第14話

文字数 1,562文字

   ☆



 学園から出て駅前の市街地を歩くわたし。
 行き先はドラッグストアだ。
「坐薬坐薬坐薬坐薬〜。あっなるにぶっ挿すざっやくー」
 もうこれは坐薬しかないな、と思うのです。
 超強力な解熱剤だし、ラピスちゃんのお尻を責めちゃうのですよぉー!
 ヒャッハー!
 だがしかし!
 わたしにはさっそく障害が待っていたのでした!
 なんと、入ったドラッグストアには坐薬が置いてないのでしたぁ!
 渋々と、わたしは店員さんに紹介されるがまま、最新の総合感冒薬と解熱剤を買うことになったのでした。
 これがおすすめですよぉー、って言われ、はいはいと適当に相づちを打っていたら、いつの間にかレジに進んでいて、ラズリちゃんから渡されたお金を支払っていて、わたしの手には紙袋に入れられたお薬がどでーん、とあったというわけなのですよぉ。
 なんてことでしょうか。
 わたしはラピスちゃんのアナルヴァージンを奪う権利を剥奪されてしまったみたいじゃないですかぁ!
 ぷんすか!
 もうやけくそです。
 おつりでジュースをたらふく買ってやけ飲みしますぅ〜!
 と、そんなわけで、輸入雑貨店でルートビアを買って飲むわたし。
 六本セットを買いましたが、こんなの一瞬で飲み尽くします。
 ええ、飲み尽くしますとも!
 緑地帯のベンチに座って飲むわたし。
「さて、ラピスちゃんの家は、波止場の近くですねぇ。親と別居して、ラズリちゃんとラピスちゃんの二人住まい。家には寝込んでいるラピスちゃんがひとり。んん? もしかしてこれはワンモアチャンス! ありますよぉー! おおありですよー! ラピスちゃんの身体を奪っちゃいましょう、そうしましょうッッッ!」
 勇み足で緑地帯を出て波止場に向かうわたし、佐原メダカ。
 だが、ちょっと、立ち止まる。
「アーケード街にある古本屋に、寄ってから行きましょう」
 そう、わたしはウェブ作家という顔を持っているのです。
 わたしはウェブ作家・成瀬川るるせ。
 掘り出し物のチェックを怠ってはならないのですよっ!

 アーケード街に到着すると、古本屋の自動ドアの前に立つわたし。
 古ぼけた自動ドアがうぃーん、と機械音を出しながら開くと、吸い込まれるようにわたしは店内に入るのでした。
 ボーイズラブコーナーを物色すると、ウェブでは何故か売っていない、ジュネー全集という箱入りのハードカバー本が入荷されているのを確認したのだった!
「こ、これは欲しかった奴だぁ……」
 恐る恐る手に取るわたし。
 ですが、同時に手を伸ばすひとが横にいて、わたしの手とその女性の手が触れたのです。
 思わず手を引っ込めるわたしと、隣で手を伸ばしていた女性。
 横にいたその女性をわたしは見る。
「ふぅむ。空美野学園の子ですね」
「あら。あなたもジュネー全集が欲しいの?」
「あなたもそうなのですか」
 気が合うかな、と思ったのだけど、その子は、わたしを睨め付けてきた。
 うっ、その目が怖い。
「わたしは近江キアラ。〈サブスタンス・フェティッシュ〉能力者として、一流なのよ」
「さぶすたん……、えーっと、なんです、それ?」
 はぁ、と息を吐く近江キアラちゃんというその女生徒。
「物理攻撃を扱える能力を〈サブスタンス・フェティッシュ〉と呼ぶのでしょうが。あなた、素人の方? 制服を見ると学園の者らしいから言ってみたのだけれども」
「具体的にはどんな能力をお持ちで」
「それは、ね」
 近江キアラちゃんがニヤリ、と笑うと。
 本棚の本が爆発して、誘爆するかのように、棚の本が次々に爆発しだした。
 爆風に吹き飛ばされるわたし。
「ふん! 知っていてよ、あなた、佐原メダカでしょう? あの風紀委員のホープ、金糸雀ラズリの仲間の」
 爆風で倒れているなか、キアラちゃんは、腰に手を当てたポーズを取りながら、そう言った。
 ど、どういうことなのですかぁ?



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