第5話(中編)

文字数 2,798文字

「出せ」

端的過ぎる要求に、村(おさ)苛立(いらだ)つ。

「……お前なあ、」

過去を見て確認済みだったので、余計な事を口にしなくても通じて欲しかったが。勿論(もちろん)そんな感情は(こぼ)しもしない。

「あの馬鹿共が()ぎ取った勇者の武具一式。手前(てめえ)が持っているはずだ。出せ! 無用の長物だろうが」

長の顔は不機嫌に曇った。

それも当然だ。俺みたいな、異様に突出した力しか取り柄のない若造に凄まれて、三下扱いされて、面白いはずがない。いい歳した男だからな。曲りなりでも。
だが、長の面子なんぞを構いつける余裕は無かった。
依頼は果たした。ただ働きをしてやると言った覚えも無い。
払えないなら、ぶちのめす。殺して長の座を乗っ取った所で、文句は言われない。村人たちを導いてやれるかどうかは別だが。

「どうする気だ?」

「手前に告げて、何になる? 俺風情(ふぜい)に蹴落とされる日が来るのをびくびく怯えている手前の何が、俺の役に立つんだ? ――さっさとしろ」

「……糞餓鬼。餓鬼だと思って甘やかしてやりゃあ――!」

大人気(おとなげ)は無かったと思う。焦っていたから。
対等の振りをしてやったのが、最大限の譲歩だった。

そして、大人のくせに子供じみた喧嘩を裁定したのは、当の勇者の武具だった。
長の封印を勝手にぶち破って、目の前に降臨してくれたのである。

「――あああっ?! 魔王様復活の時の為に――!!

「……余計な下心出してんじゃねーよ!」

身の程知らず、という(あざけ)りを籠めて、長を蹴りつける。

正直な所、こんな状況でなかったら、こんな物に関わり合いになどなりたくなかった。
勇者の武具は魔を本能的に(おびや)かす何かを備えている。

「ああ!? 負け犬が――」

手加減を終わらせた。もう、こいつに用は無い。

「ぎゃああああっ!!

解放した魔力の圧だけで奴は吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。
宙空で光り輝く武具を手に取った。

「…………待て、この、糞餓鬼――あいつが、あんな目に遭わされたのは、どうしてだと――」

……存外にしぶといな。地べたで()いずってりゃいい――って、今這いずってるか。

不快な言動だった。けれど、聞き捨ては出来ない。

「何が言いたい?」

威圧してやった。
そもそも、何も知らないと思い込んでいるところからして、お笑い草だ。

「――――」

何かを言いかけて口ごもり。

「……忘れてねえだろうな? 粋がるしか能が無い阿呆(あほう)の顔を焦がしたこと――そういうことばっかりやってやがるから、あいつらが――」

何を今さらなことを。言わずにいてくれた方が、まだ、堪忍袋に猶予が残ってたんだがなあ。

「その背後に居るお前が、それを言うのか――?」

「何?」

「俺が、何も知らないと思ってるんだろう? なあ、若長様よお! 俺の親父が先代族長――手前の親父に託した言葉を踏みにじってくれた手前が、何、したり顔で俺様に説教こいてくれやがるってんだ?!

「……そ、それは――!」

「答えろ!! 何が悲しくて、親父を失った、たった5歳の餓鬼が、300歳も年上の糞餓鬼に遠慮して、涙を呑み込まなきゃならねえんだ!? 俺はお前を殺してやりたかった! お前がいつかきっと、まともな器を備えた男に、長に(ちょう)じてくれると期待していた親父と先代族長の期待を裏切り続けるお前を殺してやりたかった!! ……親父を()めたよな? わざと、勇者が待ち構えていた場所に送り込んで。母さんを(あお)って(けしか)けたのも、手前だ。親父に抱いてきた劣等感や後ろめたさを憎しみにすり替えて――(ついで)に殺されて来いと、目論んだろう?」

奴の顔面は蒼白だった。

「……ち、ちが、う!! それは――」

「どう違う!!??」

覚悟を決めたようなため息をつき。

「……認める。お前の親父にも、先代族長にも劣等感が在った。それは、認める。お前にも悪意をぶつけて来た。それも認める。でも! 俺は見殺しになんてしてはいない!! あいつらが不穏な事を企んでいたのを知っていたから、監視するつもりだったんだ! 必要なら、力づくででも止めるつもりで――」

「はあ!? 何の寝言だよ?!

台詞の後半は母と義理の親父が巻き込まれた事件に関してだけ触れている。
信じられるはずがなかった。実際に人死には出てしまった後だ。

そして。

「――止めて!!

置いて来たはずの妹が飛び出してきて、割って入った。

「悪く言わないで……あげて。この人、父さんに散々に叩きのめされたのよ。母さんの後を追って、母さんのことを監視してて――父さんに叩きのめされて、反省したの。心を入れ替えて恥ずかしくない男になると、誓ってくれたのよ!!

「――――」

すとん、と、何かが腑に落ちた。

女が男を変える。世間じゃあ、割と有名な格言の一つだ。
これ以上ないくらい納得したのに――、どうして、泣き出したくて堪らなかったんだ?

「…………馬鹿臭。糞、下らねえ。ま、上手くやってくれ」

「おい、本当にどうするつもりなんだ?! 勇者の武具は――」

「勇者は死んだ。そして、その成れ果てを俺が殺した。だから、俺が始末する。それだけさ」

「……おいっ!!

「――うそ。嘘よ……!! ねえ……」

……ああ、そういや、義理の父だったんだっけ。まあ、つまり、妹には実の父、だよな。
でも、俺には関係ない。部外者は、俺の方だ。

「そいつに聞け。一部始終を知ってるからよ。俺は後始末をさせられただけだ」

なのに、だから、どうして! ……どうして、俺の方を見上げて来るんだ……!!

「……母さんは……? 母さんは――?!

聞いてくるから、教えてやった。教えるしか、無かった。

「くたばった。あの男が後を追った理由なんて、それしかないだろ」

「――――おいっ!!

感謝しろ。手前じゃ、一週間かかっても言えない事実だろうが!

勇者の武具をかっさらって、瞬間移動で逃げた。




「……ここ、は――?」

男が目を覚ましたのは、岩屋だった。見覚えのない場所で、裸で眠っていた。

「……う……ん……!」

もう少し眠らせて、とばかりに寝返りを打つ女が(そば)にいた。

「――――!!

慌てて飛び退き、数拍置いてからほっとしたようにため息をつく。

「……、……?!

岩屋の奥から差し込む光源に気付いて視線を向けると――光り輝く一式の武具が鎮座していた。
まるで、男が目覚めるを待っていたように。

「どうして、これが――此処(ここ)に――?」

「ん、……もう……」

結局、女も目覚めて――、そして、絶句した。

「どうして?! どうして、あたし――人間になっているの!?

絶句し、うろたえ、男を見上げてくる女。
男は一部始終を察して、何とも言えないため息をついた。

「……あいつ……」

感謝しかけ、岩屋の外から吹き込む、冷たい、雪混じりの風に眉をひそめた。
念の為と確認に出て――感謝が吹き飛んだ。
なぜなら、雪深い山の、雲を突く程高い山頂部分に放り出されたと()み込む破目になったからだ。
おまけに、必死の思いで下山した二人は(ふもと)の村人に神の使いと誤解されて、しかし、その村で暮らしていくことになる。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

お初にお目に掛かり申す!!

吾輩、ゴロリと申す猫である!

故あって、この短編集の人物紹介を担当いたす。

公開に応じて、登場人物が随時追加されていく予定であるので、よろしく付き合い願いたい!

まずは、プロローグだな。


●それ:

…………いいのか? いきなりこれで……。

ま、まあ、一応、神様で……オス、だそうだ。

名前で呼ばれることは滅多になく、通称や肩書き呼びが普通……か。

けったいなことだ。……何?

次の人物が旅立つことになる世界の神様ではないから、なおさらに名前は出てこない?


……うーむ……。

妙な仕事を請け負ってしまったか……。


次だ。


●いい年をした精悍な男:

…………いいのか? ……ん? 作者都合で秘密、出て来ても偽名だけ……?

…………。

……ま、まあ、次だ。

なになに? いい歳をしたマッチョで、魔法じみた能力を持ち、数奇な人生を歩いて来た……と。

日頃蓄積しているストレスの発散を求めて、神の御座所に押しかけて来た、黙っていれば男前……。


……うーむ……。

請け負ったことを後悔しなければいいが……。


気を取り直して。

盟約の魔、第1話だ。


●第三の眼を持つ異相の男:

名前は……また、秘密か。明かすのは別のタイミングで! とのことだが……。

何時になるのか、何時にするのか。……考えてない、ではないことを祈ろう。

魔族、男性、歴戦の勇士。神との契約――盟約に従って、世界の外側に送り込まれた。

以来、ずっと戦い続けている。


難儀な身の上のようだな。吾輩が同情したところで、何も役には立たないが……ま、よかろう。


では、次。


●割り込んだ者の正体:

……諦めた方がいいのか……? いや、請け負った以上、仕事は全うする所存だが。

……さて。


神。何? プロローグの「それ」と同一の存在!? 

……神様繋がりで仕事……頼まれ事を請け負って、世界の外側に降臨した――か。

ふむ、世界の外側とやらが気になるが……人物紹介でそこは説明できないか。残念だ。


今回は此処までのようだな。しかし……

大丈夫なんだろうな、この仕事……。


……ふう。

盟約の魔、第2話だ。


●魔族の青年:

第1話の男の若かりし日、だな。共通点は額に第三の眼が在ること。

神の呼子と出会ってしまったことからしても、難儀さは若い頃から、ということらしい。

あまりうまくいっていない親子仲を気にしている。

正式な名前が登場すれば、初めてのまともな仕事になったのになあ……。


次。


●煤けた大男:

…………またか。

プロローグに登場した偉丈夫だな。憂さ晴らしに出たはずだが、妙なことになっているようだ。

基本的な設定自体は、プロローグと変わらないらしい。おっと、種族は人間か。


さて、次。


●珍妙な生き物:

…………。これは……ん? 妙なメモが……?


”このキャラクターは、作者の別のシリーズでウェイトのあるポジションに位置している為、

原則秘密――明かせません!! 詳細に関しましては作中に出て来る情報だけでご勘弁を!

友情出演Aです”


……友情出演A……とな? 何故、出した……。



今日は……ここまでのようだな。寝よう。眩暈がする……気がする……。


……第三話(前編)か。


ん? んん? 新規の登場人物は、無し??

……珍しいこともあるものだな……。

ま、よかろう。――む。メモが挟まれているではないか! どれどれ……


◎鋼玉(はがねだま)について。

一応、異世界の鉱物という設定ですが、名前から類推可能な通り、鋼玉(こうぎょく)……コランダムが元ネタとなっています。

中でも、宝石質(最悪でも、研磨すれば宝飾として価値がつく品質)のものには別の名称がありまして、赤色系がルビー、それ以外がサファイアです。

作中では、紅玉(こうぎょく)……ルビー 蒼玉(そうぎょく)……サファイア ですね。

紅玉には火の力が、蒼玉には氷の力が秘められている、という設定です。

尚、作中の世界においては、蒼玉を名乗れるのは青色系のものだけで、それ以外の色彩は鋼玉で一まとめにされ、原則、特別な名称は持ちません。


…………。

まあいい。明日を待つことにするか……寝る。


第三話(後編)。

……ふむ。またもや、新規の登場人物は無し、と。

ま、退屈もまた良かろうよ。……ふわーあ……。


………………


………………


……………………はて? 何かを忘れている気が……?


む!? この気配――まさか、飼い主か?! もう、戻って来た……!?

い、いかん! この副業を知られるわけには――!!


……(ドタドタ)……


昨日は危なかった……! 

今日は大丈夫。玄関にもきちんと鍵が掛かってるからな! 帰ってくれば、解る。

では、第4話(前編)だ。


●母:

……突っ込んでいいと思う。誰の母だ、と。

……魔族の青年の……、ならば、彼女も魔族だな。

ふむ。若過ぎた女……? 

彼女自身不遇な生い立ちの持ち主で、中々心を開ける大人に出会えなかった……。

母になるには若過ぎた、ということか? 息子である青年とはあまり上手くいっていない、とは。


●勇者:

……まあ、格好いい名前が出て来るが……。何? 義理の父!?

伝説の勇者で、魔王を討ち滅ぼして世界に平和をもたらしたが……。

難儀な男、というのは解ったが……義理の父……。うーむ……。


●仲の悪い仲間の一人:

村人A……しか、無いのか? つまり、モブAか。……ま、よかろ


●村長:

むらおさ。そう読んで欲しいようだな。……ふむ。

まだ、年若く、長の立場が重荷になることもある男。

出来過ぎた父、先代族長とその親友に引け目を持っていて、拗ねていた。

魔族の青年とはやや感情的な確執がある。


●年下の仲間:

青年とは比較的仲が良い、村人B。若さと実力の低さからいじめられる側になりがち。


●妹:

……この作者は……。……ん? エメル=ミディア。……あるのか、名前……。

はっ! は、初めての、まともな人物名!? そ、そんな馬鹿な……!! ――はっ、吾輩が毒されてどうする!


……こほん。


魔族の青年の妹。若さゆえの天真爛漫さの持ち主。芯も意外としっかりしている。

母の生まれ故郷に来たことと、腹違いの兄が居ることに期待を覚えている。


……(きょろきょろ)……。

よし、誰もいないな……!

第4話(後編)である。


ん?

……………………。


……新規登場人物は、無し……!?


くっ……! 飼い主の目を盗む苦労が、水泡に帰そうとは……!!

愚痴にしても仕方がないが、この悔しさはいかんともしがたい……。

――む!


…………


……行ったか……! 

いかんな。このままでは、バレる。吾輩の副業が、バレてしまう……!

悪い人物ではないのだが、表に出して良いものか、困惑してしまう部分もあるし……。


…………


……ええい! 吾輩を探しておるな!? 手慰みに可愛がるつもりだろうが……!

この部屋も危険になって来た、そういうことだな。

然らば、御免!!


……ZZZ…… ……ZZZ……


ゴロリは縁側でのんびり眠っている。


第5話(前編)も仕事なくて、暇を持て余したらしい。


ゴロリは縁側でのんびり眠っている。


……ZZZ…… ……ZZZ……



(そろり、そろりと忍び寄る、縦ロールが一人……)


第5話(中編)である。


……またか、新規登場人物なし……。

楽な仕事でいいのか、退屈な仕事で悪いのか……、やれやれだ。


今回は中編か……。流石に、3話、4話と前後編が続いたから、芸がないと思ったのか?

……ん? 吾輩か? 無いぞ、芸などというものはな。

人間が身に着けるものを、猫が身に着けてどうする。

そもそも、餌で釣らねば仕込めないものが大半なのだろう?

無理矢理覚えたところで、何の役に立つのやら……。


――む! そういえば……飼い主が一時期、やたらと吾輩に妙な事をさせたがっていたが……。

もしや、そういうこと……なのか?! 碌でもないことばかり考える飼い主め……!

まあ、だからこそ、この副業のことも秘密せねばならんのだがな。


とりあえず、明日こそは仕事が在ることを願っておこうか。


第5話(後編)だ。


…………。



…………またか。こんなに新規の登場人物無しで、大丈夫なのか?

いや、仕事が無いことを……いや、愚痴っているな。諦めよう。

吾輩は往生際の悪い飼い主ではないのだから……。


――む!


噂をすれば影が差す、とはな。此処で飼い主に掴まるわけにはいかぬ。

大人しく、退散するとしよう。


……おかしいわね。此処にもゴロリが居ないわ……。


(縦ロールがこれだけ&作者に絵心無しにつき、このアイコンを採用しました(汗))


最近、妙に私を避けている気がするのだけれど……、可愛がり過ぎたのかしら?

元々野良猫で、芸を仕込もうと試している内に家猫になってしまった子ですから、

中々懐いては貰えないのですけれど。……気になりますわね。


爺(じい)は何か知っているようですけれど、はぐらかすばかりですし……。


……あら? 私のノートPC……電源は切っておいたはず……。


……はあ、はあ……、く、苦労したぞ……。

飼い主め、今日に限っては妙にしつこい……!


さて、仕事だ……!


……………………またか。ま・た・か!!



くううっ、吾輩が、どれだけ苦労して――、む!! この気配の近さ……逃げねば!!


……ま、またもや逃げられましたわ……!

ゴロリ、我が家の飼い猫ながら、やりますわね……!!


…………また、ですわね。…………第6話……?


まさか、ゴロリに読書などという趣味が……?

いえ、芸というべきかしら? 仕込んだ覚えなどありませんが……。


まあ、爺に聞いてみるとしましょう。

猫の読書は芸と呼ぶべきなのかどうか、を。


あけまして、おめでとうござりまする!

新年の初仕事は……鋼玉(はがねだま)の腕輪 第1話だな。

さて、あまり期待せずに行くとしようか。


●糞親父:

……やはりな。この作者は……。一応、最速の登場タイミングから抜粋しているようだが……。

まあいい。”友情出演A”だそうだ。初登場時と変わらない、ということだな。


さて、次だ。


●俺:

…………。

(負けだ……気にしたら、負けだ……! そうに違いない……!!)

はっ……、うむ、盟約の魔から引き続き登場している偉丈夫のようだな。

妙な状況に陥っているようだが……。憂さ晴らしが出来るといいな。



●花嫁さん:

…………これか。純然たる新規の登場人物だろうに……。

名前が出てくることを願おう。

我が飼い主も、何時か、こう呼べる日が来るといいのだがなあ……。



――む。性懲りもなく吾輩を探し回っているようだな……。

可笑しなことになる前に、去るとしよう。


……また、逃げられましたか……。

折角、鰹節ご飯を用意しましたのに。薄情な猫ですわね……。


――と。いけない。伝言を頼まれてましたっけ。

代読させて頂きますわね。


”第二編、鋼玉の腕輪より先は、新規の登場人物が無い場合、基本、当コーナーは割愛となります。”


ですって。


……ネタ切れを体よく言い換えたような文章、のような感もしますけれど……。

ま、よろしいでしょう。



……あら? もしかして、ですけれど。この伝言……ゴロリの隠し事と何か関係が……?




――んもう! 私には大声を出すなと叱りますのに、

どうして、私を呼びつける時は大きな声を出すのかしらね、ばあやは。

え? お誘いの電話……!? 誰――ええっ?! あいつからって――!!

今日は雨? 雪?? 槍――いや、隕石の直撃が在るのかしら!? こ、こうしてはいられません――!!


……(ドタドタドタドタ)……

蒼玉編 第2話だ。


……飼い主がやけにそわついて家を出たようだが……、まあ、吾輩には関係ないことだ。

仕事、仕事。と。


●私:

第1話の花嫁さん。エリアルド=リングルード。跡取り娘。

戦争に出征し、音信が乏しくなった婚約者と、親が周囲に押し切られて用意してきた許嫁の間で悩んでいる。

心は婚約者に在るが、家や領地の事情まで考えると……、という板挟み。

或る日、気分転換に出て、行き倒れに遭遇した。


……何故だ……。何故、此処までまともな設定が一番最初に出てこないんだ……。

……ふう。次!


●大柄な男:

第1話の俺。…………。

……ふむ。視点が異なるから、ということか? 追加情報も無いようだし……。


次。


●料理番:

館に住み込む料理担当の家人。職人気質で、筋肉質な体つき。


●ばあや:

エリアルド嬢の面倒を見て来た老婦人。家族よりも近しい部分がある。モブ。


●両親:

エリアルド嬢の両親。領主と領主婦人。人の上に立つ立場だからこそ、板挟みになる。モブ。


●いけ好かないちょび髭:

エリアルド嬢の両親が周囲に押し付けられた許嫁。当人も縁談にはあまり乗り気ではないが、断る理由もない。

見た目はナイスミドル。資産家。モブ


……妙に、モブが多いな。次!


●あの人:

エリアルド嬢の婚約者。戦争に出征し、個人的な音信が掴めなくなったはずの人物。

グルンガルドは姓。

精悍な青年で、物腰は穏やかだが、誰も喧嘩を売りにいかない。


蒼玉編 第3話だ。


……ん? 


●オライオン=グルンガルド:

第2話のあの人。


……ただの補足か。待たせるようなネタだったのか……? ま、よかろう。

短くとも、仕事は仕事。


さて、今日はどのあたりでひなたぼっこと行こうかな……?


蒼玉編 第5話である!


どれ……。


●執事長:

エリアルド嬢の両親に仕えている初老の男性。モブ。


ふむ。我が飼い主の爺や殿のような立場の人物かな……? 苦労が多そうな気がするな。

さて、次。


●年下の叔父御:

……好きだな、この手の言い方が。作者の趣味なのか??

さてさて。


……友情出演Bにつき、詳細は秘密、とな!?

まあ、叔父というからには、身内ではあるのだろうがな……。

ま、よかろ。


……ふう。

なんでだろうな。大した仕事をしているわけではないのだが……、どうも、ため息をつきたくなるというか。


さて、今日は屋根の上でひなたぼっこと行くかな。

飼い主に邪魔されない、貴重な場所だしな。


一日間をおいて、紅玉編とな。

緩急をつけてみようという腹か? どんな意味があるかは解からないが……。

さて、第1話だ。


●俺:

一応、主人公か……? 蒼玉編から続投している、と。

新しい設定も無いようだな。


次。


●珍妙な生き物:

…………。

…………はて? 何処ぞで見た気がするが……、…………”友情出演C”!?

ということは、別人(?)、ということだな。

ここで述べられる情報は無し、と。…………。


……次!


●宿の親父:

善良な人柄の持ち主。モブ。


以上だな。……ふう。やれやれだ。何をしたわけでもないが、やれやれだ。

そうだな……今日は、台所に行こう。何か美味しいおすそ分けでも期待したい気分だ……。


さて、紅玉編 第2話。


●私(村娘):

村の若い者組の一人。初恋が突然やって来た少女。


……きちんとした名前を用意すればいいのだろうに……。次。


●家主の親父:

村娘の父親。モブ。


今日はこんな所か。さて、往生際の悪い飼い主が来る前に逃げるとしよう。


紅玉編 第3話である!


●化け物:

……うん、まあ、名称に関しては諦めるとしよう。

なになに?

契約によってこき使われてはいるが、花も実も兼ね備えた大物。

けれど、上には上がいた……。

詳細は、読め、ということだな。……吾輩が人間の読み物を読んでどうする!!


次。


●ろくでなし共:

モブ。


次!


●超大物:

……解ってはいても、なあ……。ふう。

…………友情出演D、とな?

見た感じ、中々の苦労人にも思えるが……。

まあ、同情しても仕方あるまいな。


ふむ。此処までだな。

では、じいや殿のおやつを相伴しに行くとするか。


紅玉編 第4話だ!

順調な仕事で何よりだな。

さて。


●長らしい人間:

村長。モブ。


●後ろの子:

……だから、この作者は……。ふう。

魔族の少年。外見年齢は十代前半だが……。

どう足掻いても、自分を縛り上げた人間の男に勝てなかった。


●村人A:

モブ。


今日はこれで終わりだな。では……たまには昼寝でもしていくか。

証拠隠滅、完了! と。さて、何処がいいかな? ベッドの下などは定番だが……。


紅玉編 第5話だな。


●妹ちゃん:

ふむ。『盟約の魔』で登場した女の子だな。

追加事項も無し、と。


次だ。


●村長である色男:

これも、『盟約の魔』で登場済み、と。

……名前ぐらい考えてやればいいだろうに……。


む! 何気に初の皆勤か?! 今の所、休暇が無かったとは! めでたい。

……これで、もう少しまともな仕事だったら、飯も美味かろうになあ……。


華燭の因縁 第一話、だな。

ふむ。この話が最後のエピソードになるのか……。

では、紹介といこう。


●私:

…………。

呆れるよりも前に仕事だ。

10代の少女。生贄になることを志願した。


……なんだ? 妙に重い設定だな。吾輩の飼い主とは違い過ぎる……。


次。


●竜:

…………。

……いや、まあ、何と言うかだな。紹介してよかったのか? 人物ではないのだが。

全長10mを超える体躯、赤黒く輝く鱗、濁った金色の瞳……本編でやるべき描写では……?

ん……?


●屈強な若者:

……なるほど? 何がしかの因果がある、と。話を読み進めれば解るということか??


次。


●村長:

ふむ。少女の父親か。村の過去や立地から苦しい立場に居る人物。

……ん? この設定はひょっとして……?

此処で語るのはよそう。読めば察せる類のものだからな。


●婿:

…………。

まあいい。此処はバラしてしまおう。屈強な若者のことだな。

まあ、立場を変えれば見方も変わるか……。


次!


●男:

…………だから。――いや、我慢だ! 吾輩!! あと少し。あと少し――!


こほん。


やや不遇な生い立ちの魔族の青年。愛されなかったわけではないが、一目を置かれたかった。

子供時代の背伸びを拗らせて、力を奉じ、力に酔うろくでなしになってしまった。


……割と具体的な設定があるのに……名前は……?


……次。


●弟を自称する男:

魔族。異様な能力の持ち主。ピンとくる人はピンとくるかも――知れない。


……それだけか? 他に、読み上げられる設定は無いのか……?


…………はあ。数はこなせたようだが……。

始まるまでは、もう少しまともな仕事だとばかり思っていたがなあ……。

それでも、マシか。飼い主に構われるよりは……はあ。


今日は……interlude……幕間とな?

ほうほう。殊勝そうな響きだが……さて。


●メリア:

女性。元魔術師の賢者。無鉄砲な所がある幼馴染に思いを寄せていた。


…………。

…………な、何があった?! 作者はついに、悪い物でも食したのか!?

――あ。……いや、まあ……こほん!


次、次だ!


●ライド:

男性。力尽きた勇者。勇敢ではあるが、情の強い部分が在り、視野が狭くなりがちだった。

恋愛感情には鈍い方。


……じーん……。まともだ……。なんて、まともな仕事なんだ……!!

しかし。……妙に沈んだ雰囲気を感じさせる設定だな……。


次!


●ラセル:

男性。神官。上記二人の幼馴染。メリアに淡い想いを抱いている。


…………。

これが……幕間……。こんなにまともな仕事が……脇道、なのか……。


……次。


●俺:

来たか。ついに……。まあ、よかろ。今日は気分がいいしな。うん。


男性。剣士。パーティリーダー。暴走する気配を見せていた勇者を討った人物。


重い話、のようだな。

ふむ、次で最後か。


●竜:

巨大な体躯を誇る赤竜。雄。勇者一行に力を貸したが、快く思ってはいない。


……はあ。次回もこんな風にいってもらいたいものだな……。

期待するべきか……いや、諦めの予防線を張っておくか。

ん? 付箋付き……?

”勇者様御一行は、この幕間だけの登場人物です。悪しからず”

……何が悪しからずなんだ??


華燭の因縁 第二話だな。


●父様:

……誰のだ。

ん? 少年の呟きから取ったか……。関係性はすぐに解ったがな……。

まあいい。人間ではない存在、だそうだ。


次。


●少年:

……慣れて来たなあ、吾輩も。それでも、突っ込みたい衝動が消えないがな。

人と人ならざるものとの混血。片親の正体が何なのか――は、読んでくれ、ということだろうな。

健やかに育って欲しいものだが……間違っても、吾輩の飼い主のようにはならないでくれよ。


次。


●彼女:

…………。

……ええと、だな。彼氏と同年代の少女。彼氏の秘密を知って、受け入れたが……。

ふむ。何やら、因果な物がありそうな感じだが。


……はあ。良い仕事が出来たと思えたのは一日しか続かなかったなあ……。

ま、期待とは違っても仕事は仕事。そして、終わりは何時かは来るものだ。

それまで、気長に待つのも一興だろうよ……。昼寝に行くか。


エピローグ……そうか、これで最後なのだな。

名残惜しい……という気分にはならんか。まあいい。仕事だ。


●俺様:

…………、……ん? ”友情出演A”?

ならば、これ以上紹介できる情報はないな。


次。


●神様:

プロローグにも登場した神様。


次。


●主君:

『俺様』の上役。友情出演E。


以上。


年末から始まった付き合いも此処まで。

なんともけったいな仕事になってしまったが……無事、完遂できたことを喜んでおこう。

吾輩にまたがあるかどうかは判らないが――折が在れば、になるのだろうな。

此処まで付き合ってくださって、本当にありがとう!

作者に代わって――、――む!? この気配は……まさか、飼い主か?!

いかん! この副業を知られるわけには――!!


ええい、名残ぐらい感傷的に味わわせればいいものを……!

吾輩はこれにて去る! さらばだ、皆の衆! 是非、この作品を楽しんでくれ!!

それでいい。それだけで十分だ。では――!


ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み