紅玉編◆第2話
文字数 1,754文字
どちらかと言えば、整った顔立ちをしているが、黙っていると妙に迫力がある。けれど、優しく笑うと不思議な愛嬌が
初めて見かけた時は、なぜか、狐に摘ままれたような顔で首を
「……何にもねえ、ってのはどういうこった??」
などと、愚痴を
私はその時、
偉丈夫の存在に気付いていはいても、無関心を決め込んでいた。
「神隠し――は、嘘だったのか?」
見上げるほどの大男は怖かったし、関わり合いにならずに済まそうと決めた。
なのに――。
「――嫌、
あの馬鹿共――最近、村の近辺をうろつくようになっていたろくでなしの悪党のせいで、関わることになってしまった。……助けてもらえたから、家に
これでも、年頃の娘である。
父親が何十人
「……神、隠し……?」
話を聞いた村人は、皆同じように首を傾げた。
行きずりに助けた村娘の案内で、ひなびた山村に
麓で
念の為、泊めてもらう家主の親父にも話を切り出してみたが……首を傾げられて終わった。
こうなって来ると、
そして、俺は後者を選択した。
「……宿屋の親父め――、明日、とっちめてやる!」
そう愚痴ったら、家主にもっと妙な顔をされた。
「この山の麓に、宿なんて無いはずだが……?」
「――――は、あ?!」
ようやく、自身が神隠しに
まさか時空を超越していたとは、この時はまだ想像も出来ていなかった。
「……一体、何でだ? いつ、踏み越えちまったんだ……?」
木製のドラム缶。そんな形状の風呂に
怪獣と戦っている間に飛ばされた――無し。そもそも、怪獣が居ねえ。
地面に
だから、言ったのに。そんな
しかし、湯船に浮かんで、じっと偉丈夫を見つめている。
「
「……あの、お加減は?」
少女の声で我に返った。
風呂場の外で、湯加減を見てくれている。領主様の屋敷の風呂とは大違いで、実に古風なスタイルだと、改めて感心してしまう。
「あ、うん。丁度いいよ。ありがとう」
そして、もう一つ、聞いておくべき事があるのを思い出した。
「――なあ、昼間の
顔が見えていたわけではないが、
「恥ずかしい話なのですが……」
少女は、近年村の頭痛の種となっている出来事を、慎重に話し始めた。
「ふうん。山に棲みついたろくでなし共と、怪物……ねえ」
「はい。皆、迷惑してるんです」
「御領主様には知らせたのかい?」
「――え?」
「……?」
目を丸くするようなことか、と思っていたら。
「……その、内緒にして欲しいのですが――」
「ん? いいけど」
「ここ、隠れ里なんです」
「……なるほどね。助けを出したくても、出せない、ってわけか」
「厳しい取り立てを嫌って逃げて来た、んだそうです。決して楽な暮らしが出来ているわけじゃないから、税を取り立てられたら、生きていけない、って」
「
「……私は、不自由を感じたことがありませんし……」
「ふーん」
こつん、と、湯船に浮かぶ地獄の王様が腕に当たる。どうするんだ? と問いかけられていた。