第3話(前編)

文字数 3,893文字

(……つまらねえ喧嘩(けんか)、しちまったかな……)

家の入口である、木の階段に腰かけたままため息をつく。目は青い空を悠然(ゆうぜん)と流れていく白い雲を追いかけていた。

(あんな、妙な場面目撃しなかったら――黙ってられた……かなあ……)

村一の美人。それが母親だ。
それに言い寄る間男が、この村の村長で族の(おさ)
母は村一の戦士――父と結婚し、未亡人になった。
間男を憎からず思っているのなら、息子といえど、口を挟むような事じゃない。
だが、母の本命は別にいる。しかも、それは多分、契約絡みだ。
だから、族長といえど、不用意に口を挟まない方がいい。
だから、わざと喧嘩に持ち込んで、こてんぱんにのしてやったんだが――守ったはずの母に(たしな)められてしまった。
身の置き所がなくなって、母とも口論して出てきてしまった。

『うちの負け犬は居るか?』

「お!? ――おう」

突然降ってきた明確な声に、ついびっくりしてしまう。


あのあと、息子らしい偉丈夫(外見的には一回りは年上に見える)をおぶさって一人で暮らしている家に帰り、客間のベッドに転がして放置した。
魔族の村に、人間が流れ着く――無い話ではないが、聞こえは良くない。
出来れば隠しておきたかったが、速攻でバレた。
今朝の喧嘩とは別件で叩きのめされた村長が、文句をつける為に待ち構えていたからだ。
そして、長が感心し兼ねる女の元に通っている――というのは、村人なら誰しも知る所であって……。
長に灸を据えようと、家を遠巻きにして隠れていた金魚の(ふん)共が致命的だった。
あっという間に大騒ぎになって…………あっという間に鎮火した。
仲間から袋叩きにされても不思議はなかった状況が消滅したのは、あの、父親を自認する怪生物のせいだ。

翼の生えた蜥蜴(とかげ)。そんな(なり)なのに、どうして、あんなに押しが利くのか。生物としての格差――なのか? 目にした誰も彼もが本能的に押し黙ってしまった。
それだけなら、具合の悪い空気に頭を痛める破目になったはずだ。
ところが、若干名の、空気が致命的に読めないアホのおかげで、実力の片鱗までもが披露されてしまった。おかげで、残る全員が知らん顔を決め込む判断を下してくれたのだが。

『水と適当な残飯をあてがっときゃ、自分で適当にどうにかする』という助言にも素直に従った。
気が付けば、割と横柄な態度の居候と化したし、敵に回したくないのは父親の方だ。
おまけに、偉丈夫はこの辺りの地理などには(うと)いらしい。
土地、国、人、時代等々、様々な事柄を、手当たり次第に尋ねられた。
問題にならない範囲で教えはしたが……魔族の隠れ里、という物にも興味が()かれている節がある。


だから、居るはずだった。けったいな親父を嫌がって、夜中の内に脱走などしていなければ。

昨日のような喧嘩をされては大変なので、いそいそと後を付いていった。


「ふわあ……」

タイミングがいいのか悪いのか。偉丈夫が客間から出て来た。
朝には遅いが、昼には早い時間である。欠伸をしているのは、二度寝でもしたからだろう。

(……成程、適当に、か……)

感心半分、呆れ半分でため息をつく。
昨日の喧嘩の(あと)何処(どこ)にも残っていなかった。

『おう、負け犬。いい御身分――――重役出勤か!? 畜生! 俺様はせせこましい宮仕えの合間を縫っているというのに!!

「悔しかったら、有給でも取れよ。……てか、朝っぱらからテンション高え。あと、他人様(ひとさま)を勝手に犬扱いすんな、糞親父」

『頭が高いわああっ!!

一瞬で偉丈夫の頬に四枚のモミジが張り付く。
(とど)めの蹴りは腹に決まって、雄偉な体躯を軽々と吹っ飛ばした。

巻き込まれた家具――食器棚とか、趣味で集めている書籍の棚とか――が、おくたばりあそばされたかと、青ざめた、が。

「……おい。本っ気で糞親父から馬鹿親父様に格下げしていいか!? ……ここ、他人様の家だってこと、忘れてねえだろうな!!

見た目通りにタフなのか。腹の上でマウンティングポーズを取る掌サイズを鷲掴みにし、立ち上がると無事だったテーブルに叩きつけた。

ちなみに、家具は無事だった。

『忘れとらんわ、負け犬! 迷惑賃も込々だわい!!

小さな指がぴっ、と適当な角を指すと、大量の食糧が詰められた木箱が出現した。

偉丈夫が「大丈夫か?」と、視線で尋ねて来る。

「壊されなければ、多少は」

返事もそこそこに、お詫びだという食料の吟味を始めた。
葉物、色とりどりの実物、果物、獣肉、魚介……多種にわたる素材ばかりか、調味料まで込々。
鮮度もサイズも申し分なしの上物がこれでもかと詰まっていた。保存を間違えなければ、一か月は食うに困らない。
地下の貯蔵庫に箱ごと移動させようとしたら。

(かたじけな)いが、朝飯を用意して頂けると大変嬉しい』

妙な物言いに呆れ。

「――――」

親父殿の申し出に同意するような腹の虫に、さらに呆れる破目になった。


「……で? 何をしに来やがったんだ」

穀物を挽いたパンと、鶏卵を溶いて焼いた物、獣肉の薄切りと菜っ葉の油炒め、獣骨から出汁を取ったスープに牛乳。
少し早い昼食を客間で平らげ、氷で冷やした果汁(コップは木製)を(あお)りながら、偉丈夫が切り出した。

喧嘩は勘弁して欲しいのだけれど。

『貴様に押し付ける面倒が決まった。以上』

(てのひら)サイズの形とは裏腹に、ナイフとフォーク(どちらも木製)を器用に操って、息子に負けない健啖(けんたん)ぶりを発揮していた。今は果汁のコップの淵に乗って、ストロー(木製)で果汁を味わっている。……体重がどうなっているのか、非常に不思議な絵面が出来上がってるんだが……。

呆れていいのか、感心すべきなのか、さっぱり解らなかった。

「――おい。何で俺がバカンスの最中に」

勝ち犬が不穏な空気の負け犬の顔面めがけて投げつけたのは――大粒の鋼玉(はがねだま)。それも、親指と人差し指で作る輪っかに(はま)るようなサイズだ。そんなものが、二粒も。一体、何十万枚の金貨と換金できるんだ!?

「紅玉と蒼玉……?!

片付け物の合間に一匹と一人を窺っていて、こんなに驚かされようとは。いや、驚かない方が無理か。
滅多に見ない程深く鮮やかな色彩に、対と呼ぶ事が出来るほど安定した大きさ。
小指の先程度の大きさでさえ、数年~数十年は働かずに食っていけるだけの価値を持っている。
おまけに、宝石は存在そのものが貴重で、希少。
あれなら、片方だけでも6人家族が一生食っていけるはず。

そして、鋼の名に恥じない硬さ。

凶器と呼んでいい速度で飛んできた鋼玉を、偉丈夫は難なく受け止めて見せた。

「……くれんの? 迷惑賃?」

(たわ)!!

偉丈夫の顔面に星形の(あざ)が出来上がった。しかも、怪生物は目の前を蹴る仕草をしただけで、蹴りは当たっていない。

『それに見合う台座を作れ。そして、持ち主を見つけて押し付けて来いっ!! それが、お仕置きだ! ちなみに、無様な台座を作りやがった日には……折檻(せっかん)! だからな、負け犬!!

「へえへえ。……負け犬、負け犬、うっせえわ……!」

小声で愚痴った直後、星形の痣が二つ追加された。……地獄耳とはこのことか。

『ああん?!

小さな形では迫力不足のはずの凄みだが、”糞”親父は伊達じゃない、と感心してしまう貫禄があった。

「…………くっそう……! ほらよ」

不満気に(にら)み返し、しかし、一瞬で掌に銀色の腕輪を創り出し、親父に向けて放った。

(――今のは?!

魔術や魔力に()ける魔族ですら滅多なことではお目にかかれない、間違いなく、異能の(わざ)だった。親が親なら、子も子、ということなのか。

怪生物は中空で腕輪を受け止める。そして、慎重な仕草で吟味を始めた。

(こうしちゃあ、居られない!)

洗い物をさっさと片して、一匹と一人のやり取りを一望できる位置に陣取ることにする。

これは損だ。見ておかなければ、絶対に損をする!
あんな風に力を使えたら――母を護れるだろうか。楽な暮らしをさせてやれるだろうか。
今は別居状態で、中々長く村に居つかない母ではあるけれど。

一応、喧嘩が始まった時に被害を受けないよう、部屋の出入り口に一番近い場所を選んだ。

『――ふむ。ま、よかろ。鋼玉に鋼とは面白くもないが……合わぬこともあるまい。どれ』

宝石を嵌める穴が開いているだけの腕輪の表面が水のように波立つと、磨き上げた鏡のように世界を映し出し始める。そして、花を付けた蔓草(つるくさ)の紋様がいつの間にか彫り込まれていた。それは間違いなく一瞬の早業で、早業とは到底見抜けない程見事な業だった。

「――――」

『よしよし』

絶句している家主には気づきもせずに。

『…………ん?』

嵌めるはずの宝石を(ふところ)に入れて、客間から逃げ出そうとしていた偉丈夫を見(とが)めた。

『おまいなあ……それで、俺様を糞だの馬鹿だの抜かしやがるのか……!!

流石(さすが)に、同情の余地が無い。そして、家から泥棒が出たというのは、嬉しくない事実だ。

「ギクッ!! ……いいじゃねえか! バカンスだって先立つ物が要るんだし、慰謝料みたいなもんだろ! 親父なら、こんなのいくらでも手に入るじゃねえか!!

『だーい、きゃーっか!!! それこそ、お前の母ちゃんから釘(もら)っちゃってんのよね、俺様。下手に甘やかすな、って! ……ん?』

「――あ、あら?!

こっそり偉丈夫の影を踏んで、足止めをしていたことに気付いて貰えたようだ。

『…………えーと……?』

「村長と喧嘩していて、受けが良くないんだ。泥棒を出した、なんてのは噂でも嬉しくない」

「――そ、そいつぁ、ごもっとも――」

偉丈夫は半分以上涙目だった。
きっつーい灸――それこそ、折檻が確定したのだから。

『――――』

無言で、今までの扱いに温情が存在していたとはっきり解かる冷気を(まと)って、怪生物は自分を親父と呼ぶ偉丈夫を睥睨(へいげい)していた。

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登場人物紹介

お初にお目に掛かり申す!!

吾輩、ゴロリと申す猫である!

故あって、この短編集の人物紹介を担当いたす。

公開に応じて、登場人物が随時追加されていく予定であるので、よろしく付き合い願いたい!

まずは、プロローグだな。


●それ:

…………いいのか? いきなりこれで……。

ま、まあ、一応、神様で……オス、だそうだ。

名前で呼ばれることは滅多になく、通称や肩書き呼びが普通……か。

けったいなことだ。……何?

次の人物が旅立つことになる世界の神様ではないから、なおさらに名前は出てこない?


……うーむ……。

妙な仕事を請け負ってしまったか……。


次だ。


●いい年をした精悍な男:

…………いいのか? ……ん? 作者都合で秘密、出て来ても偽名だけ……?

…………。

……ま、まあ、次だ。

なになに? いい歳をしたマッチョで、魔法じみた能力を持ち、数奇な人生を歩いて来た……と。

日頃蓄積しているストレスの発散を求めて、神の御座所に押しかけて来た、黙っていれば男前……。


……うーむ……。

請け負ったことを後悔しなければいいが……。


気を取り直して。

盟約の魔、第1話だ。


●第三の眼を持つ異相の男:

名前は……また、秘密か。明かすのは別のタイミングで! とのことだが……。

何時になるのか、何時にするのか。……考えてない、ではないことを祈ろう。

魔族、男性、歴戦の勇士。神との契約――盟約に従って、世界の外側に送り込まれた。

以来、ずっと戦い続けている。


難儀な身の上のようだな。吾輩が同情したところで、何も役には立たないが……ま、よかろう。


では、次。


●割り込んだ者の正体:

……諦めた方がいいのか……? いや、請け負った以上、仕事は全うする所存だが。

……さて。


神。何? プロローグの「それ」と同一の存在!? 

……神様繋がりで仕事……頼まれ事を請け負って、世界の外側に降臨した――か。

ふむ、世界の外側とやらが気になるが……人物紹介でそこは説明できないか。残念だ。


今回は此処までのようだな。しかし……

大丈夫なんだろうな、この仕事……。


……ふう。

盟約の魔、第2話だ。


●魔族の青年:

第1話の男の若かりし日、だな。共通点は額に第三の眼が在ること。

神の呼子と出会ってしまったことからしても、難儀さは若い頃から、ということらしい。

あまりうまくいっていない親子仲を気にしている。

正式な名前が登場すれば、初めてのまともな仕事になったのになあ……。


次。


●煤けた大男:

…………またか。

プロローグに登場した偉丈夫だな。憂さ晴らしに出たはずだが、妙なことになっているようだ。

基本的な設定自体は、プロローグと変わらないらしい。おっと、種族は人間か。


さて、次。


●珍妙な生き物:

…………。これは……ん? 妙なメモが……?


”このキャラクターは、作者の別のシリーズでウェイトのあるポジションに位置している為、

原則秘密――明かせません!! 詳細に関しましては作中に出て来る情報だけでご勘弁を!

友情出演Aです”


……友情出演A……とな? 何故、出した……。



今日は……ここまでのようだな。寝よう。眩暈がする……気がする……。


……第三話(前編)か。


ん? んん? 新規の登場人物は、無し??

……珍しいこともあるものだな……。

ま、よかろう。――む。メモが挟まれているではないか! どれどれ……


◎鋼玉(はがねだま)について。

一応、異世界の鉱物という設定ですが、名前から類推可能な通り、鋼玉(こうぎょく)……コランダムが元ネタとなっています。

中でも、宝石質(最悪でも、研磨すれば宝飾として価値がつく品質)のものには別の名称がありまして、赤色系がルビー、それ以外がサファイアです。

作中では、紅玉(こうぎょく)……ルビー 蒼玉(そうぎょく)……サファイア ですね。

紅玉には火の力が、蒼玉には氷の力が秘められている、という設定です。

尚、作中の世界においては、蒼玉を名乗れるのは青色系のものだけで、それ以外の色彩は鋼玉で一まとめにされ、原則、特別な名称は持ちません。


…………。

まあいい。明日を待つことにするか……寝る。


第三話(後編)。

……ふむ。またもや、新規の登場人物は無し、と。

ま、退屈もまた良かろうよ。……ふわーあ……。


………………


………………


……………………はて? 何かを忘れている気が……?


む!? この気配――まさか、飼い主か?! もう、戻って来た……!?

い、いかん! この副業を知られるわけには――!!


……(ドタドタ)……


昨日は危なかった……! 

今日は大丈夫。玄関にもきちんと鍵が掛かってるからな! 帰ってくれば、解る。

では、第4話(前編)だ。


●母:

……突っ込んでいいと思う。誰の母だ、と。

……魔族の青年の……、ならば、彼女も魔族だな。

ふむ。若過ぎた女……? 

彼女自身不遇な生い立ちの持ち主で、中々心を開ける大人に出会えなかった……。

母になるには若過ぎた、ということか? 息子である青年とはあまり上手くいっていない、とは。


●勇者:

……まあ、格好いい名前が出て来るが……。何? 義理の父!?

伝説の勇者で、魔王を討ち滅ぼして世界に平和をもたらしたが……。

難儀な男、というのは解ったが……義理の父……。うーむ……。


●仲の悪い仲間の一人:

村人A……しか、無いのか? つまり、モブAか。……ま、よかろ


●村長:

むらおさ。そう読んで欲しいようだな。……ふむ。

まだ、年若く、長の立場が重荷になることもある男。

出来過ぎた父、先代族長とその親友に引け目を持っていて、拗ねていた。

魔族の青年とはやや感情的な確執がある。


●年下の仲間:

青年とは比較的仲が良い、村人B。若さと実力の低さからいじめられる側になりがち。


●妹:

……この作者は……。……ん? エメル=ミディア。……あるのか、名前……。

はっ! は、初めての、まともな人物名!? そ、そんな馬鹿な……!! ――はっ、吾輩が毒されてどうする!


……こほん。


魔族の青年の妹。若さゆえの天真爛漫さの持ち主。芯も意外としっかりしている。

母の生まれ故郷に来たことと、腹違いの兄が居ることに期待を覚えている。


……(きょろきょろ)……。

よし、誰もいないな……!

第4話(後編)である。


ん?

……………………。


……新規登場人物は、無し……!?


くっ……! 飼い主の目を盗む苦労が、水泡に帰そうとは……!!

愚痴にしても仕方がないが、この悔しさはいかんともしがたい……。

――む!


…………


……行ったか……! 

いかんな。このままでは、バレる。吾輩の副業が、バレてしまう……!

悪い人物ではないのだが、表に出して良いものか、困惑してしまう部分もあるし……。


…………


……ええい! 吾輩を探しておるな!? 手慰みに可愛がるつもりだろうが……!

この部屋も危険になって来た、そういうことだな。

然らば、御免!!


……ZZZ…… ……ZZZ……


ゴロリは縁側でのんびり眠っている。


第5話(前編)も仕事なくて、暇を持て余したらしい。


ゴロリは縁側でのんびり眠っている。


……ZZZ…… ……ZZZ……



(そろり、そろりと忍び寄る、縦ロールが一人……)


第5話(中編)である。


……またか、新規登場人物なし……。

楽な仕事でいいのか、退屈な仕事で悪いのか……、やれやれだ。


今回は中編か……。流石に、3話、4話と前後編が続いたから、芸がないと思ったのか?

……ん? 吾輩か? 無いぞ、芸などというものはな。

人間が身に着けるものを、猫が身に着けてどうする。

そもそも、餌で釣らねば仕込めないものが大半なのだろう?

無理矢理覚えたところで、何の役に立つのやら……。


――む! そういえば……飼い主が一時期、やたらと吾輩に妙な事をさせたがっていたが……。

もしや、そういうこと……なのか?! 碌でもないことばかり考える飼い主め……!

まあ、だからこそ、この副業のことも秘密せねばならんのだがな。


とりあえず、明日こそは仕事が在ることを願っておこうか。


第5話(後編)だ。


…………。



…………またか。こんなに新規の登場人物無しで、大丈夫なのか?

いや、仕事が無いことを……いや、愚痴っているな。諦めよう。

吾輩は往生際の悪い飼い主ではないのだから……。


――む!


噂をすれば影が差す、とはな。此処で飼い主に掴まるわけにはいかぬ。

大人しく、退散するとしよう。


……おかしいわね。此処にもゴロリが居ないわ……。


(縦ロールがこれだけ&作者に絵心無しにつき、このアイコンを採用しました(汗))


最近、妙に私を避けている気がするのだけれど……、可愛がり過ぎたのかしら?

元々野良猫で、芸を仕込もうと試している内に家猫になってしまった子ですから、

中々懐いては貰えないのですけれど。……気になりますわね。


爺(じい)は何か知っているようですけれど、はぐらかすばかりですし……。


……あら? 私のノートPC……電源は切っておいたはず……。


……はあ、はあ……、く、苦労したぞ……。

飼い主め、今日に限っては妙にしつこい……!


さて、仕事だ……!


……………………またか。ま・た・か!!



くううっ、吾輩が、どれだけ苦労して――、む!! この気配の近さ……逃げねば!!


……ま、またもや逃げられましたわ……!

ゴロリ、我が家の飼い猫ながら、やりますわね……!!


…………また、ですわね。…………第6話……?


まさか、ゴロリに読書などという趣味が……?

いえ、芸というべきかしら? 仕込んだ覚えなどありませんが……。


まあ、爺に聞いてみるとしましょう。

猫の読書は芸と呼ぶべきなのかどうか、を。


あけまして、おめでとうござりまする!

新年の初仕事は……鋼玉(はがねだま)の腕輪 第1話だな。

さて、あまり期待せずに行くとしようか。


●糞親父:

……やはりな。この作者は……。一応、最速の登場タイミングから抜粋しているようだが……。

まあいい。”友情出演A”だそうだ。初登場時と変わらない、ということだな。


さて、次だ。


●俺:

…………。

(負けだ……気にしたら、負けだ……! そうに違いない……!!)

はっ……、うむ、盟約の魔から引き続き登場している偉丈夫のようだな。

妙な状況に陥っているようだが……。憂さ晴らしが出来るといいな。



●花嫁さん:

…………これか。純然たる新規の登場人物だろうに……。

名前が出てくることを願おう。

我が飼い主も、何時か、こう呼べる日が来るといいのだがなあ……。



――む。性懲りもなく吾輩を探し回っているようだな……。

可笑しなことになる前に、去るとしよう。


……また、逃げられましたか……。

折角、鰹節ご飯を用意しましたのに。薄情な猫ですわね……。


――と。いけない。伝言を頼まれてましたっけ。

代読させて頂きますわね。


”第二編、鋼玉の腕輪より先は、新規の登場人物が無い場合、基本、当コーナーは割愛となります。”


ですって。


……ネタ切れを体よく言い換えたような文章、のような感もしますけれど……。

ま、よろしいでしょう。



……あら? もしかして、ですけれど。この伝言……ゴロリの隠し事と何か関係が……?




――んもう! 私には大声を出すなと叱りますのに、

どうして、私を呼びつける時は大きな声を出すのかしらね、ばあやは。

え? お誘いの電話……!? 誰――ええっ?! あいつからって――!!

今日は雨? 雪?? 槍――いや、隕石の直撃が在るのかしら!? こ、こうしてはいられません――!!


……(ドタドタドタドタ)……

蒼玉編 第2話だ。


……飼い主がやけにそわついて家を出たようだが……、まあ、吾輩には関係ないことだ。

仕事、仕事。と。


●私:

第1話の花嫁さん。エリアルド=リングルード。跡取り娘。

戦争に出征し、音信が乏しくなった婚約者と、親が周囲に押し切られて用意してきた許嫁の間で悩んでいる。

心は婚約者に在るが、家や領地の事情まで考えると……、という板挟み。

或る日、気分転換に出て、行き倒れに遭遇した。


……何故だ……。何故、此処までまともな設定が一番最初に出てこないんだ……。

……ふう。次!


●大柄な男:

第1話の俺。…………。

……ふむ。視点が異なるから、ということか? 追加情報も無いようだし……。


次。


●料理番:

館に住み込む料理担当の家人。職人気質で、筋肉質な体つき。


●ばあや:

エリアルド嬢の面倒を見て来た老婦人。家族よりも近しい部分がある。モブ。


●両親:

エリアルド嬢の両親。領主と領主婦人。人の上に立つ立場だからこそ、板挟みになる。モブ。


●いけ好かないちょび髭:

エリアルド嬢の両親が周囲に押し付けられた許嫁。当人も縁談にはあまり乗り気ではないが、断る理由もない。

見た目はナイスミドル。資産家。モブ


……妙に、モブが多いな。次!


●あの人:

エリアルド嬢の婚約者。戦争に出征し、個人的な音信が掴めなくなったはずの人物。

グルンガルドは姓。

精悍な青年で、物腰は穏やかだが、誰も喧嘩を売りにいかない。


蒼玉編 第3話だ。


……ん? 


●オライオン=グルンガルド:

第2話のあの人。


……ただの補足か。待たせるようなネタだったのか……? ま、よかろう。

短くとも、仕事は仕事。


さて、今日はどのあたりでひなたぼっこと行こうかな……?


蒼玉編 第5話である!


どれ……。


●執事長:

エリアルド嬢の両親に仕えている初老の男性。モブ。


ふむ。我が飼い主の爺や殿のような立場の人物かな……? 苦労が多そうな気がするな。

さて、次。


●年下の叔父御:

……好きだな、この手の言い方が。作者の趣味なのか??

さてさて。


……友情出演Bにつき、詳細は秘密、とな!?

まあ、叔父というからには、身内ではあるのだろうがな……。

ま、よかろ。


……ふう。

なんでだろうな。大した仕事をしているわけではないのだが……、どうも、ため息をつきたくなるというか。


さて、今日は屋根の上でひなたぼっこと行くかな。

飼い主に邪魔されない、貴重な場所だしな。


一日間をおいて、紅玉編とな。

緩急をつけてみようという腹か? どんな意味があるかは解からないが……。

さて、第1話だ。


●俺:

一応、主人公か……? 蒼玉編から続投している、と。

新しい設定も無いようだな。


次。


●珍妙な生き物:

…………。

…………はて? 何処ぞで見た気がするが……、…………”友情出演C”!?

ということは、別人(?)、ということだな。

ここで述べられる情報は無し、と。…………。


……次!


●宿の親父:

善良な人柄の持ち主。モブ。


以上だな。……ふう。やれやれだ。何をしたわけでもないが、やれやれだ。

そうだな……今日は、台所に行こう。何か美味しいおすそ分けでも期待したい気分だ……。


さて、紅玉編 第2話。


●私(村娘):

村の若い者組の一人。初恋が突然やって来た少女。


……きちんとした名前を用意すればいいのだろうに……。次。


●家主の親父:

村娘の父親。モブ。


今日はこんな所か。さて、往生際の悪い飼い主が来る前に逃げるとしよう。


紅玉編 第3話である!


●化け物:

……うん、まあ、名称に関しては諦めるとしよう。

なになに?

契約によってこき使われてはいるが、花も実も兼ね備えた大物。

けれど、上には上がいた……。

詳細は、読め、ということだな。……吾輩が人間の読み物を読んでどうする!!


次。


●ろくでなし共:

モブ。


次!


●超大物:

……解ってはいても、なあ……。ふう。

…………友情出演D、とな?

見た感じ、中々の苦労人にも思えるが……。

まあ、同情しても仕方あるまいな。


ふむ。此処までだな。

では、じいや殿のおやつを相伴しに行くとするか。


紅玉編 第4話だ!

順調な仕事で何よりだな。

さて。


●長らしい人間:

村長。モブ。


●後ろの子:

……だから、この作者は……。ふう。

魔族の少年。外見年齢は十代前半だが……。

どう足掻いても、自分を縛り上げた人間の男に勝てなかった。


●村人A:

モブ。


今日はこれで終わりだな。では……たまには昼寝でもしていくか。

証拠隠滅、完了! と。さて、何処がいいかな? ベッドの下などは定番だが……。


紅玉編 第5話だな。


●妹ちゃん:

ふむ。『盟約の魔』で登場した女の子だな。

追加事項も無し、と。


次だ。


●村長である色男:

これも、『盟約の魔』で登場済み、と。

……名前ぐらい考えてやればいいだろうに……。


む! 何気に初の皆勤か?! 今の所、休暇が無かったとは! めでたい。

……これで、もう少しまともな仕事だったら、飯も美味かろうになあ……。


華燭の因縁 第一話、だな。

ふむ。この話が最後のエピソードになるのか……。

では、紹介といこう。


●私:

…………。

呆れるよりも前に仕事だ。

10代の少女。生贄になることを志願した。


……なんだ? 妙に重い設定だな。吾輩の飼い主とは違い過ぎる……。


次。


●竜:

…………。

……いや、まあ、何と言うかだな。紹介してよかったのか? 人物ではないのだが。

全長10mを超える体躯、赤黒く輝く鱗、濁った金色の瞳……本編でやるべき描写では……?

ん……?


●屈強な若者:

……なるほど? 何がしかの因果がある、と。話を読み進めれば解るということか??


次。


●村長:

ふむ。少女の父親か。村の過去や立地から苦しい立場に居る人物。

……ん? この設定はひょっとして……?

此処で語るのはよそう。読めば察せる類のものだからな。


●婿:

…………。

まあいい。此処はバラしてしまおう。屈強な若者のことだな。

まあ、立場を変えれば見方も変わるか……。


次!


●男:

…………だから。――いや、我慢だ! 吾輩!! あと少し。あと少し――!


こほん。


やや不遇な生い立ちの魔族の青年。愛されなかったわけではないが、一目を置かれたかった。

子供時代の背伸びを拗らせて、力を奉じ、力に酔うろくでなしになってしまった。


……割と具体的な設定があるのに……名前は……?


……次。


●弟を自称する男:

魔族。異様な能力の持ち主。ピンとくる人はピンとくるかも――知れない。


……それだけか? 他に、読み上げられる設定は無いのか……?


…………はあ。数はこなせたようだが……。

始まるまでは、もう少しまともな仕事だとばかり思っていたがなあ……。

それでも、マシか。飼い主に構われるよりは……はあ。


今日は……interlude……幕間とな?

ほうほう。殊勝そうな響きだが……さて。


●メリア:

女性。元魔術師の賢者。無鉄砲な所がある幼馴染に思いを寄せていた。


…………。

…………な、何があった?! 作者はついに、悪い物でも食したのか!?

――あ。……いや、まあ……こほん!


次、次だ!


●ライド:

男性。力尽きた勇者。勇敢ではあるが、情の強い部分が在り、視野が狭くなりがちだった。

恋愛感情には鈍い方。


……じーん……。まともだ……。なんて、まともな仕事なんだ……!!

しかし。……妙に沈んだ雰囲気を感じさせる設定だな……。


次!


●ラセル:

男性。神官。上記二人の幼馴染。メリアに淡い想いを抱いている。


…………。

これが……幕間……。こんなにまともな仕事が……脇道、なのか……。


……次。


●俺:

来たか。ついに……。まあ、よかろ。今日は気分がいいしな。うん。


男性。剣士。パーティリーダー。暴走する気配を見せていた勇者を討った人物。


重い話、のようだな。

ふむ、次で最後か。


●竜:

巨大な体躯を誇る赤竜。雄。勇者一行に力を貸したが、快く思ってはいない。


……はあ。次回もこんな風にいってもらいたいものだな……。

期待するべきか……いや、諦めの予防線を張っておくか。

ん? 付箋付き……?

”勇者様御一行は、この幕間だけの登場人物です。悪しからず”

……何が悪しからずなんだ??


華燭の因縁 第二話だな。


●父様:

……誰のだ。

ん? 少年の呟きから取ったか……。関係性はすぐに解ったがな……。

まあいい。人間ではない存在、だそうだ。


次。


●少年:

……慣れて来たなあ、吾輩も。それでも、突っ込みたい衝動が消えないがな。

人と人ならざるものとの混血。片親の正体が何なのか――は、読んでくれ、ということだろうな。

健やかに育って欲しいものだが……間違っても、吾輩の飼い主のようにはならないでくれよ。


次。


●彼女:

…………。

……ええと、だな。彼氏と同年代の少女。彼氏の秘密を知って、受け入れたが……。

ふむ。何やら、因果な物がありそうな感じだが。


……はあ。良い仕事が出来たと思えたのは一日しか続かなかったなあ……。

ま、期待とは違っても仕事は仕事。そして、終わりは何時かは来るものだ。

それまで、気長に待つのも一興だろうよ……。昼寝に行くか。


エピローグ……そうか、これで最後なのだな。

名残惜しい……という気分にはならんか。まあいい。仕事だ。


●俺様:

…………、……ん? ”友情出演A”?

ならば、これ以上紹介できる情報はないな。


次。


●神様:

プロローグにも登場した神様。


次。


●主君:

『俺様』の上役。友情出演E。


以上。


年末から始まった付き合いも此処まで。

なんともけったいな仕事になってしまったが……無事、完遂できたことを喜んでおこう。

吾輩にまたがあるかどうかは判らないが――折が在れば、になるのだろうな。

此処まで付き合ってくださって、本当にありがとう!

作者に代わって――、――む!? この気配は……まさか、飼い主か?!

いかん! この副業を知られるわけには――!!


ええい、名残ぐらい感傷的に味わわせればいいものを……!

吾輩はこれにて去る! さらばだ、皆の衆! 是非、この作品を楽しんでくれ!!

それでいい。それだけで十分だ。では――!


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