第5話(後編)
文字数 1,208文字
あれから一週間。
俺は妹から逃げ回っていた。
怖い顔をして追いかけて来るから――というのは表向きの理由。
裏向きの理由は、俺がついた浅はかな嘘が、割とあっさりバレてしまったせいだ。
勇者が一種の魔法戦士であることをすっかり忘れていた。
だから、武具を始末した時点ですっかり終わったものだと本気で思いこんでしまっていたのだ。
……くそっ、取り上げておきゃ良かったかな、魔法能力。
いや、やらなくて良かったんだ。勇者の魔法能力は異能の一種だ。魔術師の魔力とは、違う。
その日、運悪く足止めを食らったのは、間男――村
「――――」
何やってんだ? という目で俺を見て。妹に気付くと、ほんのり赤くなる。
馬鹿馬鹿しくてやってられないので、さっさと押し付けようとして――。
「あたし、誕生日なんですけど」
ちなみに、客人は
「……そっか」
久しぶりに聞いた”誕生日”に、笑い出したくなる。とっくに疎遠になってしまっていた。
「解った。適当なもん、何か考えとく――つうか、間男からのだけでいいだろ」
「それはそれ、これはこれよ! 逃げないでね。今日こそ、問い詰めるから!!」
いっそう逃げ出したくなることを宣言して、妹は間男を引き取った。
俺は一目散に村へ。
居候の意味深な視線には気が付かなかった。
気がついたら、迷い込んでいた。あの、”神の
そして、また出会った。
『我が声に応えよ……魔よ、魔たる者よ……世界を産み、
森を鮮やかに染め上げる、虹色の
「――――」
無言で後じさり、背を向けて逃げ出す。
必死に握り締めていた。
「やる」
いきなり、それだけ言って、衣服を折り
「――――?」
ぼんやり光る、水晶のような物――だろうか。握り
「どうしたの? これ」
「
「……どうしたの、いきなり?」
兄はそこでため息をついた。
「お・誕・生・日! ――おめでと」
朝っぱらに
「あ、ありがとう」
「寝る。お休み」
それだけ言って、寝室に消えてしまった。
翌早朝。
俺は家を出た。書置きだけを残して。
起こさないように、追い駆けて来られないように、眠りの香を
俺は一目散に駆けた。あの、”神の呼子”の元へ――。
だから、知らない。
薄情者と、
「結局、
そんな、生意気な反省をしたことも。
そして。