」

「仲間は今も戦い続けている!! [停止]を解け!!

世界をモノクロに塗り替えた犯人――握り(こぶし)大の光の球に、手にした戦斧を突きつける。

ところが。

半泣きめいた気配が好奇心を漂わせ始めた。一体、何が(きょう)()いたというのか。

「……へえ……、結構、硬いんだねえ。でも、それは俺の用事が済んでからだね。ちなみに、これ大技だからね。〈界〉の中でならまだいざ知らず、此処で此処までの真似が出来るのは――」

目線の高さに固定されていた光の球が、ふよふよ、男の周囲を適当に漂い始める。
自慢話の終わりは見えそうになかった。

(……これだから、神という奴は――!)

マイペースにも程が在る上、人相すら存在しない光の球のくせして、万華鏡のように細かく印象が変わっていく。
聞き分けの無い子供が(まばた)き一つで達観した老人になり、かと思えば若者に、働き盛りに。男が女に変わったかと思えば、女から男に戻ったり、時に無性別を覗かせる。
掴み所も、捉え所も無い変な所だけ奴とあまりにそっくりで、妙に腹が立った。

「失せろ!」

「やーだもん。大魔王の(くら)すら蹴飛ばせる気性と器量の魔族の前に姿を現すのは、並大抵の事じゃないんだからね! 二度も三度もなんて願い下げ。俺の根性の方がもちまっしぇーん!」

苛立ちを殺気に変えて、解らせる意味も込めて叩きつけた。

「……押し通る! 殺してでもな」

剣閃が光の球を両断する――とはならなかった。
外したはずはないのに、光の球は目の前にある。

「んもう! 伝言だって持ってきたのにー!」

驚きを表すようにふるふると震え、腹立ちを表すようにぽんぽんと跳ねる。

それを早く言え!! そう怒鳴りつけてやりたかったが――。

「……ほんと、聞いてた通りの気性だねえ……」

そして、光の球は勝手に男の頭頂に陣取った。

「心配しないで大丈夫よ? ぜーんぶ時間が止まってるからね!」

「やかましい。さっさと伝言を伝えろ」

引き剥がそうと頭を(まさぐ)ったが、ほんのり温かい感触が在るだけで、掴むことは出来なかった。

「えー、話ぐらいしようよー」

虹に光る球体が転がるような動きで肩に降りて来る。

「断る。二君は持たない主義だ」

「わあお! スカウトしたくなるくらい素敵ー! でもね、慌てる乞食は(もら)いが少ないってね」

「……おい!」

呑気さに釘を刺そうとした次の瞬間。
停止空間にひびが入る音を聞いてしまった。

「何っ(不味い! 今の俺ではこいつを護れない!!?!

[停止]が砕かれる。モノクロに染め上げられた世界が粉々になっていく。

しかし、肩から聞こえたため気は何処までも呑気だった。

「……っとに、もう!」

そして、一瞬で豹変した。

「水を差そうなど――万年は早い!」

襲い掛かろうとしていた敵を、虹色の光芒(こうぼう)が刺し貫いた。

「――――」

たったそれだけで崩れて塵になり、水に溶かされるように消えていく。
呆気なさ過ぎる決着だった。

「牙を剥こうなど、とんだ身の程知らず。姿形を得た程度で、よくぞそこまで逆上(のぼ)せ上がれたものよな」

感情を感じさせない平板な口調。
傲慢な台詞なのに、単純な事実を語るような恬淡(てんたん)さも、確かに、同類だと思えた。
そして、恩人になるのだろう…………一応。
少しだけ、妥協してもいい気分になっていた。

「伝言が先だ。話にも、少しでいいなら、付き合ってやる」

「――ん? 本当?! いいの!?

一瞬で得体の知れない深沈さが、世間知らずの呑気に取って代わる。
それだけでもため息ものだったのに。

「――あ。ちょっと待っててね。今、此方(こなた)彼方(かなた)を繋いじゃうから!」

段取りの悪さに、ため息が抑えきれなくなる。
しかし、一瞬で虹色の光芒が氾濫し、世界を再び無限の色彩の中に消し去ってしまった。

「――――」

別「神」だとは解っている。

それでも。

世界を一方的に塗り替えていく虹の輝きは、あの日あの時のままと思えるほど変わらなかった――。

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登場人物紹介

お初にお目に掛かり申す!!

吾輩、ゴロリと申す猫である!

故あって、この短編集の人物紹介を担当いたす。

公開に応じて、登場人物が随時追加されていく予定であるので、よろしく付き合い願いたい!

まずは、プロローグだな。


●それ:

…………いいのか? いきなりこれで……。

ま、まあ、一応、神様で……オス、だそうだ。

名前で呼ばれることは滅多になく、通称や肩書き呼びが普通……か。

けったいなことだ。……何?

次の人物が旅立つことになる世界の神様ではないから、なおさらに名前は出てこない?


……うーむ……。

妙な仕事を請け負ってしまったか……。


次だ。


●いい年をした精悍な男:

…………いいのか? ……ん? 作者都合で秘密、出て来ても偽名だけ……?

…………。

……ま、まあ、次だ。

なになに? いい歳をしたマッチョで、魔法じみた能力を持ち、数奇な人生を歩いて来た……と。

日頃蓄積しているストレスの発散を求めて、神の御座所に押しかけて来た、黙っていれば男前……。


……うーむ……。

請け負ったことを後悔しなければいいが……。


気を取り直して。

盟約の魔、第1話だ。


●第三の眼を持つ異相の男:

名前は……また、秘密か。明かすのは別のタイミングで! とのことだが……。

何時になるのか、何時にするのか。……考えてない、ではないことを祈ろう。

魔族、男性、歴戦の勇士。神との契約――盟約に従って、世界の外側に送り込まれた。

以来、ずっと戦い続けている。


難儀な身の上のようだな。吾輩が同情したところで、何も役には立たないが……ま、よかろう。


では、次。


●割り込んだ者の正体:

……諦めた方がいいのか……? いや、請け負った以上、仕事は全うする所存だが。

……さて。


神。何? プロローグの「それ」と同一の存在!? 

……神様繋がりで仕事……頼まれ事を請け負って、世界の外側に降臨した――か。

ふむ、世界の外側とやらが気になるが……人物紹介でそこは説明できないか。残念だ。


今回は此処までのようだな。しかし……

大丈夫なんだろうな、この仕事……。


……ふう。

盟約の魔、第2話だ。


●魔族の青年:

第1話の男の若かりし日、だな。共通点は額に第三の眼が在ること。

神の呼子と出会ってしまったことからしても、難儀さは若い頃から、ということらしい。

あまりうまくいっていない親子仲を気にしている。

正式な名前が登場すれば、初めてのまともな仕事になったのになあ……。


次。


●煤けた大男:

…………またか。

プロローグに登場した偉丈夫だな。憂さ晴らしに出たはずだが、妙なことになっているようだ。

基本的な設定自体は、プロローグと変わらないらしい。おっと、種族は人間か。


さて、次。


●珍妙な生き物:

…………。これは……ん? 妙なメモが……?


”このキャラクターは、作者の別のシリーズでウェイトのあるポジションに位置している為、

原則秘密――明かせません!! 詳細に関しましては作中に出て来る情報だけでご勘弁を!

友情出演Aです”


……友情出演A……とな? 何故、出した……。



今日は……ここまでのようだな。寝よう。眩暈がする……気がする……。


……第三話(前編)か。


ん? んん? 新規の登場人物は、無し??

……珍しいこともあるものだな……。

ま、よかろう。――む。メモが挟まれているではないか! どれどれ……


◎鋼玉(はがねだま)について。

一応、異世界の鉱物という設定ですが、名前から類推可能な通り、鋼玉(こうぎょく)……コランダムが元ネタとなっています。

中でも、宝石質(最悪でも、研磨すれば宝飾として価値がつく品質)のものには別の名称がありまして、赤色系がルビー、それ以外がサファイアです。

作中では、紅玉(こうぎょく)……ルビー 蒼玉(そうぎょく)……サファイア ですね。

紅玉には火の力が、蒼玉には氷の力が秘められている、という設定です。

尚、作中の世界においては、蒼玉を名乗れるのは青色系のものだけで、それ以外の色彩は鋼玉で一まとめにされ、原則、特別な名称は持ちません。


…………。

まあいい。明日を待つことにするか……寝る。


第三話(後編)。

……ふむ。またもや、新規の登場人物は無し、と。

ま、退屈もまた良かろうよ。……ふわーあ……。


………………


………………


……………………はて? 何かを忘れている気が……?


む!? この気配――まさか、飼い主か?! もう、戻って来た……!?

い、いかん! この副業を知られるわけには――!!


……(ドタドタ)……


昨日は危なかった……! 

今日は大丈夫。玄関にもきちんと鍵が掛かってるからな! 帰ってくれば、解る。

では、第4話(前編)だ。


●母:

……突っ込んでいいと思う。誰の母だ、と。

……魔族の青年の……、ならば、彼女も魔族だな。

ふむ。若過ぎた女……? 

彼女自身不遇な生い立ちの持ち主で、中々心を開ける大人に出会えなかった……。

母になるには若過ぎた、ということか? 息子である青年とはあまり上手くいっていない、とは。


●勇者:

……まあ、格好いい名前が出て来るが……。何? 義理の父!?

伝説の勇者で、魔王を討ち滅ぼして世界に平和をもたらしたが……。

難儀な男、というのは解ったが……義理の父……。うーむ……。


●仲の悪い仲間の一人:

村人A……しか、無いのか? つまり、モブAか。……ま、よかろ


●村長:

むらおさ。そう読んで欲しいようだな。……ふむ。

まだ、年若く、長の立場が重荷になることもある男。

出来過ぎた父、先代族長とその親友に引け目を持っていて、拗ねていた。

魔族の青年とはやや感情的な確執がある。


●年下の仲間:

青年とは比較的仲が良い、村人B。若さと実力の低さからいじめられる側になりがち。


●妹:

……この作者は……。……ん? エメル=ミディア。……あるのか、名前……。

はっ! は、初めての、まともな人物名!? そ、そんな馬鹿な……!! ――はっ、吾輩が毒されてどうする!


……こほん。


魔族の青年の妹。若さゆえの天真爛漫さの持ち主。芯も意外としっかりしている。

母の生まれ故郷に来たことと、腹違いの兄が居ることに期待を覚えている。


……(きょろきょろ)……。

よし、誰もいないな……!

第4話(後編)である。


ん?

……………………。


……新規登場人物は、無し……!?


くっ……! 飼い主の目を盗む苦労が、水泡に帰そうとは……!!

愚痴にしても仕方がないが、この悔しさはいかんともしがたい……。

――む!


…………


……行ったか……! 

いかんな。このままでは、バレる。吾輩の副業が、バレてしまう……!

悪い人物ではないのだが、表に出して良いものか、困惑してしまう部分もあるし……。


…………


……ええい! 吾輩を探しておるな!? 手慰みに可愛がるつもりだろうが……!

この部屋も危険になって来た、そういうことだな。

然らば、御免!!


……ZZZ…… ……ZZZ……


ゴロリは縁側でのんびり眠っている。


第5話(前編)も仕事なくて、暇を持て余したらしい。


ゴロリは縁側でのんびり眠っている。


……ZZZ…… ……ZZZ……



(そろり、そろりと忍び寄る、縦ロールが一人……)


第5話(中編)である。


……またか、新規登場人物なし……。

楽な仕事でいいのか、退屈な仕事で悪いのか……、やれやれだ。


今回は中編か……。流石に、3話、4話と前後編が続いたから、芸がないと思ったのか?

……ん? 吾輩か? 無いぞ、芸などというものはな。

人間が身に着けるものを、猫が身に着けてどうする。

そもそも、餌で釣らねば仕込めないものが大半なのだろう?

無理矢理覚えたところで、何の役に立つのやら……。


――む! そういえば……飼い主が一時期、やたらと吾輩に妙な事をさせたがっていたが……。

もしや、そういうこと……なのか?! 碌でもないことばかり考える飼い主め……!

まあ、だからこそ、この副業のことも秘密せねばならんのだがな。


とりあえず、明日こそは仕事が在ることを願っておこうか。


第5話(後編)だ。


…………。



…………またか。こんなに新規の登場人物無しで、大丈夫なのか?

いや、仕事が無いことを……いや、愚痴っているな。諦めよう。

吾輩は往生際の悪い飼い主ではないのだから……。


――む!


噂をすれば影が差す、とはな。此処で飼い主に掴まるわけにはいかぬ。

大人しく、退散するとしよう。


……おかしいわね。此処にもゴロリが居ないわ……。


(縦ロールがこれだけ&作者に絵心無しにつき、このアイコンを採用しました(汗))


最近、妙に私を避けている気がするのだけれど……、可愛がり過ぎたのかしら?

元々野良猫で、芸を仕込もうと試している内に家猫になってしまった子ですから、

中々懐いては貰えないのですけれど。……気になりますわね。


爺(じい)は何か知っているようですけれど、はぐらかすばかりですし……。


……あら? 私のノートPC……電源は切っておいたはず……。


……はあ、はあ……、く、苦労したぞ……。

飼い主め、今日に限っては妙にしつこい……!


さて、仕事だ……!


……………………またか。ま・た・か!!



くううっ、吾輩が、どれだけ苦労して――、む!! この気配の近さ……逃げねば!!


……ま、またもや逃げられましたわ……!

ゴロリ、我が家の飼い猫ながら、やりますわね……!!


…………また、ですわね。…………第6話……?


まさか、ゴロリに読書などという趣味が……?

いえ、芸というべきかしら? 仕込んだ覚えなどありませんが……。


まあ、爺に聞いてみるとしましょう。

猫の読書は芸と呼ぶべきなのかどうか、を。


あけまして、おめでとうござりまする!

新年の初仕事は……鋼玉(はがねだま)の腕輪 第1話だな。

さて、あまり期待せずに行くとしようか。


●糞親父:

……やはりな。この作者は……。一応、最速の登場タイミングから抜粋しているようだが……。

まあいい。”友情出演A”だそうだ。初登場時と変わらない、ということだな。


さて、次だ。


●俺:

…………。

(負けだ……気にしたら、負けだ……! そうに違いない……!!)

はっ……、うむ、盟約の魔から引き続き登場している偉丈夫のようだな。

妙な状況に陥っているようだが……。憂さ晴らしが出来るといいな。



●花嫁さん:

…………これか。純然たる新規の登場人物だろうに……。

名前が出てくることを願おう。

我が飼い主も、何時か、こう呼べる日が来るといいのだがなあ……。



――む。性懲りもなく吾輩を探し回っているようだな……。

可笑しなことになる前に、去るとしよう。


……また、逃げられましたか……。

折角、鰹節ご飯を用意しましたのに。薄情な猫ですわね……。


――と。いけない。伝言を頼まれてましたっけ。

代読させて頂きますわね。


”第二編、鋼玉の腕輪より先は、新規の登場人物が無い場合、基本、当コーナーは割愛となります。”


ですって。


……ネタ切れを体よく言い換えたような文章、のような感もしますけれど……。

ま、よろしいでしょう。



……あら? もしかして、ですけれど。この伝言……ゴロリの隠し事と何か関係が……?




――んもう! 私には大声を出すなと叱りますのに、

どうして、私を呼びつける時は大きな声を出すのかしらね、ばあやは。

え? お誘いの電話……!? 誰――ええっ?! あいつからって――!!

今日は雨? 雪?? 槍――いや、隕石の直撃が在るのかしら!? こ、こうしてはいられません――!!


……(ドタドタドタドタ)……

蒼玉編 第2話だ。


……飼い主がやけにそわついて家を出たようだが……、まあ、吾輩には関係ないことだ。

仕事、仕事。と。


●私:

第1話の花嫁さん。エリアルド=リングルード。跡取り娘。

戦争に出征し、音信が乏しくなった婚約者と、親が周囲に押し切られて用意してきた許嫁の間で悩んでいる。

心は婚約者に在るが、家や領地の事情まで考えると……、という板挟み。

或る日、気分転換に出て、行き倒れに遭遇した。


……何故だ……。何故、此処までまともな設定が一番最初に出てこないんだ……。

……ふう。次!


●大柄な男:

第1話の俺。…………。

……ふむ。視点が異なるから、ということか? 追加情報も無いようだし……。


次。


●料理番:

館に住み込む料理担当の家人。職人気質で、筋肉質な体つき。


●ばあや:

エリアルド嬢の面倒を見て来た老婦人。家族よりも近しい部分がある。モブ。


●両親:

エリアルド嬢の両親。領主と領主婦人。人の上に立つ立場だからこそ、板挟みになる。モブ。


●いけ好かないちょび髭:

エリアルド嬢の両親が周囲に押し付けられた許嫁。当人も縁談にはあまり乗り気ではないが、断る理由もない。

見た目はナイスミドル。資産家。モブ


……妙に、モブが多いな。次!


●あの人:

エリアルド嬢の婚約者。戦争に出征し、個人的な音信が掴めなくなったはずの人物。

グルンガルドは姓。

精悍な青年で、物腰は穏やかだが、誰も喧嘩を売りにいかない。


蒼玉編 第3話だ。


……ん? 


●オライオン=グルンガルド:

第2話のあの人。


……ただの補足か。待たせるようなネタだったのか……? ま、よかろう。

短くとも、仕事は仕事。


さて、今日はどのあたりでひなたぼっこと行こうかな……?


蒼玉編 第5話である!


どれ……。


●執事長:

エリアルド嬢の両親に仕えている初老の男性。モブ。


ふむ。我が飼い主の爺や殿のような立場の人物かな……? 苦労が多そうな気がするな。

さて、次。


●年下の叔父御:

……好きだな、この手の言い方が。作者の趣味なのか??

さてさて。


……友情出演Bにつき、詳細は秘密、とな!?

まあ、叔父というからには、身内ではあるのだろうがな……。

ま、よかろ。


……ふう。

なんでだろうな。大した仕事をしているわけではないのだが……、どうも、ため息をつきたくなるというか。


さて、今日は屋根の上でひなたぼっこと行くかな。

飼い主に邪魔されない、貴重な場所だしな。


一日間をおいて、紅玉編とな。

緩急をつけてみようという腹か? どんな意味があるかは解からないが……。

さて、第1話だ。


●俺:

一応、主人公か……? 蒼玉編から続投している、と。

新しい設定も無いようだな。


次。


●珍妙な生き物:

…………。

…………はて? 何処ぞで見た気がするが……、…………”友情出演C”!?

ということは、別人(?)、ということだな。

ここで述べられる情報は無し、と。…………。


……次!


●宿の親父:

善良な人柄の持ち主。モブ。


以上だな。……ふう。やれやれだ。何をしたわけでもないが、やれやれだ。

そうだな……今日は、台所に行こう。何か美味しいおすそ分けでも期待したい気分だ……。


さて、紅玉編 第2話。


●私(村娘):

村の若い者組の一人。初恋が突然やって来た少女。


……きちんとした名前を用意すればいいのだろうに……。次。


●家主の親父:

村娘の父親。モブ。


今日はこんな所か。さて、往生際の悪い飼い主が来る前に逃げるとしよう。


紅玉編 第3話である!


●化け物:

……うん、まあ、名称に関しては諦めるとしよう。

なになに?

契約によってこき使われてはいるが、花も実も兼ね備えた大物。

けれど、上には上がいた……。

詳細は、読め、ということだな。……吾輩が人間の読み物を読んでどうする!!


次。


●ろくでなし共:

モブ。


次!


●超大物:

……解ってはいても、なあ……。ふう。

…………友情出演D、とな?

見た感じ、中々の苦労人にも思えるが……。

まあ、同情しても仕方あるまいな。


ふむ。此処までだな。

では、じいや殿のおやつを相伴しに行くとするか。


紅玉編 第4話だ!

順調な仕事で何よりだな。

さて。


●長らしい人間:

村長。モブ。


●後ろの子:

……だから、この作者は……。ふう。

魔族の少年。外見年齢は十代前半だが……。

どう足掻いても、自分を縛り上げた人間の男に勝てなかった。


●村人A:

モブ。


今日はこれで終わりだな。では……たまには昼寝でもしていくか。

証拠隠滅、完了! と。さて、何処がいいかな? ベッドの下などは定番だが……。


紅玉編 第5話だな。


●妹ちゃん:

ふむ。『盟約の魔』で登場した女の子だな。

追加事項も無し、と。


次だ。


●村長である色男:

これも、『盟約の魔』で登場済み、と。

……名前ぐらい考えてやればいいだろうに……。


む! 何気に初の皆勤か?! 今の所、休暇が無かったとは! めでたい。

……これで、もう少しまともな仕事だったら、飯も美味かろうになあ……。


華燭の因縁 第一話、だな。

ふむ。この話が最後のエピソードになるのか……。

では、紹介といこう。


●私:

…………。

呆れるよりも前に仕事だ。

10代の少女。生贄になることを志願した。


……なんだ? 妙に重い設定だな。吾輩の飼い主とは違い過ぎる……。


次。


●竜:

…………。

……いや、まあ、何と言うかだな。紹介してよかったのか? 人物ではないのだが。

全長10mを超える体躯、赤黒く輝く鱗、濁った金色の瞳……本編でやるべき描写では……?

ん……?


●屈強な若者:

……なるほど? 何がしかの因果がある、と。話を読み進めれば解るということか??


次。


●村長:

ふむ。少女の父親か。村の過去や立地から苦しい立場に居る人物。

……ん? この設定はひょっとして……?

此処で語るのはよそう。読めば察せる類のものだからな。


●婿:

…………。

まあいい。此処はバラしてしまおう。屈強な若者のことだな。

まあ、立場を変えれば見方も変わるか……。


次!


●男:

…………だから。――いや、我慢だ! 吾輩!! あと少し。あと少し――!


こほん。


やや不遇な生い立ちの魔族の青年。愛されなかったわけではないが、一目を置かれたかった。

子供時代の背伸びを拗らせて、力を奉じ、力に酔うろくでなしになってしまった。


……割と具体的な設定があるのに……名前は……?


……次。


●弟を自称する男:

魔族。異様な能力の持ち主。ピンとくる人はピンとくるかも――知れない。


……それだけか? 他に、読み上げられる設定は無いのか……?


…………はあ。数はこなせたようだが……。

始まるまでは、もう少しまともな仕事だとばかり思っていたがなあ……。

それでも、マシか。飼い主に構われるよりは……はあ。


今日は……interlude……幕間とな?

ほうほう。殊勝そうな響きだが……さて。


●メリア:

女性。元魔術師の賢者。無鉄砲な所がある幼馴染に思いを寄せていた。


…………。

…………な、何があった?! 作者はついに、悪い物でも食したのか!?

――あ。……いや、まあ……こほん!


次、次だ!


●ライド:

男性。力尽きた勇者。勇敢ではあるが、情の強い部分が在り、視野が狭くなりがちだった。

恋愛感情には鈍い方。


……じーん……。まともだ……。なんて、まともな仕事なんだ……!!

しかし。……妙に沈んだ雰囲気を感じさせる設定だな……。


次!


●ラセル:

男性。神官。上記二人の幼馴染。メリアに淡い想いを抱いている。


…………。

これが……幕間……。こんなにまともな仕事が……脇道、なのか……。


……次。


●俺:

来たか。ついに……。まあ、よかろ。今日は気分がいいしな。うん。


男性。剣士。パーティリーダー。暴走する気配を見せていた勇者を討った人物。


重い話、のようだな。

ふむ、次で最後か。


●竜:

巨大な体躯を誇る赤竜。雄。勇者一行に力を貸したが、快く思ってはいない。


……はあ。次回もこんな風にいってもらいたいものだな……。

期待するべきか……いや、諦めの予防線を張っておくか。

ん? 付箋付き……?

”勇者様御一行は、この幕間だけの登場人物です。悪しからず”

……何が悪しからずなんだ??


華燭の因縁 第二話だな。


●父様:

……誰のだ。

ん? 少年の呟きから取ったか……。関係性はすぐに解ったがな……。

まあいい。人間ではない存在、だそうだ。


次。


●少年:

……慣れて来たなあ、吾輩も。それでも、突っ込みたい衝動が消えないがな。

人と人ならざるものとの混血。片親の正体が何なのか――は、読んでくれ、ということだろうな。

健やかに育って欲しいものだが……間違っても、吾輩の飼い主のようにはならないでくれよ。


次。


●彼女:

…………。

……ええと、だな。彼氏と同年代の少女。彼氏の秘密を知って、受け入れたが……。

ふむ。何やら、因果な物がありそうな感じだが。


……はあ。良い仕事が出来たと思えたのは一日しか続かなかったなあ……。

ま、期待とは違っても仕事は仕事。そして、終わりは何時かは来るものだ。

それまで、気長に待つのも一興だろうよ……。昼寝に行くか。


エピローグ……そうか、これで最後なのだな。

名残惜しい……という気分にはならんか。まあいい。仕事だ。


●俺様:

…………、……ん? ”友情出演A”?

ならば、これ以上紹介できる情報はないな。


次。


●神様:

プロローグにも登場した神様。


次。


●主君:

『俺様』の上役。友情出演E。


以上。


年末から始まった付き合いも此処まで。

なんともけったいな仕事になってしまったが……無事、完遂できたことを喜んでおこう。

吾輩にまたがあるかどうかは判らないが――折が在れば、になるのだろうな。

此処まで付き合ってくださって、本当にありがとう!

作者に代わって――、――む!? この気配は……まさか、飼い主か?!

いかん! この副業を知られるわけには――!!


ええい、名残ぐらい感傷的に味わわせればいいものを……!

吾輩はこれにて去る! さらばだ、皆の衆! 是非、この作品を楽しんでくれ!!

それでいい。それだけで十分だ。では――!


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