紅玉編◆第4話
文字数 2,931文字
「おう」
「これは――!」
(御注進、か)
案の定、貫禄十分な壮年が、何人もの屈強な村人を従えてやって来た。が、無視だ。俺には、関係ない。
「新たな問題が起きない限り、
「――――!!」
少女の顔が一瞬で固くなる。
ある程度は聞かされている……子供の頃に移り住んできたのかも、な。
「……どうしたら……」
「貴様、」
推測が当たっていたのか、会話に割り込む隙を
余計な
恩師らず、と
けれど、こいつらは
だから。
「
突然足元から生えた樹木に吹っ飛ばされ、長らしい男は目を白黒させた。
「あ、あの……!」
「覚悟を決めるんだな。此処が隠れ里である限り、過去に
長らしい男が
「馬鹿なことを! 麓に在るのは、ただの開拓地――!」
……いい加減、ぶっ飛ばすのも面倒臭え。
「だったら、尚のこと丁度いいじゃねえか。新天地を求めて、うっかり国境越えをやらかしちまったことにしとけよ。地図を知らない農民なんて、珍しかねえだろ。領土が広がることに嫌な顔をする領主――いや、為政者か? この場合は。そんな者は滅多にいないはずだぜ」
村人たちは
隠れ住み続けられれば
それが。
もう一度、目の上にたん
けどなあ、逃げられねえんだよ。
どうせ、選ぶしかないなら、信用ならない過去よりもは、信頼を作る所から始められる、新しい未来を選ぶべきだ。その為のカンフルとして、ろくでなし共は、此処に置いていく。
必要なことは言った。選ぶのは、俺じゃない。
ふと。
「……その、後ろの子は――?」
悪党共に見劣りしないほどきつく縛り上げられていた少年に、少女は気が付いた。
「……ああ、この糞餓鬼か? おイタをしやがったから、灸を――」
「魔族だ!!」
長らしい男を心配して駆け寄って来た村人Aが叫ぶ。
隠しておきたかった正体があっさりと
ちなみに、化け物を召喚してくれた張本人である。子供の姿に見えても、二百歳は超えているんだとか。さらには、力ある魔族は、自身の成長速度をある程度自由に制御できるものなんだとか。……餓鬼扱いにキレた当の本人が威張っていた。
そして、あの化け物とは正式な契約に基づく関係だったらしい。
おっさんに化け物を引き取らせた途端、自動的に逆召喚が始まって、糞餓鬼様は目を白黒させてやがったな。
化け物が、超大物の強制介入により契約不履行が成立、
ろくでもねえ使われ方だったが、恐らく、一族に伝わる
案の
割と難儀な糞餓鬼様だが、実は魔王を自称できる、中々に物騒な玉……らしい。
本気で暴れられたとしても、パーフェクトKOを確定させられるので、今一ピンと来ないんだよな。勿論、山賊に偽装した生国の兵士達を生贄に設定した本人でもある。
「こいつは流れ者さ。悪さはしないから、忘れてやれ。何なら、俺が責任以て、捨てて来るから」
むがー! と抗議されるが、知ったこっちゃない。
一週間後。山里から出発する日。
相変わらず、縛り上げられたままの糞餓鬼様を肩に乗せ、恩人の少女との別れを惜しんでいた。
「世話になった!」
少女の父親が、村長が、頭を下げて来る。
話はとんとん
そして。
石:糞親父様作
台座(腕輪):俺様作 の。例のアレである。
「あの、これ――本当に、私が
「衣食住の面倒見てもらったし、迷惑もかけたしな。その礼だよ。なんなら、適当に金に換えてくれていいから」
気を使わせないつもりだったのに、少女は何とも言えない困り顔で見つめ返してくる。
「……まあ、大事にしてくれてもいいぞ? 魔除けぐらいの役には立つだろうから」
魔除けの言葉を口にした途端、かさりと、
ちなみに、糞餓鬼様はふん縛られたまま、
少女が意を決したように見上げて来た。
「……出発されるんですよね?」
「まあな。風の召すまま、根無し草、さ」
世間話として話を合わせちゃあいるが、これからどうなるのかは、確信めいた予感がしていた。
俺の旅は、終わりだ。
「解りました。……
「おう。そうしてくれ」
別れの笑顔は、厄介払いが終わって
そして。