第3話

文字数 887文字

   ☆



「早くしないと校門が閉まりますわよ!」
「肛門が締まるッッッ?」
「この佐原メダカ! あんたのボーイズラブ変換されるポンコツののーみそを締めた方がいいらしいわね!」
「ひぃー!」
 ポリコレ棒のようなチョップが学園高等部の校門前でわたしの脳天に振り落とされる。
「痛いですぅ〜」
「痛いようにチョップしたのですから当然でしてよ!」
「この、阿呆のラズリぃ!」
「阿呆に阿呆と言われたくはありませんわ! 佐原メダカ!」
「コノコ姉さんに言いつけてやるぅ!」
 うろたえる高等部二年、風紀委員の金糸雀(かなりあ)ラズリちゃん。
「ちょっ、このバカ娘! コノコお姉さまに言いつけるですって! あなた、コノコお姉さまの家に住んでるからって調子に乗っていると容赦しませんわよっ」
「ひぃー! 金糸雀ラズリちゃんが怒ったぁ!」
「あったりまえですわぁー! トースト齧りながら登校してる時代錯誤の漫画娘ぇー!」
「漫画は悪くない!」
「この文脈で漫画は悪くないって紋切り型の言葉を間違った用法で言うとまたポリコレチョップをお見舞いしますわよ!」
「おっと、わりぃ、ここ通るぜー」
「あ。涙子さま! どうぞお通りくださいませ」
 するっと校門を通るのは、空美野涙子さん。
 涙子さんは、今日も目の下にクマが出来ていて、目つき悪く、ちょっと猫背ですたすた歩いていた。
 だが。
「ちょっと、ラズリちゃん〜! なんで涙子さんはよくてわたしはここを通れないのかなぁ?」
「涙子さまは凛々しいので、わたし的にグッドなのですわ!」
「はぁ?」
 凛々しくないし、それに。
「ズルいですぅ」
 そんなわたしたちのやりとりを無視して校内に入って消えていく涙子さん。
「涙子さまはおっけー。あなたはダメ。でも漫画みたいな展開だなんて言わないでくださいまし」
「あのねぇ、ラズリちゃん。漫画は古代の壁画にも描かれている重要な日本の文化で!」
「阿呆に付き合っているとこっちまで阿呆になりますわ! 風紀委員のわたしがダメと言ったらダメです!」
「えぇ〜」

 チャイムが鳴る。
 非情にもわたしは遅刻ということで教室の外で水を入れたバケツを持って立っていることになったのであった。



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