第13話

文字数 1,604文字

   ☆



 午後の授業が始まる前、お昼休みが終わる頃、ふらふらの疲れた顔を隠せないままの金糸雀ラズリちゃんが、わたしとコノコ姉さんが喋っていたところにやってきたのでした。
「おはようございます……、コノコお姉さま。本日も麗しいお姿で……」
「おはようなのだ、ラズリちゃん。そう言うラズリちゃんはくたくたになっているのだ。わたしにお世辞言ってるヒマがあるなら、休むのだ。保健室にでも行った方がいいのだ」
 ため息を吐くラズリちゃん。
「お世辞じゃありませんわ。お姉さまはお美しい……、って、そう言う話ではなく。風紀委員総出で犬殺しの犯人探しをしていますの。生徒会が主導して。異能力痕跡を残してないから、跡を探ることも出来ません。プロの手口ですわ」
「うーん、外部の人間の犯行ではないのだ? もしくは、高等部ではない、学園の誰か」
「皆目見当もつかないのです。学園としては、警察を介入させる前に、学園の者の犯行ではない、という証拠を掴みたいのです」
 わたしには話が掴めない。
「どういうことですぅ?」
 と、わたし。
「阿呆は今日も本当に阿呆ですわね。学園をマイナスアピールすると厄介なのです。マスメディアを封殺することは出来るしソーシャルネットワーキングもどうにか出来る、としても、この街が〈ディスオーダー〉の研究を行っていることだけは秘匿されねばならないのです。禍根は断つべきだと、学園は思っているでしょう。それに、異能が開示されたら、大変なのですわ」
「え? なんでですかぁ」
「この国は先の大戦で敗戦国となりました。実はその時点から、この国は戦勝国から実験国家とされたのです。この空美野市のことなんて、どこにでもあるような事柄というのはそういうことですわ。この国は戦勝国からしたら悪魔の国で、だから敗戦したし、この敗戦国の国民なんて人間ではなく、すべて戦勝国が神の国に至るための踏み台、モルモットにしか過ぎない、と考えているのですわ」
「わたしたちはモルモットなのですか……」
「ゴホン。話が逸れましたが、人権無視でディスオーダー能力を開発され、これから異能力者として〈出荷〉されていく我々のことは秘匿されねばならない。〈犬神博士〉の術式も、知る人ぞ知る有名な占筮(せんぜい)ですから、尻尾を掴まれるわけにはいかないのですわ。この学園で処理出来るのならば、処理されねばならない。学園の教員は外部犯行の場合を考えて動いておりますの。生徒は、自らの自治のため、学園内犯行の場合を考えて動いておりますの。繰り返しますが学園としては、警察を介入させる前に、学園の者の犯行ではない、という証拠を掴みたいのです」
「それで駆り出されてやつれているのですか〜。ラズリちゃん、大変だぁ」
「で。この阿呆、佐原メダカにもミッションですわ」
「は? わたしになんなんですかぁ?」
「うちの妹のラピスが熱を出して寝込んでおりますの。テレビゲームを朝までやっているような、あの愚妹も阿呆ですから、風邪を引きますのよ。ふぅ。あの阿呆のラピスの面倒を、佐原メダカ、あなたに頼みますわ。具体的には、ドラッグストアで総合感冒薬と解熱剤を買って、ラピスのもとへ届けて頂戴」
「なんでわたしなのですかぁ。面倒くさい」
「バカは風邪を引かないって言うじゃなりませんこと? 佐原メダカなら、熱を出して寝込んでるところに届けに行っても、どうせ風邪を移されるはずがありませんわ」
「えぇー」
「頼みましたわ」
「わかった。お尻の穴にぶっ挿す坐薬(ざやく)を買って、ラピスちゃんのアナルヴァージンを奪えばいいのですねっ!」
「あなた、ぶっ殺すわよッッッ」
「ひぃ! うそですよぉ〜」
「では、コノコお姉さまは、お姉さまのディスオーダーでわたしたちの手伝いを、放課後に依頼いたしますわ」
「わかったのだ」
「はぁ〜い」

 と、いうことで、放課後は、ラズリちゃんの妹である金糸雀ラピスちゃんのおうちへ行くことになったわたしなのでした!



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