紅玉編◆第1話

文字数 4,386文字

『行くのか? 宿の親父も言っていただろう。あの道は――神隠しの谷に通じている、と』

「――――」

(おれ)呆気(あっけ)に取られていた。

なぜなら、宿に付随(ふずい)の飯屋で、居るはずの無い、珍妙な生き物に遭遇(そうぐう)してしまった。
サイズはまだいい。(てのひら)に乗る程度だとしても。何処(どこ)かで見た覚えがあるし。
(なり)もまだ理解の範疇(はんちゅう)だろう。伝説の魔獣、(ドラゴン)の姿を(かたど)っているだけだから。
神に(あだ)なす獣と評判を取る魔獣の姿が人気なのは、何も人間に限った話じゃない。
頂けないのは、その正体だ。

『地獄の王たる、この俺様が保証してやるぞ! 神隠しに()いたくないのなら、引き返せ――とな』

そう。

純金の(かたまり)から(けず)り出したような、目に痛いほどキラキラしい怪生物の正体は――(ひとつや)の王、〈黄金の堕天使〉なのだった。



「……?」

宿の親父が怪訝(けげん)な顔でこちらを(うかが)っている。

そりゃ、そうだろう。掌サイズの怪生物の姿は俺にしか見えていない。声だって、俺にしか聞こえない。傍目(はため)には、朝飯を食った途端、顔色が悪くなったようにしか見えていないはずだ。

「…………」

ため息が(こぼ)れた。

兎にも角にも、宿を出なければ。

皿を一まとめにする振りをして、怪生物をひったくる。

「ごちそうさん! 美味(うま)かった!!

金貨をテーブルに(たた)きつけて、飯屋を逃げるように飛び出した。

「――あ! お客さん、くれぐれも――!!

神隠しの谷に近づくな――と、言いたいのだろうが、そうはいかない。
目当てはまさに、その神隠しの谷なのだから。
ただし、当面の最優先事項は、掌の中の核弾頭を隠密に、かつ、秘密裏に処分することだった。



「――で? 何しに来やがった!?

山道の途上、人気(ひとけ)が無いことを慎重に確かめた上で声を潜め、問い(ただ)す。
その応答は至って呑気(のんき)だった。

『ん? 先日の、優良人材確保成功の……御礼(おれい)?』

「――はあ?!

『報告が上がってたぞ。的確な口利きのおかげで、堕とす必要が無かった――と、な。……あ! 百年の余生をきっちり大往生したそうだ。死に目には、恩人に会いたがったそうだが――』

「ああ……?」

一体何の話をされてるんだ? と、脳内検索を全力回転させる。

『世話を焼いたそうだな? 無事、結婚できたのは――』

そこで合点(がてん)がいった。

「――ああ! あの……って、糞親父案件じゃねえか――!!

まさか、金色の怪生物が依頼人とは……!

『うむ。瑕疵(かし)無き仕事ぶり、私心無き補佐ぶり、無味乾燥を地で行くように見せかけて、落とし穴の如く顔を覗かせるお茶目さ加減。どれをとっても、見事の一語に尽きてな。我が直属の旗下(きか)共はどうしてああでないのかと、ため息が絶えぬ有様であるぞ!』

胸を張って嘆いていたが、それは多分に主君のせい――つまり、自業自得だ! とは、口に出せなかった。下手なことを伝えた日には、融通の利かない旗下共から、とんでもなく恐ろしく、限りなく傍迷惑な、報復と書いて嫌がらせと読む難事を押し付けられる破目になる。旗下共の正体は一騎当無量大数な、地獄の大貴族様だからな。

というか、大丈夫だろうな? 地獄の王に見込まれるとは、とんでもない来世が確約されたも同然、なんだが……。……ま、まあ、好意的な評価だしな。悪い事にはならない――と、思いたい。
いや、それ以前にとっくに俺の手を離れている出来事だ。薄情かもしれないが、やきもきしても仕方がない。

「そ。いい仕事をしているのなら、そりゃ結構だ。糞親父も鼻が高かろうよ。主君の主君に目を細めさせたんだから!」

ていうか、まだ、結婚式から一週間程度しか経ってない。二人は幸せ真っ盛り、なはず。……どうして、百年は未来であるはずの報告を、今、受け取ってるんだ??

……まあ、こういうことが珍しくないのが、俺の歩いて来た道行だったりもするんだが……。

『ん? ……ああ、あの灸はそれで、ということか――』

ふと、怪生物が何やら首を傾げ、勝手に納得した。

「?」

『ん。こっちの事情、というやつだ。……ん? 興味が在ったりするのか?』

冗談ではない。

「無い。金輪際(こんりんざい)、無い!」

返答は0.1秒も躊躇(ためら)わなかった。

断言に、少し切なげなため息をつき。

『――で、なぜ向かう?』

話を振り出しに戻した。

隠すほどのことではないので、教えてやることにする。

「……(あや)しいだろ、神隠しなんてさ。大抵の場合、手が付けられない程肥大化したろくでなし共の巣窟か、強大な力を秘めた人外が正体だろ? (まれ)に、マジもんの空間の(ひず)みだったりするけれども、どれが正体でも、相手に不足無し。やりたい放題暴れられるってもんだ」

『底抜けのお人好しか、灸が入り用のきかん坊か、判断に困る――とくるか。……ま、よかろう』

という本音は、

『ふむ。合法的に暴れられる、というのは良いな』

なる相槌にすり替えられた。

「だろう? ただし、加減が重要だ。退治してやって指名手配じゃあ、割に合わん。一網打尽は前提で、生け捕りが理想だな。どうせ、お天道様の下を歩かない(くず)に成り下がった(やから)なんだろうし、身包(みぐる)()いでおくくらいの手間賃回収は許容範囲だろ」

『ほうほう、ほうほう』

悪党を狩る悪党の論理に、興味をそそられたらしい。余計な事を教えてしまった気がした。

「もう、帰れ。用なんて、もう、ねえだろ」

『……んー……、どうせだからなあ。下界をもうちょい、勉強していこうかな? ……なんてな』

(――洒落(しゃれ)になってねえ……!)

可愛らしく小首を(かし)げて見せても、地獄の王様。存在するだけで、「世界」を悪い方向に不安定にする、と信じられている存在だったりした。
おまけに、「地獄の」と、前振りが付かなくても、王様、なのだ。油を売っている暇が有るのなら、地獄の奥底でだろうと、為政に励むべきではないだろうか。何処へ持ち運びしても、物騒(ぶっそう)過ぎる存在として眉をひそめられるのだし。

仏心はここいらで捨てておくべきだろう。

「帰れ。迎えの側近が欲しいなら、呼び出してやる!」

『む! それは却ー下!! こう見えても、灸を据えられる為にのこのこしゃしゃり出来たわけではないっ!!

「……立場、解ってねえのか……!?

『(貴様に()かれる筋合いは無いんだが)……そうだな。貴様が、俺様の俗世間勉強に付き合ってくれるというのなら――――今日中に、宮殿に舞い戻っても構わないが?』

…………なんつー、交換条件を持ち出してきやがるんだ…………!! あ、いや! 乗るって決めたわけじゃねえけども!!!

「――おい!!

『ん? 悪い話でもなかろ? 貴様は思う存分に暴れる、俺様は俗世について知見を深める。うむ! 中々のwinwinではないか!!

…………愉快(ゆかい)犯だ、絶対(ぜってえ)……!! 情け心は、間違っても! 無用!!

「か! え!! れ!!! 今、すぐ!!!」

地獄の王様は、激怒する代わりに、とんでもない切り札をひけらかした。

『――よし。貴様の糞親父様に(うかが)いを立ててやるとするか!』

「――――」

開いた口が(ふさ)がらなくなった。

何で、そんなことになるんだ!? という悲鳴で。
マジでそんな真似(まね)が出来んのかよ?! という驚愕で。
こいつ、しっかり嫌がらせのツボを(わきま)えてやがる!! という呆れで。

『なんなら、(そば)(はべ)らせて、ガイドを務めさせるか?』

……やべえ。とんでもねえ方向に悪化していきやがる……!! 絶対、灸だけじゃ済まねえぞ、俺が!!!
そんな危機感を差し引いても、顰蹙(ひんしゅく)を買うのは面倒臭いし、顰蹙のバーゲンセールを実施させるのは申し訳が立たない。
不覚にも、甲斐性(かいしょう)に欠ける父親を(いた)わってやりたい、殊勝な気分に立たされてしまった。

「…………解った! 解ったから――!! 糞親父は、絶対に呼び出してくれるなよ! 頼むから!!

『はーい♪ 全面勝訴で、交渉成立ー!!

……あーあ……。誰か、何処かに居たりしないかなあ、こいつに灸を据えてくれる、そんな人。存在でもいいけどさ。

憂さ晴らし――異世界探訪を手配してくれたのが誰なのか。それを失念していたことが敗因であった。

「たく。大人しく帰れよ、俺の仕事を見たら!」

『……何か、不都合でもあるのか?』

大地母神(だいぢぼしん)と緑の魔女の板挟みになりたくねえの」

なぜなら、地獄の王様が地上でだべっていると知れた日には、間違いなく「神様」に御注進が飛ぶ。この場合の「神様」には、神族の(おさ)という意味が含まれており、全権という言葉に代表されるような能力や立場を持っていることが大半である。
また、地上では、時間的に、あの二人が「糞親父」を挟んで、喧々諤々(けんけんがくがく)をやらかし続けているはずで。
地獄の王様のバカンス地に、最も卑近に存在する神族として、大地母神に指令が飛んでくることになる。
そして、今「()は地に足をつけて歩いている(・・・・・・・・・・・・)。あっという間に、地獄の王様を連れているのが誰なのか、解られてしまうわけで。当然、緑の魔女にも漏れなく通報されることだろう。
()さ晴らしという名の異世界探訪はその時点で終止符。代わりに待っているのは――悪夢の一語で形容できる。勿論、しわ寄せというおまけも漏れなく、影のようにくっついてくる。

…………………。

『わあお! 男を取り合ってるって(うわさ)、本当なんだ?』

怪生物が興味津々(しんしん)に目を丸くする。

「神と人でも、それ以前に、男と女だろ? だから、だよ。だから、神と人という格差が在って尚互角の奪い合い――なんつー、空恐ろしい状況になってんの。(つつ)こうなんて、思うなよ?」

……怖くて、熱くて、きつい灸が降って来る、とは、地獄の王様の方が承知している。ささやかな余談であるが。

『……ちなみに、男のほうの、女の()趣味は……?』

好奇心に駆られながらも、怖いものを(のぞ)き込んでいる風情(ふぜい)が漂うあたり、これでも、男の内だと思わされた。

「自分の腕の中で綺麗になっていく女、だとよ。……糞親父のくせして、俺の真似すんなってのよ!」

『ほほう、ほほう(当人には、異論が在るだろうなあ)!』

「ちなみに、だぞ?」

口に人差し指を添えて、釘を刺す。

了解(アイサー)!』

(かしこ)まるポーズには、妙な愛嬌が有った。

小さな頭を荒っぽく撫でて、(ふところ)に放り込む。

「大人しくしてろよ? 余計な騒ぎも御免だからな!」


そんな風に言われたから、なのか。掌サイズの、恐ろしく物騒な怪生物は黙っていた。
釘差しがとっくに手遅れであることを。
近辺は、とっくに魔の巣窟(そうくつ)と化していたのだ。全ては、地獄より出来(しゅったい)した彼らの王の傍に侍る為。王の機嫌(きげん)を損ねない、ただそれだけの為に、存在していない振りをしているだけだった。
ただし、それは王の御稜威(みいつ)が届く、極めて狭い範囲。
当然、王の御稜威が届かない程外側では――百鬼夜行、そんな言葉が子供(だま)しに過ぎないほどの数と質の魔たちが、昼日中の山地で、鬼火の如く漂い続けていたわけで。


図らずも、旅人の無事を他意無く祈る宿の主人の願いは叶えられることになった。

昼夜を問わず顕現(けんげん)した、億に迫るかも知れないほど膨大な魔の大行列は、神隠しの谷に通じる全ての道を接触禁止(アンタッチャブル)に指定させたのである。

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登場人物紹介

お初にお目に掛かり申す!!

吾輩、ゴロリと申す猫である!

故あって、この短編集の人物紹介を担当いたす。

公開に応じて、登場人物が随時追加されていく予定であるので、よろしく付き合い願いたい!

まずは、プロローグだな。


●それ:

…………いいのか? いきなりこれで……。

ま、まあ、一応、神様で……オス、だそうだ。

名前で呼ばれることは滅多になく、通称や肩書き呼びが普通……か。

けったいなことだ。……何?

次の人物が旅立つことになる世界の神様ではないから、なおさらに名前は出てこない?


……うーむ……。

妙な仕事を請け負ってしまったか……。


次だ。


●いい年をした精悍な男:

…………いいのか? ……ん? 作者都合で秘密、出て来ても偽名だけ……?

…………。

……ま、まあ、次だ。

なになに? いい歳をしたマッチョで、魔法じみた能力を持ち、数奇な人生を歩いて来た……と。

日頃蓄積しているストレスの発散を求めて、神の御座所に押しかけて来た、黙っていれば男前……。


……うーむ……。

請け負ったことを後悔しなければいいが……。


気を取り直して。

盟約の魔、第1話だ。


●第三の眼を持つ異相の男:

名前は……また、秘密か。明かすのは別のタイミングで! とのことだが……。

何時になるのか、何時にするのか。……考えてない、ではないことを祈ろう。

魔族、男性、歴戦の勇士。神との契約――盟約に従って、世界の外側に送り込まれた。

以来、ずっと戦い続けている。


難儀な身の上のようだな。吾輩が同情したところで、何も役には立たないが……ま、よかろう。


では、次。


●割り込んだ者の正体:

……諦めた方がいいのか……? いや、請け負った以上、仕事は全うする所存だが。

……さて。


神。何? プロローグの「それ」と同一の存在!? 

……神様繋がりで仕事……頼まれ事を請け負って、世界の外側に降臨した――か。

ふむ、世界の外側とやらが気になるが……人物紹介でそこは説明できないか。残念だ。


今回は此処までのようだな。しかし……

大丈夫なんだろうな、この仕事……。


……ふう。

盟約の魔、第2話だ。


●魔族の青年:

第1話の男の若かりし日、だな。共通点は額に第三の眼が在ること。

神の呼子と出会ってしまったことからしても、難儀さは若い頃から、ということらしい。

あまりうまくいっていない親子仲を気にしている。

正式な名前が登場すれば、初めてのまともな仕事になったのになあ……。


次。


●煤けた大男:

…………またか。

プロローグに登場した偉丈夫だな。憂さ晴らしに出たはずだが、妙なことになっているようだ。

基本的な設定自体は、プロローグと変わらないらしい。おっと、種族は人間か。


さて、次。


●珍妙な生き物:

…………。これは……ん? 妙なメモが……?


”このキャラクターは、作者の別のシリーズでウェイトのあるポジションに位置している為、

原則秘密――明かせません!! 詳細に関しましては作中に出て来る情報だけでご勘弁を!

友情出演Aです”


……友情出演A……とな? 何故、出した……。



今日は……ここまでのようだな。寝よう。眩暈がする……気がする……。


……第三話(前編)か。


ん? んん? 新規の登場人物は、無し??

……珍しいこともあるものだな……。

ま、よかろう。――む。メモが挟まれているではないか! どれどれ……


◎鋼玉(はがねだま)について。

一応、異世界の鉱物という設定ですが、名前から類推可能な通り、鋼玉(こうぎょく)……コランダムが元ネタとなっています。

中でも、宝石質(最悪でも、研磨すれば宝飾として価値がつく品質)のものには別の名称がありまして、赤色系がルビー、それ以外がサファイアです。

作中では、紅玉(こうぎょく)……ルビー 蒼玉(そうぎょく)……サファイア ですね。

紅玉には火の力が、蒼玉には氷の力が秘められている、という設定です。

尚、作中の世界においては、蒼玉を名乗れるのは青色系のものだけで、それ以外の色彩は鋼玉で一まとめにされ、原則、特別な名称は持ちません。


…………。

まあいい。明日を待つことにするか……寝る。


第三話(後編)。

……ふむ。またもや、新規の登場人物は無し、と。

ま、退屈もまた良かろうよ。……ふわーあ……。


………………


………………


……………………はて? 何かを忘れている気が……?


む!? この気配――まさか、飼い主か?! もう、戻って来た……!?

い、いかん! この副業を知られるわけには――!!


……(ドタドタ)……


昨日は危なかった……! 

今日は大丈夫。玄関にもきちんと鍵が掛かってるからな! 帰ってくれば、解る。

では、第4話(前編)だ。


●母:

……突っ込んでいいと思う。誰の母だ、と。

……魔族の青年の……、ならば、彼女も魔族だな。

ふむ。若過ぎた女……? 

彼女自身不遇な生い立ちの持ち主で、中々心を開ける大人に出会えなかった……。

母になるには若過ぎた、ということか? 息子である青年とはあまり上手くいっていない、とは。


●勇者:

……まあ、格好いい名前が出て来るが……。何? 義理の父!?

伝説の勇者で、魔王を討ち滅ぼして世界に平和をもたらしたが……。

難儀な男、というのは解ったが……義理の父……。うーむ……。


●仲の悪い仲間の一人:

村人A……しか、無いのか? つまり、モブAか。……ま、よかろ


●村長:

むらおさ。そう読んで欲しいようだな。……ふむ。

まだ、年若く、長の立場が重荷になることもある男。

出来過ぎた父、先代族長とその親友に引け目を持っていて、拗ねていた。

魔族の青年とはやや感情的な確執がある。


●年下の仲間:

青年とは比較的仲が良い、村人B。若さと実力の低さからいじめられる側になりがち。


●妹:

……この作者は……。……ん? エメル=ミディア。……あるのか、名前……。

はっ! は、初めての、まともな人物名!? そ、そんな馬鹿な……!! ――はっ、吾輩が毒されてどうする!


……こほん。


魔族の青年の妹。若さゆえの天真爛漫さの持ち主。芯も意外としっかりしている。

母の生まれ故郷に来たことと、腹違いの兄が居ることに期待を覚えている。


……(きょろきょろ)……。

よし、誰もいないな……!

第4話(後編)である。


ん?

……………………。


……新規登場人物は、無し……!?


くっ……! 飼い主の目を盗む苦労が、水泡に帰そうとは……!!

愚痴にしても仕方がないが、この悔しさはいかんともしがたい……。

――む!


…………


……行ったか……! 

いかんな。このままでは、バレる。吾輩の副業が、バレてしまう……!

悪い人物ではないのだが、表に出して良いものか、困惑してしまう部分もあるし……。


…………


……ええい! 吾輩を探しておるな!? 手慰みに可愛がるつもりだろうが……!

この部屋も危険になって来た、そういうことだな。

然らば、御免!!


……ZZZ…… ……ZZZ……


ゴロリは縁側でのんびり眠っている。


第5話(前編)も仕事なくて、暇を持て余したらしい。


ゴロリは縁側でのんびり眠っている。


……ZZZ…… ……ZZZ……



(そろり、そろりと忍び寄る、縦ロールが一人……)


第5話(中編)である。


……またか、新規登場人物なし……。

楽な仕事でいいのか、退屈な仕事で悪いのか……、やれやれだ。


今回は中編か……。流石に、3話、4話と前後編が続いたから、芸がないと思ったのか?

……ん? 吾輩か? 無いぞ、芸などというものはな。

人間が身に着けるものを、猫が身に着けてどうする。

そもそも、餌で釣らねば仕込めないものが大半なのだろう?

無理矢理覚えたところで、何の役に立つのやら……。


――む! そういえば……飼い主が一時期、やたらと吾輩に妙な事をさせたがっていたが……。

もしや、そういうこと……なのか?! 碌でもないことばかり考える飼い主め……!

まあ、だからこそ、この副業のことも秘密せねばならんのだがな。


とりあえず、明日こそは仕事が在ることを願っておこうか。


第5話(後編)だ。


…………。



…………またか。こんなに新規の登場人物無しで、大丈夫なのか?

いや、仕事が無いことを……いや、愚痴っているな。諦めよう。

吾輩は往生際の悪い飼い主ではないのだから……。


――む!


噂をすれば影が差す、とはな。此処で飼い主に掴まるわけにはいかぬ。

大人しく、退散するとしよう。


……おかしいわね。此処にもゴロリが居ないわ……。


(縦ロールがこれだけ&作者に絵心無しにつき、このアイコンを採用しました(汗))


最近、妙に私を避けている気がするのだけれど……、可愛がり過ぎたのかしら?

元々野良猫で、芸を仕込もうと試している内に家猫になってしまった子ですから、

中々懐いては貰えないのですけれど。……気になりますわね。


爺(じい)は何か知っているようですけれど、はぐらかすばかりですし……。


……あら? 私のノートPC……電源は切っておいたはず……。


……はあ、はあ……、く、苦労したぞ……。

飼い主め、今日に限っては妙にしつこい……!


さて、仕事だ……!


……………………またか。ま・た・か!!



くううっ、吾輩が、どれだけ苦労して――、む!! この気配の近さ……逃げねば!!


……ま、またもや逃げられましたわ……!

ゴロリ、我が家の飼い猫ながら、やりますわね……!!


…………また、ですわね。…………第6話……?


まさか、ゴロリに読書などという趣味が……?

いえ、芸というべきかしら? 仕込んだ覚えなどありませんが……。


まあ、爺に聞いてみるとしましょう。

猫の読書は芸と呼ぶべきなのかどうか、を。


あけまして、おめでとうござりまする!

新年の初仕事は……鋼玉(はがねだま)の腕輪 第1話だな。

さて、あまり期待せずに行くとしようか。


●糞親父:

……やはりな。この作者は……。一応、最速の登場タイミングから抜粋しているようだが……。

まあいい。”友情出演A”だそうだ。初登場時と変わらない、ということだな。


さて、次だ。


●俺:

…………。

(負けだ……気にしたら、負けだ……! そうに違いない……!!)

はっ……、うむ、盟約の魔から引き続き登場している偉丈夫のようだな。

妙な状況に陥っているようだが……。憂さ晴らしが出来るといいな。



●花嫁さん:

…………これか。純然たる新規の登場人物だろうに……。

名前が出てくることを願おう。

我が飼い主も、何時か、こう呼べる日が来るといいのだがなあ……。



――む。性懲りもなく吾輩を探し回っているようだな……。

可笑しなことになる前に、去るとしよう。


……また、逃げられましたか……。

折角、鰹節ご飯を用意しましたのに。薄情な猫ですわね……。


――と。いけない。伝言を頼まれてましたっけ。

代読させて頂きますわね。


”第二編、鋼玉の腕輪より先は、新規の登場人物が無い場合、基本、当コーナーは割愛となります。”


ですって。


……ネタ切れを体よく言い換えたような文章、のような感もしますけれど……。

ま、よろしいでしょう。



……あら? もしかして、ですけれど。この伝言……ゴロリの隠し事と何か関係が……?




――んもう! 私には大声を出すなと叱りますのに、

どうして、私を呼びつける時は大きな声を出すのかしらね、ばあやは。

え? お誘いの電話……!? 誰――ええっ?! あいつからって――!!

今日は雨? 雪?? 槍――いや、隕石の直撃が在るのかしら!? こ、こうしてはいられません――!!


……(ドタドタドタドタ)……

蒼玉編 第2話だ。


……飼い主がやけにそわついて家を出たようだが……、まあ、吾輩には関係ないことだ。

仕事、仕事。と。


●私:

第1話の花嫁さん。エリアルド=リングルード。跡取り娘。

戦争に出征し、音信が乏しくなった婚約者と、親が周囲に押し切られて用意してきた許嫁の間で悩んでいる。

心は婚約者に在るが、家や領地の事情まで考えると……、という板挟み。

或る日、気分転換に出て、行き倒れに遭遇した。


……何故だ……。何故、此処までまともな設定が一番最初に出てこないんだ……。

……ふう。次!


●大柄な男:

第1話の俺。…………。

……ふむ。視点が異なるから、ということか? 追加情報も無いようだし……。


次。


●料理番:

館に住み込む料理担当の家人。職人気質で、筋肉質な体つき。


●ばあや:

エリアルド嬢の面倒を見て来た老婦人。家族よりも近しい部分がある。モブ。


●両親:

エリアルド嬢の両親。領主と領主婦人。人の上に立つ立場だからこそ、板挟みになる。モブ。


●いけ好かないちょび髭:

エリアルド嬢の両親が周囲に押し付けられた許嫁。当人も縁談にはあまり乗り気ではないが、断る理由もない。

見た目はナイスミドル。資産家。モブ


……妙に、モブが多いな。次!


●あの人:

エリアルド嬢の婚約者。戦争に出征し、個人的な音信が掴めなくなったはずの人物。

グルンガルドは姓。

精悍な青年で、物腰は穏やかだが、誰も喧嘩を売りにいかない。


蒼玉編 第3話だ。


……ん? 


●オライオン=グルンガルド:

第2話のあの人。


……ただの補足か。待たせるようなネタだったのか……? ま、よかろう。

短くとも、仕事は仕事。


さて、今日はどのあたりでひなたぼっこと行こうかな……?


蒼玉編 第5話である!


どれ……。


●執事長:

エリアルド嬢の両親に仕えている初老の男性。モブ。


ふむ。我が飼い主の爺や殿のような立場の人物かな……? 苦労が多そうな気がするな。

さて、次。


●年下の叔父御:

……好きだな、この手の言い方が。作者の趣味なのか??

さてさて。


……友情出演Bにつき、詳細は秘密、とな!?

まあ、叔父というからには、身内ではあるのだろうがな……。

ま、よかろ。


……ふう。

なんでだろうな。大した仕事をしているわけではないのだが……、どうも、ため息をつきたくなるというか。


さて、今日は屋根の上でひなたぼっこと行くかな。

飼い主に邪魔されない、貴重な場所だしな。


一日間をおいて、紅玉編とな。

緩急をつけてみようという腹か? どんな意味があるかは解からないが……。

さて、第1話だ。


●俺:

一応、主人公か……? 蒼玉編から続投している、と。

新しい設定も無いようだな。


次。


●珍妙な生き物:

…………。

…………はて? 何処ぞで見た気がするが……、…………”友情出演C”!?

ということは、別人(?)、ということだな。

ここで述べられる情報は無し、と。…………。


……次!


●宿の親父:

善良な人柄の持ち主。モブ。


以上だな。……ふう。やれやれだ。何をしたわけでもないが、やれやれだ。

そうだな……今日は、台所に行こう。何か美味しいおすそ分けでも期待したい気分だ……。


さて、紅玉編 第2話。


●私(村娘):

村の若い者組の一人。初恋が突然やって来た少女。


……きちんとした名前を用意すればいいのだろうに……。次。


●家主の親父:

村娘の父親。モブ。


今日はこんな所か。さて、往生際の悪い飼い主が来る前に逃げるとしよう。


紅玉編 第3話である!


●化け物:

……うん、まあ、名称に関しては諦めるとしよう。

なになに?

契約によってこき使われてはいるが、花も実も兼ね備えた大物。

けれど、上には上がいた……。

詳細は、読め、ということだな。……吾輩が人間の読み物を読んでどうする!!


次。


●ろくでなし共:

モブ。


次!


●超大物:

……解ってはいても、なあ……。ふう。

…………友情出演D、とな?

見た感じ、中々の苦労人にも思えるが……。

まあ、同情しても仕方あるまいな。


ふむ。此処までだな。

では、じいや殿のおやつを相伴しに行くとするか。


紅玉編 第4話だ!

順調な仕事で何よりだな。

さて。


●長らしい人間:

村長。モブ。


●後ろの子:

……だから、この作者は……。ふう。

魔族の少年。外見年齢は十代前半だが……。

どう足掻いても、自分を縛り上げた人間の男に勝てなかった。


●村人A:

モブ。


今日はこれで終わりだな。では……たまには昼寝でもしていくか。

証拠隠滅、完了! と。さて、何処がいいかな? ベッドの下などは定番だが……。


紅玉編 第5話だな。


●妹ちゃん:

ふむ。『盟約の魔』で登場した女の子だな。

追加事項も無し、と。


次だ。


●村長である色男:

これも、『盟約の魔』で登場済み、と。

……名前ぐらい考えてやればいいだろうに……。


む! 何気に初の皆勤か?! 今の所、休暇が無かったとは! めでたい。

……これで、もう少しまともな仕事だったら、飯も美味かろうになあ……。


華燭の因縁 第一話、だな。

ふむ。この話が最後のエピソードになるのか……。

では、紹介といこう。


●私:

…………。

呆れるよりも前に仕事だ。

10代の少女。生贄になることを志願した。


……なんだ? 妙に重い設定だな。吾輩の飼い主とは違い過ぎる……。


次。


●竜:

…………。

……いや、まあ、何と言うかだな。紹介してよかったのか? 人物ではないのだが。

全長10mを超える体躯、赤黒く輝く鱗、濁った金色の瞳……本編でやるべき描写では……?

ん……?


●屈強な若者:

……なるほど? 何がしかの因果がある、と。話を読み進めれば解るということか??


次。


●村長:

ふむ。少女の父親か。村の過去や立地から苦しい立場に居る人物。

……ん? この設定はひょっとして……?

此処で語るのはよそう。読めば察せる類のものだからな。


●婿:

…………。

まあいい。此処はバラしてしまおう。屈強な若者のことだな。

まあ、立場を変えれば見方も変わるか……。


次!


●男:

…………だから。――いや、我慢だ! 吾輩!! あと少し。あと少し――!


こほん。


やや不遇な生い立ちの魔族の青年。愛されなかったわけではないが、一目を置かれたかった。

子供時代の背伸びを拗らせて、力を奉じ、力に酔うろくでなしになってしまった。


……割と具体的な設定があるのに……名前は……?


……次。


●弟を自称する男:

魔族。異様な能力の持ち主。ピンとくる人はピンとくるかも――知れない。


……それだけか? 他に、読み上げられる設定は無いのか……?


…………はあ。数はこなせたようだが……。

始まるまでは、もう少しまともな仕事だとばかり思っていたがなあ……。

それでも、マシか。飼い主に構われるよりは……はあ。


今日は……interlude……幕間とな?

ほうほう。殊勝そうな響きだが……さて。


●メリア:

女性。元魔術師の賢者。無鉄砲な所がある幼馴染に思いを寄せていた。


…………。

…………な、何があった?! 作者はついに、悪い物でも食したのか!?

――あ。……いや、まあ……こほん!


次、次だ!


●ライド:

男性。力尽きた勇者。勇敢ではあるが、情の強い部分が在り、視野が狭くなりがちだった。

恋愛感情には鈍い方。


……じーん……。まともだ……。なんて、まともな仕事なんだ……!!

しかし。……妙に沈んだ雰囲気を感じさせる設定だな……。


次!


●ラセル:

男性。神官。上記二人の幼馴染。メリアに淡い想いを抱いている。


…………。

これが……幕間……。こんなにまともな仕事が……脇道、なのか……。


……次。


●俺:

来たか。ついに……。まあ、よかろ。今日は気分がいいしな。うん。


男性。剣士。パーティリーダー。暴走する気配を見せていた勇者を討った人物。


重い話、のようだな。

ふむ、次で最後か。


●竜:

巨大な体躯を誇る赤竜。雄。勇者一行に力を貸したが、快く思ってはいない。


……はあ。次回もこんな風にいってもらいたいものだな……。

期待するべきか……いや、諦めの予防線を張っておくか。

ん? 付箋付き……?

”勇者様御一行は、この幕間だけの登場人物です。悪しからず”

……何が悪しからずなんだ??


華燭の因縁 第二話だな。


●父様:

……誰のだ。

ん? 少年の呟きから取ったか……。関係性はすぐに解ったがな……。

まあいい。人間ではない存在、だそうだ。


次。


●少年:

……慣れて来たなあ、吾輩も。それでも、突っ込みたい衝動が消えないがな。

人と人ならざるものとの混血。片親の正体が何なのか――は、読んでくれ、ということだろうな。

健やかに育って欲しいものだが……間違っても、吾輩の飼い主のようにはならないでくれよ。


次。


●彼女:

…………。

……ええと、だな。彼氏と同年代の少女。彼氏の秘密を知って、受け入れたが……。

ふむ。何やら、因果な物がありそうな感じだが。


……はあ。良い仕事が出来たと思えたのは一日しか続かなかったなあ……。

ま、期待とは違っても仕事は仕事。そして、終わりは何時かは来るものだ。

それまで、気長に待つのも一興だろうよ……。昼寝に行くか。


エピローグ……そうか、これで最後なのだな。

名残惜しい……という気分にはならんか。まあいい。仕事だ。


●俺様:

…………、……ん? ”友情出演A”?

ならば、これ以上紹介できる情報はないな。


次。


●神様:

プロローグにも登場した神様。


次。


●主君:

『俺様』の上役。友情出演E。


以上。


年末から始まった付き合いも此処まで。

なんともけったいな仕事になってしまったが……無事、完遂できたことを喜んでおこう。

吾輩にまたがあるかどうかは判らないが――折が在れば、になるのだろうな。

此処まで付き合ってくださって、本当にありがとう!

作者に代わって――、――む!? この気配は……まさか、飼い主か?!

いかん! この副業を知られるわけには――!!


ええい、名残ぐらい感傷的に味わわせればいいものを……!

吾輩はこれにて去る! さらばだ、皆の衆! 是非、この作品を楽しんでくれ!!

それでいい。それだけで十分だ。では――!


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