蒼玉編◆第4話

文字数 7,949文字

「いーい湯だねえ……♪」

異世界に来て、風呂に()かれるとは思わなかった。
長方形の広い石の湯舟は100人もの人間が一遍に入浴可能。眺めも良くて、最高だね。何でも、百年程前、当時の国王の行幸(ぎょうこう)が在った時に改築されて以来の利用だそうで、普段は10人が一遍に入浴できる程度の密室タイプの湯船を使うらしい。
いいのかねえ、こんなに歓待されて。のんびり鼻歌でも歌いたい気分だ。
魔族の村では水浴びだったし、けったいな状況に居なければ、文句無しなんだが……。

そこへ。

『♪』

負けず劣らずの気楽さで、黒く奇妙な(なり)の小型生物(なまもの)が泳いで来た。
気分は一気に台無しである。

(……何しに来やがったんだか……)

口に出したわけでもないのに、湯を蹴りかけられる。(たた)き出してやろうと、むんずと掴むと。

「――――」

湯煙の奥から、物騒(ぶっそう)な殺気が飛んできた。

「…………?」

振り返って、婚約者殿の姿に気付き。そして、眉をひそめた。

「おい。付き(まと)ってやがるのは、何でだ?」

『……守秘義務も知らんのか? 無駄飯食いはこれだから――』

(てのひら)足掻(あが)く糞親父には可愛げが足りない。ムカついたんで、湯船の中に全力投球しておいた。

そして、守秘義務とくるからには、服務中――地獄の魔として、仕事に()いているということだ。

ちなみに、眉をひそめたのは、風呂場に居ながら、武装しているように見えたこと。
武人の装備なんてものは、大抵、金属で出来ている。湿度の高い空間との相性は良くない物が多いんだが……。
風呂場で裸にならないとしたら、極めて物騒な理由か、緊急事態の告知、掃除をする時ぐらいのもんだ。しかし、現状はどの可能性にも当たらない。……敢えて、敢えて、可能性を見出すとしたら――昼間、炊事場とはいえエリアルド嬢と一緒に居たことを(ただ)しに来た、ということか。

だが。

アホ親父が何の気配もなく現れるまでは、風呂場は貸しきりだった。
脱衣場と入浴場を(へだ)てる仕切り戸が動く音さえ、無かったのだ。

ざぶり、と湯音を立てて、婚約者殿が一直線に向かってくる。

「…………」

『貴様! よくも!!

湯面(ゆおもて)に顔を出した糞親父を再度ひったくって、武具を身に着けたまま風呂に入った婚約者殿の顔面めがけて投げつけた。

空っぽの、金属製のバケツに石でも当てたような間抜けな音がして、跳ね返った親父が婚約者殿の頭の上に着地する。

そして、婚約者殿は裸になった。それも、一瞬でだ。

(……ははあ、正気とは呼び(がた)い状態にあるのか。こりゃあ、何かありやがるなあ……)

面倒臭そうな予感がバリバリしやがる。知らん顔をすることは即座に決定事項となった。

はて、何で自分は風呂場に……? という顔の婚約者殿の脇を抜けて、湯船を出ようとしたら――。

腕輪が(はま)っていた。あの、糞親父との合作であるあれが。

「――――!!

金属製の装身具を入浴場に持ち込むなんて非常識、した覚えがない。
泥棒除けを掛けて、脱衣所に置いて来た。
なのに、今、俺の腕に在る。美しいとも、(あや)しいとも取れる、鮮烈な輝きを放っていた。

言わんとすることは――もし、金属の装身具が口を利くのなら、だが――本能的に(ひらめ)いた。

(……面倒臭えお仕事だこと……!)

ため息をつきたい気分を()み殺して、より良い景色が眺められる位置に移動したふりをして、婚約者殿を(うかが)う。

「…………」

話はこちらから切り出さなければ駄目らしい。面倒臭いことながら。
とりあえず、聞いてみることにした。

「頭のそれ、どうしたんです?」

「――え?」

気づいてないような反応も束の間、一瞬で顔が(うつ)ろになる。

『貴様! 俺様の仕事に口を出すのか!?

やっぱり、糞親父様がしゃしゃり出て来やがった。

手前(てめえ)が押し付けてくれた腕輪のせいだ、っつの!」

正面から(にら)み合うことしばし。珍しくも、親父の方が引き下がった。

『人材不足につき、スカウト中! なのだ!! ……水を差したら、承知せんぞ!?

「……ふうん……」

(ははあ、これがリアルな幻影、って奴ねえ……。虫の(しら)せ――って、とこかねえ?)

ご本人様は何処(どこ)か別の場所――多分、戦場、で死にかけ、のパターンかな。……予知夢ってオチにする可能性も在るか。いずれにしろ、親父が見込むってことは、人間凶器の域に達した技量の持ち主であることは確定。わざわざ、だまくらかしてまで粉を掛ける――まず、死にそうにない玉を死なそうとする状況……

(――違う。確定している(・・・・・・)んだ)

この男は今はまだ生きている。けれど、戦場が消えてなくなるまでに――もしくは、戦場が消えてなくなったら――死ぬ。そして、その死因は神にも魔にも()らざるもの。……まあ、人間同士の(はかりごと)かな。そして、糞親父はこの男を獲物として見定めた。神様の天秤(てんびん)から転げ落ちる魂、と、認定したってことだ。
そんな魂を(さら)うのは死神。戦乙女なんてのは代名詞と言ってもいい。人間にとっては、死ぬこと、生きることを必要以上に(おそ)れない為の御託(ごたく)に過ぎないが……当事者にとっては、輪廻(りんね)転生の輪から外してでもスカウトしたい人材の、争奪戦の火蓋(ひぶた)が落とされたようなもの。出遅れるわけには、行かねえだろうなあ……。ちなみに、戦乙女に(いざな)われたなら、天上行きだ。けれど、親父が見込んだなら――行く先は(ひとつや)。地の底奥深くに在るとされる冥府、そのさらに奥底深くに封印されているという、人外の存在達にとっての地獄。そこに真っ逆さまだ。

(だとしたら――)

当人の返事は期待できないと黙考を始めたら、別方向の(ある意味、当然な)質問が来た。

「……どういう関係なんですか?」

「……、何が?」

「その、彼女……エリアと、です」

成程。婚約者としちゃあ、核心だよな。でも、それ、間違いなく、物騒な爆弾だよな?? 俺の本能が訴えているぞ!! 返答をしくじったら、その場で、即刃傷沙汰(にんじょうざた)だと!
冗談じゃねえっつうの!! 親父が見込む玉なら、間違いなく、俺と互角以上の肉弾戦が出来る。……力を一切使わない前提で、だけどな。
親父の力で肉体から連れ出され、魂が実体化した存在である今のこいつは任意に武装が可能であり、正気に見えても正気ではない、という状態のはずだ。
現状、婚約者が心を変えた、とでもいうことにして、人間への未練、天国への未練も一気に捨てさせて、獄向きの人材に育てる――堕とそう、という腹だろう。

猶予(ゆうよ)は、まだ在る――か……)

「婚約者は、あんただろう? 俺はただの行き倒れだよ」

「……本当に?」

おいおい。疑うなら、二人目の許嫁(いいなずけ)の方だろう? いや……間違ってないのか? 
家同士の伝手(つて)による婚約は、窮屈極まりない部分が在るのだという。
そういや、聞いた事があるな。破談という選択肢を残したいなら、婚前交渉は禁止事項なんだと。神様同士でも、致しちゃった後の破談は外道として肩身の狭い思いをさせられるものらしいし。
自由恋愛が一番、って気がするなあ、俺は。

「だったら、手元に置いときゃいいだろ?」

(あき)れた視線も追加しておく。すると、婚約者殿はちょっと()ねた。

「それが出来たら、どんなにいいか……。婿(むこ)に入る身ですし」

ただでさえ肩身が狭いのに、さらに肩身の狭い立場になりたい、ってわけか。御馳走(ごちそう)さん、だなあ。

「ほほう。流石(さすが)はいい所のお嬢様、かな」

「……此度(こたび)(いくさ)勲功(くんこう)を立てて――」

婚約者殿の台詞(せりふ)が不意に途切れた。

(ふむ。是が非でも生還しなきゃならん理由、か。……糞親父の術と正面衝突しやがったかな? ……まあ、水を差すなって、言われたし。融通(ゆうづう)を利かせてやるとしますかね)

ゴネさせると、滅法高くつく、面倒臭い糞親父だったりもする。

「身分の差を埋めよう、というわけか。……幸せだねえ」

聞えよがしの(ひと)(ごと)に、未来の婿殿はむっとした。

「褒められた事ではないのは、解っています! しかし、俺は騎士だ。それ以外に、彼女を手に入れる(すべ)は――」

…………はあ、糞真面目(まじめ)だねえ……! からかいを皮肉と受け止めなくてもいいだろうに。

しかし、口汚く言えば、戦功で立身出世するとは他人様(ひとさま)の生き死にを食い物にする、ってことだからな。騎士様としちゃあ、頭が痛いか。
けれども、騎士が戦場以外で立身出世しようと思うなら、どうしても権謀術数とか、政治の世界とかが絡む破目になる。そっちの方が、よっぽどしんどいんじゃないのかね?
そして、命の生き(ざま)と死に様は、(すべ)て必死と相場が決まっている。味方を背後から斬り刻むとか、無辜(むこ)、かつ、無関係の他人を(しい)して回る、とかじゃないんなら、気に()む必要も無いだろうに。

(とが)めちゃいないさ。殺さなければ殺される、そんな場所で、騎士の職務を(まっと)うしてたんだろう?」

「……そうだ」

「だったら、余計な荷物は犬にでも食わせとけ。戦場は、余分な荷物を背負って生き延びられる程甘くない。それを一番解ってるあんただよな?」

ちなみに、その荷物の名前は、正義感という。
戦場で、(ゆが)むことなくそれを貫けるなら――余程の阿呆(あほう)か、煮ても焼いても食えない切れ者のどちらかだろう。たまーに、戦場上がりの聖人君子、なんつー奇妙奇天烈(きてれつ)が生まれたりするけれども。

「――ああ」

返事をしたきり、婚約者殿は(うつむ)いた。

(物思いか……? いや、揺さぶられてやがんな、これは。……まあ、ちょっかいかける好機は逃さないか。堕としたいんだし)

流石は糞親父。鼻も利くねえ……。ま、獄の王の右腕の腹心、なんてものやってるんだしな。当然、っちゃあ当然。

さて、どうしようか。

俺が神父だったり、良心に満ち満ちていたなら、(はら)い落してやるのが筋――なんだが。いかんせん、俺様も悪党の(たぐい)。頼まれもしない世話を焼いてやる義理は無い。
意味もなく親父と喧嘩(けんか)してもしゃあねえしな。おまけに、作りたいのは貸しであって、借りでないとくる。

ふと、腕輪が勝手に輝きだした。

(……おい。これは、まさか――さあ、お前の出番だぞ!! ってか?! ふざけ――)

『持ち主探しの手は抜くなよ? 面倒臭ーから、と言って家主殿に投げる真似(まね)をしたら――処刑だ』

なぜか、こんなタイミングで、糞親父の釘が脳裏で再現される。

(…………あっちゃあ……! どうあっても、関わるしかねえ、ってことか……。て、ことは――だ)

「……なあ、あんた。奇妙な鬼火に心当たりはないか?」

「……いいや? 生憎(あいにく)と、(げん)(かつ)いだりする方では――」

「でもよ、長いんだろ? 戦場で生を(あがな)うようになって、さ」

「短い、とも言わないが……」

「だったら、出会ったことが有るはずだ。人魂。そう呼ぶしかない燐火(りんか)に」

「…………」

何が言いたいのか、と視線で聞いてくる。同時に、不吉な予感にも駆られているらしい。
見続けていたかった夢が()めていく、認めたくない現実が(おお)(かぶ)さって来る――そんな絶望が()けていた。

間違っちゃあいねえよ? その予感は。この夢から(・・・)今醒めたなら(・・・・・・)、真っ逆さまだ。人間で居られる保証すら、無くなるだろうよ。

けど、まあ、慌てる乞食(こじき)(もら)いが少ない、ってな。

俺は糞親父からも(さじ)を投げられたくらい、どうしようもない元悪党だが、それでも、どうしようもないほど非人情な人間、ってわけでもねえんだよ。

「俺が言いたいのは、死体の上に現れる、まっとうな人魂――鬼火のことじゃない。神経がイカれがちな戦場で蔓延(はびこ)る風説……、要は、幻覚みたいなものの方」

ようやく、納得したように笑った。

「随分、戦場にお(くわ)しいらしい」

一応、口はへの字に曲げておいた。生臭(なまぐさ)坊主、って皮肉られたしな。糞親父の告げ口――って線もあるが、(かぶ)れる猫は被れるうちに被っておこう。俺様を(ひろ)ってくださった、お優しいお嬢様の手前(てまえ)もあるし?

「……別に。生臭な坊主でも、年季を重ねりゃ応分に人を見るってだけさ。で? 最近、見るようになったんじゃないか? 火の気の無い場所を舞い踊る、生き物のような火の粉をさ」

「だとして?」

「だったら、幸運かもな。あんた」

「……幸運?」

婿(むこ)殿の声には咎める響きがあった。

戦場に舞い踊る火の粉はすべからく、人の――死者の魂である。そんな俗説が在るという。
(いわ)く、自分が死んだことを納得する為に、殺した人間の前を彷徨(さまよ)うのだとか。
死したなら、最早敵味方無し。坊主が好きそうな発想だが、戦場の仕来(しきた)りなのだそうだ。
それに反する、ねえ……。

「――おっと。不謹慎はお互い様だろう? 騎士様よ」

「貴殿と一緒にされたくは――」

おうおう、此処で婚姻を控えた娘の家に上がり込む魂胆を(ただ)そうってのか!?
そいつぁ、料簡(りょうけん)が狭いってもんだろう? だったら、俺様もちょーっと遠慮を捨てちゃうぜ?

「へえ? 国王に忠誠を(ちか)っていないくせにな?」

「――――」

婿殿は無表情で押し黙った。

「言動からするに、民草に入れ込んでいるタイプでもない、と。当然――宗教にも被れてないよな? それでも、騎士を名乗れるならば――女だ。現実に貴婦人かどうかはあんたが解ってりゃあいいだけの話だから、置いておく。つまり、あんたはこの世でたった一人の女を、誰よりも、何よりも大事に思っている男だ。そうだろ?」

「――――」

怖いくらいの無表情が目の前に在った。

うん、いい顔だ。けどな、俺をビビらすにゃあ、年季が足りねえよ。こちとら、〈世界〉を次元ごと崩壊させようという企みを成功寸前にまで持ち込んだ、筋金入りの(ごく)悪党だぜ?
俺のことを息子とも知らなかった、人間だった糞親父様が気紛(きまぐ)れを起こさなけりゃよ、とっくにエーテルの一滴に還元されていた身だけども。おかげ様で、余生は性根の叩き直し旅まっしぐら(※やる気皆無)と来るもんだ。……泣ける。自分で突っ込んでおいて、泣ける!

余裕の笑顔を、満面で返してやる。

「だから、火の粉同然のちんけな鬼火は、あんたの視界にちらついてるんだぜ?」

「……それが、何だと――」

「幸運だ、と、言ったはずだ。ちんけな鬼火の正体――それは、戦乙女にも毛嫌いされる魔の(きざはし)。聞いたことが有るよな? 傭兵や殺し屋共が妙に有難(ありがた)がる、気紛れの権化(ごんげ)の風説を」

「……それが?」

お、知ってやがったか。しめしめ。これなら、余裕綽々(しゃくしゃく)で勝てそうだな。
極上の勝利の美酒は、どんな味かねえ……!

「あんたは見込まれた。犠牲の山羊(やぎ)として、その死が約束されていると、()ぎつけられたんだ」

「――おい」

ま、面白くない話だよな? 糞真面目に研鑽(けんさん)を重ねて来た騎士君としては、さ。

早合点(はやがてん)しなさんな。言ったはずだぜ? 階だと。ただし、それは(ひど)く偏屈でね。さっさと堕とせばいいものを、まだ迷ってる――違うか。うん、気が付くのを待ってるんだ。たった一つの好機を。あんたが、万に一つの幸運……凶運? ――いや、強運か。それを掴むに値するかどうか、見極めることが出来る、たった一度の機会を」

「……万に一つの、強運?」

「そうさ。あんたの死は仕組まれている。多分、一度や二度の撃退では利かないはず。何度襲われることになるのかは……解りようが無いが、その(ことごと)くを()退()けて、あんたの本懐――最愛の女と結ばれて、幸福な人生を送る、を遂げるんだぜ? それが強運でなくて、何だと言うんだ?」

「……成程、貴方はお人好しらしい。けれど――」

「人生は自分の足で、か。……見込まれるはずだねえ、あんた。どんぴしゃだ! 好みの(まと)を見事に射てやがる!! でもな、俺が言いたいのは、騎士道に背を向けて、悪の道に堕ちろ、ってことじゃない。気が付け、ってことさ。死と破壊と混沌とが縦横無尽に吹き荒れる戦場でこそ、奇跡の如く、燦然(さんぜん)と輝く意志の力。それは全てを(くつがえ)す。神々の思惑さえも、容赦なく灰燼(かいじん)に変えちまう。そんな奇跡のような気紛れは、ずっと待ってるのさ。あんたが、掌に在る超特大の当たりくじに気が付く瞬間を! ……勿論(もちろん)、タダとは行かない。けどな、ギブアンドテイクだ。対等の交換条件。それも、ちっとも無茶じゃない。あんたが飽きるぐらい長生きした後、人生が終わった後の時間をちょっとだけ、奴の予定に合わせりゃいい。地獄の住人としても悪名高い奴だが、気に入った奴に、悪い仕打ちはしないぜ?」

「…………」

よしよし、よしよし。いい方向に迷ってやがる! 俺の勘通りなら、あと一押しか二押しでイケる!! ……確かなら、だけども。

「性根が腐ってる奴じゃあ掴めない。世間知らずも好まないし、迷う奴なんて論外。そうだなあ……、有能だからこそ目障(めざわ)り――そんな悪運に付き纏われるくらいが丁度いい。例えば、凶器なぐらいの腕前のくせして、まっとうにしか生きられない武人、とかな?」

「私は、騎士だ!」

「……はあ? あんた、何処ぞの世間知らず様だったのかい? 言ったはずだぜ? あんたの死は仕組まれている、と。寿命ってのは定められるものであって、仕組まれるものじゃねえ。目には目、歯には歯、悪意には悪意で返報して、何が悪いってんだ。そもそも、だ。身分違いの恋が結実を許されるほどまっとうに生きて来た騎士を、どうして、地獄の王の(つか)いが見初めると思う? 知ってるからだぜ? あんたの(今現在の)死に(ざま)は、戦乙女にも救えない、ってな」

「…………」

おおう。泣き出しそうな(つら)なんかすんじゃねえよ! 野郎に(すが)りつかれるのは嫌いな方だしな、俺。
けどまあ、あと一押しだ。
このタイミングで泣けるのは――黒幕が元親友、とかいうオチかねえ? まあ、そっちはどうでもいいとして。欲が在る、って証拠でもあるな。自分が、自分の欲望に忠実になったなら何が起きるのか――何を犠牲にすることになるのか、解っている。だから、泣きたくなるんだ。
まあ、見物(みもの)だろうよ。綺麗事では済まされない騎士の道を、人間の生を、驚くほど綺麗に生きて来ただろう男が、初めて自分の欲を許す――厳重に絡んだ鎖を(ほど)き、ただ一匹の獣になる瞬間が来る、んだからな。
それも、ただ一人の女の為――彼女と連れ添い、最期まで遂げる道を掴む、ただそれだけの為に。

「いいのかよ? この世でただ一人の女。代えが利かないただ一つのもの。それが、何処ぞの馬の骨とも知れねえ、下種(げす)のものになっちまってよ。……ま、あんたは騎士だ。無理に下卑(げび)る必要はないのかもな。でもな、素直になっておいた方がいい、ってこともあるぜ? 結局、言えてねえんだろ? 婚約者に、愛してる、って」

「――――」

男はあからさまにむっとした。

けれど、決まった。あとは糞親父の奴がしくじらなきゃいいだけ。まあ、可愛げの無さが可愛がられる理由、ってタイプの玉だけれども。

「……悪かった。からかいが過ぎたのは詫びる。けど、忘れてくれるなよ? 火の粉は、いずれ、人魂と呼べる大きさにまで育つ。その時が――あんたの最期さ。そして、今はまだ、決められる。最期……それが明日なのか、百年後なのか。選び取る権利は、あんたの掌に残されているのさ」

「…………どうしろ、と……」

「思い描け。お前が、この世の全てと引き換えにしても後悔しないものを。それをお前の胸に、何よりも強く思い描け。それだけで十分さ。……、――あ。あとは、美味い飯と酒が在れば万々歳(ばんばんざい)かな。ああ見えて、食い意地が張ってるからよ」

『おい!』

当然の突っ込み――牽制兼警告、を無視した。

「婚礼の晩餐(ばんさん)……なんて、丁度いいかもな。領主の跡取り娘が伴侶を迎えるんだ。極上の御馳走(ごちそう)が無礼講付きで出て来るよな? 魔といえど、悪さをしなきゃ見逃してやる。そんな気前の良さが許される、特別な機会が」

婚約者殿は突然、立ち上がって。

「何を言っているのか、さっぱり、解らない!」

返事も待たずに、背を向けた。

「……ま、世迷言(よまいごと)さ。いいぜ、忘れてくれよ!」

「頼まれなくとも、そうさせて頂く!」

さっさと、浴場から出て行ってしまった。しっかり、糞親父を頭に乗せたまま。

 『……覚えとけよ。俺様を喰い意地汚い扱いした罪は――重い!!

去り際の泣き言なんて、それこそ、鼻で笑い飛ばして終わり、だった。

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登場人物紹介

お初にお目に掛かり申す!!

吾輩、ゴロリと申す猫である!

故あって、この短編集の人物紹介を担当いたす。

公開に応じて、登場人物が随時追加されていく予定であるので、よろしく付き合い願いたい!

まずは、プロローグだな。


●それ:

…………いいのか? いきなりこれで……。

ま、まあ、一応、神様で……オス、だそうだ。

名前で呼ばれることは滅多になく、通称や肩書き呼びが普通……か。

けったいなことだ。……何?

次の人物が旅立つことになる世界の神様ではないから、なおさらに名前は出てこない?


……うーむ……。

妙な仕事を請け負ってしまったか……。


次だ。


●いい年をした精悍な男:

…………いいのか? ……ん? 作者都合で秘密、出て来ても偽名だけ……?

…………。

……ま、まあ、次だ。

なになに? いい歳をしたマッチョで、魔法じみた能力を持ち、数奇な人生を歩いて来た……と。

日頃蓄積しているストレスの発散を求めて、神の御座所に押しかけて来た、黙っていれば男前……。


……うーむ……。

請け負ったことを後悔しなければいいが……。


気を取り直して。

盟約の魔、第1話だ。


●第三の眼を持つ異相の男:

名前は……また、秘密か。明かすのは別のタイミングで! とのことだが……。

何時になるのか、何時にするのか。……考えてない、ではないことを祈ろう。

魔族、男性、歴戦の勇士。神との契約――盟約に従って、世界の外側に送り込まれた。

以来、ずっと戦い続けている。


難儀な身の上のようだな。吾輩が同情したところで、何も役には立たないが……ま、よかろう。


では、次。


●割り込んだ者の正体:

……諦めた方がいいのか……? いや、請け負った以上、仕事は全うする所存だが。

……さて。


神。何? プロローグの「それ」と同一の存在!? 

……神様繋がりで仕事……頼まれ事を請け負って、世界の外側に降臨した――か。

ふむ、世界の外側とやらが気になるが……人物紹介でそこは説明できないか。残念だ。


今回は此処までのようだな。しかし……

大丈夫なんだろうな、この仕事……。


……ふう。

盟約の魔、第2話だ。


●魔族の青年:

第1話の男の若かりし日、だな。共通点は額に第三の眼が在ること。

神の呼子と出会ってしまったことからしても、難儀さは若い頃から、ということらしい。

あまりうまくいっていない親子仲を気にしている。

正式な名前が登場すれば、初めてのまともな仕事になったのになあ……。


次。


●煤けた大男:

…………またか。

プロローグに登場した偉丈夫だな。憂さ晴らしに出たはずだが、妙なことになっているようだ。

基本的な設定自体は、プロローグと変わらないらしい。おっと、種族は人間か。


さて、次。


●珍妙な生き物:

…………。これは……ん? 妙なメモが……?


”このキャラクターは、作者の別のシリーズでウェイトのあるポジションに位置している為、

原則秘密――明かせません!! 詳細に関しましては作中に出て来る情報だけでご勘弁を!

友情出演Aです”


……友情出演A……とな? 何故、出した……。



今日は……ここまでのようだな。寝よう。眩暈がする……気がする……。


……第三話(前編)か。


ん? んん? 新規の登場人物は、無し??

……珍しいこともあるものだな……。

ま、よかろう。――む。メモが挟まれているではないか! どれどれ……


◎鋼玉(はがねだま)について。

一応、異世界の鉱物という設定ですが、名前から類推可能な通り、鋼玉(こうぎょく)……コランダムが元ネタとなっています。

中でも、宝石質(最悪でも、研磨すれば宝飾として価値がつく品質)のものには別の名称がありまして、赤色系がルビー、それ以外がサファイアです。

作中では、紅玉(こうぎょく)……ルビー 蒼玉(そうぎょく)……サファイア ですね。

紅玉には火の力が、蒼玉には氷の力が秘められている、という設定です。

尚、作中の世界においては、蒼玉を名乗れるのは青色系のものだけで、それ以外の色彩は鋼玉で一まとめにされ、原則、特別な名称は持ちません。


…………。

まあいい。明日を待つことにするか……寝る。


第三話(後編)。

……ふむ。またもや、新規の登場人物は無し、と。

ま、退屈もまた良かろうよ。……ふわーあ……。


………………


………………


……………………はて? 何かを忘れている気が……?


む!? この気配――まさか、飼い主か?! もう、戻って来た……!?

い、いかん! この副業を知られるわけには――!!


……(ドタドタ)……


昨日は危なかった……! 

今日は大丈夫。玄関にもきちんと鍵が掛かってるからな! 帰ってくれば、解る。

では、第4話(前編)だ。


●母:

……突っ込んでいいと思う。誰の母だ、と。

……魔族の青年の……、ならば、彼女も魔族だな。

ふむ。若過ぎた女……? 

彼女自身不遇な生い立ちの持ち主で、中々心を開ける大人に出会えなかった……。

母になるには若過ぎた、ということか? 息子である青年とはあまり上手くいっていない、とは。


●勇者:

……まあ、格好いい名前が出て来るが……。何? 義理の父!?

伝説の勇者で、魔王を討ち滅ぼして世界に平和をもたらしたが……。

難儀な男、というのは解ったが……義理の父……。うーむ……。


●仲の悪い仲間の一人:

村人A……しか、無いのか? つまり、モブAか。……ま、よかろ


●村長:

むらおさ。そう読んで欲しいようだな。……ふむ。

まだ、年若く、長の立場が重荷になることもある男。

出来過ぎた父、先代族長とその親友に引け目を持っていて、拗ねていた。

魔族の青年とはやや感情的な確執がある。


●年下の仲間:

青年とは比較的仲が良い、村人B。若さと実力の低さからいじめられる側になりがち。


●妹:

……この作者は……。……ん? エメル=ミディア。……あるのか、名前……。

はっ! は、初めての、まともな人物名!? そ、そんな馬鹿な……!! ――はっ、吾輩が毒されてどうする!


……こほん。


魔族の青年の妹。若さゆえの天真爛漫さの持ち主。芯も意外としっかりしている。

母の生まれ故郷に来たことと、腹違いの兄が居ることに期待を覚えている。


……(きょろきょろ)……。

よし、誰もいないな……!

第4話(後編)である。


ん?

……………………。


……新規登場人物は、無し……!?


くっ……! 飼い主の目を盗む苦労が、水泡に帰そうとは……!!

愚痴にしても仕方がないが、この悔しさはいかんともしがたい……。

――む!


…………


……行ったか……! 

いかんな。このままでは、バレる。吾輩の副業が、バレてしまう……!

悪い人物ではないのだが、表に出して良いものか、困惑してしまう部分もあるし……。


…………


……ええい! 吾輩を探しておるな!? 手慰みに可愛がるつもりだろうが……!

この部屋も危険になって来た、そういうことだな。

然らば、御免!!


……ZZZ…… ……ZZZ……


ゴロリは縁側でのんびり眠っている。


第5話(前編)も仕事なくて、暇を持て余したらしい。


ゴロリは縁側でのんびり眠っている。


……ZZZ…… ……ZZZ……



(そろり、そろりと忍び寄る、縦ロールが一人……)


第5話(中編)である。


……またか、新規登場人物なし……。

楽な仕事でいいのか、退屈な仕事で悪いのか……、やれやれだ。


今回は中編か……。流石に、3話、4話と前後編が続いたから、芸がないと思ったのか?

……ん? 吾輩か? 無いぞ、芸などというものはな。

人間が身に着けるものを、猫が身に着けてどうする。

そもそも、餌で釣らねば仕込めないものが大半なのだろう?

無理矢理覚えたところで、何の役に立つのやら……。


――む! そういえば……飼い主が一時期、やたらと吾輩に妙な事をさせたがっていたが……。

もしや、そういうこと……なのか?! 碌でもないことばかり考える飼い主め……!

まあ、だからこそ、この副業のことも秘密せねばならんのだがな。


とりあえず、明日こそは仕事が在ることを願っておこうか。


第5話(後編)だ。


…………。



…………またか。こんなに新規の登場人物無しで、大丈夫なのか?

いや、仕事が無いことを……いや、愚痴っているな。諦めよう。

吾輩は往生際の悪い飼い主ではないのだから……。


――む!


噂をすれば影が差す、とはな。此処で飼い主に掴まるわけにはいかぬ。

大人しく、退散するとしよう。


……おかしいわね。此処にもゴロリが居ないわ……。


(縦ロールがこれだけ&作者に絵心無しにつき、このアイコンを採用しました(汗))


最近、妙に私を避けている気がするのだけれど……、可愛がり過ぎたのかしら?

元々野良猫で、芸を仕込もうと試している内に家猫になってしまった子ですから、

中々懐いては貰えないのですけれど。……気になりますわね。


爺(じい)は何か知っているようですけれど、はぐらかすばかりですし……。


……あら? 私のノートPC……電源は切っておいたはず……。


……はあ、はあ……、く、苦労したぞ……。

飼い主め、今日に限っては妙にしつこい……!


さて、仕事だ……!


……………………またか。ま・た・か!!



くううっ、吾輩が、どれだけ苦労して――、む!! この気配の近さ……逃げねば!!


……ま、またもや逃げられましたわ……!

ゴロリ、我が家の飼い猫ながら、やりますわね……!!


…………また、ですわね。…………第6話……?


まさか、ゴロリに読書などという趣味が……?

いえ、芸というべきかしら? 仕込んだ覚えなどありませんが……。


まあ、爺に聞いてみるとしましょう。

猫の読書は芸と呼ぶべきなのかどうか、を。


あけまして、おめでとうござりまする!

新年の初仕事は……鋼玉(はがねだま)の腕輪 第1話だな。

さて、あまり期待せずに行くとしようか。


●糞親父:

……やはりな。この作者は……。一応、最速の登場タイミングから抜粋しているようだが……。

まあいい。”友情出演A”だそうだ。初登場時と変わらない、ということだな。


さて、次だ。


●俺:

…………。

(負けだ……気にしたら、負けだ……! そうに違いない……!!)

はっ……、うむ、盟約の魔から引き続き登場している偉丈夫のようだな。

妙な状況に陥っているようだが……。憂さ晴らしが出来るといいな。



●花嫁さん:

…………これか。純然たる新規の登場人物だろうに……。

名前が出てくることを願おう。

我が飼い主も、何時か、こう呼べる日が来るといいのだがなあ……。



――む。性懲りもなく吾輩を探し回っているようだな……。

可笑しなことになる前に、去るとしよう。


……また、逃げられましたか……。

折角、鰹節ご飯を用意しましたのに。薄情な猫ですわね……。


――と。いけない。伝言を頼まれてましたっけ。

代読させて頂きますわね。


”第二編、鋼玉の腕輪より先は、新規の登場人物が無い場合、基本、当コーナーは割愛となります。”


ですって。


……ネタ切れを体よく言い換えたような文章、のような感もしますけれど……。

ま、よろしいでしょう。



……あら? もしかして、ですけれど。この伝言……ゴロリの隠し事と何か関係が……?




――んもう! 私には大声を出すなと叱りますのに、

どうして、私を呼びつける時は大きな声を出すのかしらね、ばあやは。

え? お誘いの電話……!? 誰――ええっ?! あいつからって――!!

今日は雨? 雪?? 槍――いや、隕石の直撃が在るのかしら!? こ、こうしてはいられません――!!


……(ドタドタドタドタ)……

蒼玉編 第2話だ。


……飼い主がやけにそわついて家を出たようだが……、まあ、吾輩には関係ないことだ。

仕事、仕事。と。


●私:

第1話の花嫁さん。エリアルド=リングルード。跡取り娘。

戦争に出征し、音信が乏しくなった婚約者と、親が周囲に押し切られて用意してきた許嫁の間で悩んでいる。

心は婚約者に在るが、家や領地の事情まで考えると……、という板挟み。

或る日、気分転換に出て、行き倒れに遭遇した。


……何故だ……。何故、此処までまともな設定が一番最初に出てこないんだ……。

……ふう。次!


●大柄な男:

第1話の俺。…………。

……ふむ。視点が異なるから、ということか? 追加情報も無いようだし……。


次。


●料理番:

館に住み込む料理担当の家人。職人気質で、筋肉質な体つき。


●ばあや:

エリアルド嬢の面倒を見て来た老婦人。家族よりも近しい部分がある。モブ。


●両親:

エリアルド嬢の両親。領主と領主婦人。人の上に立つ立場だからこそ、板挟みになる。モブ。


●いけ好かないちょび髭:

エリアルド嬢の両親が周囲に押し付けられた許嫁。当人も縁談にはあまり乗り気ではないが、断る理由もない。

見た目はナイスミドル。資産家。モブ


……妙に、モブが多いな。次!


●あの人:

エリアルド嬢の婚約者。戦争に出征し、個人的な音信が掴めなくなったはずの人物。

グルンガルドは姓。

精悍な青年で、物腰は穏やかだが、誰も喧嘩を売りにいかない。


蒼玉編 第3話だ。


……ん? 


●オライオン=グルンガルド:

第2話のあの人。


……ただの補足か。待たせるようなネタだったのか……? ま、よかろう。

短くとも、仕事は仕事。


さて、今日はどのあたりでひなたぼっこと行こうかな……?


蒼玉編 第5話である!


どれ……。


●執事長:

エリアルド嬢の両親に仕えている初老の男性。モブ。


ふむ。我が飼い主の爺や殿のような立場の人物かな……? 苦労が多そうな気がするな。

さて、次。


●年下の叔父御:

……好きだな、この手の言い方が。作者の趣味なのか??

さてさて。


……友情出演Bにつき、詳細は秘密、とな!?

まあ、叔父というからには、身内ではあるのだろうがな……。

ま、よかろ。


……ふう。

なんでだろうな。大した仕事をしているわけではないのだが……、どうも、ため息をつきたくなるというか。


さて、今日は屋根の上でひなたぼっこと行くかな。

飼い主に邪魔されない、貴重な場所だしな。


一日間をおいて、紅玉編とな。

緩急をつけてみようという腹か? どんな意味があるかは解からないが……。

さて、第1話だ。


●俺:

一応、主人公か……? 蒼玉編から続投している、と。

新しい設定も無いようだな。


次。


●珍妙な生き物:

…………。

…………はて? 何処ぞで見た気がするが……、…………”友情出演C”!?

ということは、別人(?)、ということだな。

ここで述べられる情報は無し、と。…………。


……次!


●宿の親父:

善良な人柄の持ち主。モブ。


以上だな。……ふう。やれやれだ。何をしたわけでもないが、やれやれだ。

そうだな……今日は、台所に行こう。何か美味しいおすそ分けでも期待したい気分だ……。


さて、紅玉編 第2話。


●私(村娘):

村の若い者組の一人。初恋が突然やって来た少女。


……きちんとした名前を用意すればいいのだろうに……。次。


●家主の親父:

村娘の父親。モブ。


今日はこんな所か。さて、往生際の悪い飼い主が来る前に逃げるとしよう。


紅玉編 第3話である!


●化け物:

……うん、まあ、名称に関しては諦めるとしよう。

なになに?

契約によってこき使われてはいるが、花も実も兼ね備えた大物。

けれど、上には上がいた……。

詳細は、読め、ということだな。……吾輩が人間の読み物を読んでどうする!!


次。


●ろくでなし共:

モブ。


次!


●超大物:

……解ってはいても、なあ……。ふう。

…………友情出演D、とな?

見た感じ、中々の苦労人にも思えるが……。

まあ、同情しても仕方あるまいな。


ふむ。此処までだな。

では、じいや殿のおやつを相伴しに行くとするか。


紅玉編 第4話だ!

順調な仕事で何よりだな。

さて。


●長らしい人間:

村長。モブ。


●後ろの子:

……だから、この作者は……。ふう。

魔族の少年。外見年齢は十代前半だが……。

どう足掻いても、自分を縛り上げた人間の男に勝てなかった。


●村人A:

モブ。


今日はこれで終わりだな。では……たまには昼寝でもしていくか。

証拠隠滅、完了! と。さて、何処がいいかな? ベッドの下などは定番だが……。


紅玉編 第5話だな。


●妹ちゃん:

ふむ。『盟約の魔』で登場した女の子だな。

追加事項も無し、と。


次だ。


●村長である色男:

これも、『盟約の魔』で登場済み、と。

……名前ぐらい考えてやればいいだろうに……。


む! 何気に初の皆勤か?! 今の所、休暇が無かったとは! めでたい。

……これで、もう少しまともな仕事だったら、飯も美味かろうになあ……。


華燭の因縁 第一話、だな。

ふむ。この話が最後のエピソードになるのか……。

では、紹介といこう。


●私:

…………。

呆れるよりも前に仕事だ。

10代の少女。生贄になることを志願した。


……なんだ? 妙に重い設定だな。吾輩の飼い主とは違い過ぎる……。


次。


●竜:

…………。

……いや、まあ、何と言うかだな。紹介してよかったのか? 人物ではないのだが。

全長10mを超える体躯、赤黒く輝く鱗、濁った金色の瞳……本編でやるべき描写では……?

ん……?


●屈強な若者:

……なるほど? 何がしかの因果がある、と。話を読み進めれば解るということか??


次。


●村長:

ふむ。少女の父親か。村の過去や立地から苦しい立場に居る人物。

……ん? この設定はひょっとして……?

此処で語るのはよそう。読めば察せる類のものだからな。


●婿:

…………。

まあいい。此処はバラしてしまおう。屈強な若者のことだな。

まあ、立場を変えれば見方も変わるか……。


次!


●男:

…………だから。――いや、我慢だ! 吾輩!! あと少し。あと少し――!


こほん。


やや不遇な生い立ちの魔族の青年。愛されなかったわけではないが、一目を置かれたかった。

子供時代の背伸びを拗らせて、力を奉じ、力に酔うろくでなしになってしまった。


……割と具体的な設定があるのに……名前は……?


……次。


●弟を自称する男:

魔族。異様な能力の持ち主。ピンとくる人はピンとくるかも――知れない。


……それだけか? 他に、読み上げられる設定は無いのか……?


…………はあ。数はこなせたようだが……。

始まるまでは、もう少しまともな仕事だとばかり思っていたがなあ……。

それでも、マシか。飼い主に構われるよりは……はあ。


今日は……interlude……幕間とな?

ほうほう。殊勝そうな響きだが……さて。


●メリア:

女性。元魔術師の賢者。無鉄砲な所がある幼馴染に思いを寄せていた。


…………。

…………な、何があった?! 作者はついに、悪い物でも食したのか!?

――あ。……いや、まあ……こほん!


次、次だ!


●ライド:

男性。力尽きた勇者。勇敢ではあるが、情の強い部分が在り、視野が狭くなりがちだった。

恋愛感情には鈍い方。


……じーん……。まともだ……。なんて、まともな仕事なんだ……!!

しかし。……妙に沈んだ雰囲気を感じさせる設定だな……。


次!


●ラセル:

男性。神官。上記二人の幼馴染。メリアに淡い想いを抱いている。


…………。

これが……幕間……。こんなにまともな仕事が……脇道、なのか……。


……次。


●俺:

来たか。ついに……。まあ、よかろ。今日は気分がいいしな。うん。


男性。剣士。パーティリーダー。暴走する気配を見せていた勇者を討った人物。


重い話、のようだな。

ふむ、次で最後か。


●竜:

巨大な体躯を誇る赤竜。雄。勇者一行に力を貸したが、快く思ってはいない。


……はあ。次回もこんな風にいってもらいたいものだな……。

期待するべきか……いや、諦めの予防線を張っておくか。

ん? 付箋付き……?

”勇者様御一行は、この幕間だけの登場人物です。悪しからず”

……何が悪しからずなんだ??


華燭の因縁 第二話だな。


●父様:

……誰のだ。

ん? 少年の呟きから取ったか……。関係性はすぐに解ったがな……。

まあいい。人間ではない存在、だそうだ。


次。


●少年:

……慣れて来たなあ、吾輩も。それでも、突っ込みたい衝動が消えないがな。

人と人ならざるものとの混血。片親の正体が何なのか――は、読んでくれ、ということだろうな。

健やかに育って欲しいものだが……間違っても、吾輩の飼い主のようにはならないでくれよ。


次。


●彼女:

…………。

……ええと、だな。彼氏と同年代の少女。彼氏の秘密を知って、受け入れたが……。

ふむ。何やら、因果な物がありそうな感じだが。


……はあ。良い仕事が出来たと思えたのは一日しか続かなかったなあ……。

ま、期待とは違っても仕事は仕事。そして、終わりは何時かは来るものだ。

それまで、気長に待つのも一興だろうよ……。昼寝に行くか。


エピローグ……そうか、これで最後なのだな。

名残惜しい……という気分にはならんか。まあいい。仕事だ。


●俺様:

…………、……ん? ”友情出演A”?

ならば、これ以上紹介できる情報はないな。


次。


●神様:

プロローグにも登場した神様。


次。


●主君:

『俺様』の上役。友情出演E。


以上。


年末から始まった付き合いも此処まで。

なんともけったいな仕事になってしまったが……無事、完遂できたことを喜んでおこう。

吾輩にまたがあるかどうかは判らないが――折が在れば、になるのだろうな。

此処まで付き合ってくださって、本当にありがとう!

作者に代わって――、――む!? この気配は……まさか、飼い主か?!

いかん! この副業を知られるわけには――!!


ええい、名残ぐらい感傷的に味わわせればいいものを……!

吾輩はこれにて去る! さらばだ、皆の衆! 是非、この作品を楽しんでくれ!!

それでいい。それだけで十分だ。では――!


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