第30話 サヨⅡ
文字数 1,255文字
『サヨに会わせる』
年が明けて、融からそんな電話が入って来た。由瑞は酷く驚いた。
サヨが実在するのだ。
サヨは融の従妹だそうだ。
これは一体どういうことなのか。
自分は運命などは信じないと思っていたのだが・・・これはちょっと考え直さなくてはならないのかも知れない。
にわかには信じられない出来事だった。
「サヨは俺の従妹だ。俺も驚いたのだが・・・。サヨは・・・小夜子と言うのだが、もうずっと意識不明で眠っている状態なのだ。だからもしかしたら史有君に会えば何か変化が現れるかも知れない。だから一度会ってくれないか」
融はそう言った。
由瑞はピンときた。
そうか。これが核だ。その小夜子が。その従妹とやらが。だから、彼はあれ程俺達を警戒していたのだ。
という事は・・・樹もそれを知っていたのだ。赤津には寝たきりの従妹がいる事を。だから彼女は史有にどれだけ脅かされても彼の情報を教えなかったのだ。
「どの位眠っているのですか?」
由瑞は聞いた。
「もう6年になる」
融は答えた。
「丁度、史有君がその奇妙な男に出会った頃だな」
彼はそう付け加えた。
「史有君がその男に出会ったのは?何月頃なの?」
融が言った。
「それは秋・・9月か10月です。」
由瑞は大満月の夜、庭先で揺れる萩の紫を思い出しながらそう言った。
「ああ‥成程」
融はそう答えた。
「それでこの事は樹には黙っていて欲しいのだ」
「えっ?」
由瑞は驚いた。
「佐伯さんと樹は同じ職場だから、話をする事もあるだろう?史有君が小夜子に会うことになったという事を樹には黙っていてくれ」
「それは、そうおっしゃるなら勿論そうしますが・・」
暫く間を置いて由瑞は言った。
「要らぬお節介で申し訳ないが・・・・赤津さん。彼女を関わらせたくない。余計な心配は掛けたくない。その気持ちはよく分かる。でも、あなたは彼女と付き合っているのでしょう?・・・彼女を枠外に置くのは・・・それは可能なのですか?」
嫌な事を言うな。この男。
融はそう思った。
「いや、勿論俺から説明をする。俺は・・彼女には不安を与えたくないんだ。だからって、全てを話せる訳じゃない。それに佐伯さんと俺の言う事が違っていたらおかしいだろう?」
融は答えた。
「・・分かりました」
由瑞は言った。
「有り難う御座います。では後日、日時をお知らせ致します」
融はそう言うと電話を切った。
あの男も厄介な何かを背負っている。
それはあの夏の終わりに偶然出会ったあの時の一瞥が物語っている。
一瞬で自分達の奥深く潜むモノを感知した。だが、彼には特別な何かを感じる事はない。彼はただの人間だ。異常に感覚が鋭いだけの人間だ。
では史有が6年前に山奥で出会ったその得体の知れない男は何者なのだ?
それこそが疑問だ。
「人の姿をしていたけれど、あれは人じゃない」
史有はそう言っていた。
そいつが探していたのが「サヨ」。赤津の従妹。
意識不明で眠っている赤津の身内。
そしてその男も赤津の同族だと史有は言う。
赤津の一族は一体何者なのだ。
これは早めに彼等について調べた方が良いかも知れない。
由瑞はそう思った。
年が明けて、融からそんな電話が入って来た。由瑞は酷く驚いた。
サヨが実在するのだ。
サヨは融の従妹だそうだ。
これは一体どういうことなのか。
自分は運命などは信じないと思っていたのだが・・・これはちょっと考え直さなくてはならないのかも知れない。
にわかには信じられない出来事だった。
「サヨは俺の従妹だ。俺も驚いたのだが・・・。サヨは・・・小夜子と言うのだが、もうずっと意識不明で眠っている状態なのだ。だからもしかしたら史有君に会えば何か変化が現れるかも知れない。だから一度会ってくれないか」
融はそう言った。
由瑞はピンときた。
そうか。これが核だ。その小夜子が。その従妹とやらが。だから、彼はあれ程俺達を警戒していたのだ。
という事は・・・樹もそれを知っていたのだ。赤津には寝たきりの従妹がいる事を。だから彼女は史有にどれだけ脅かされても彼の情報を教えなかったのだ。
「どの位眠っているのですか?」
由瑞は聞いた。
「もう6年になる」
融は答えた。
「丁度、史有君がその奇妙な男に出会った頃だな」
彼はそう付け加えた。
「史有君がその男に出会ったのは?何月頃なの?」
融が言った。
「それは秋・・9月か10月です。」
由瑞は大満月の夜、庭先で揺れる萩の紫を思い出しながらそう言った。
「ああ‥成程」
融はそう答えた。
「それでこの事は樹には黙っていて欲しいのだ」
「えっ?」
由瑞は驚いた。
「佐伯さんと樹は同じ職場だから、話をする事もあるだろう?史有君が小夜子に会うことになったという事を樹には黙っていてくれ」
「それは、そうおっしゃるなら勿論そうしますが・・」
暫く間を置いて由瑞は言った。
「要らぬお節介で申し訳ないが・・・・赤津さん。彼女を関わらせたくない。余計な心配は掛けたくない。その気持ちはよく分かる。でも、あなたは彼女と付き合っているのでしょう?・・・彼女を枠外に置くのは・・・それは可能なのですか?」
嫌な事を言うな。この男。
融はそう思った。
「いや、勿論俺から説明をする。俺は・・彼女には不安を与えたくないんだ。だからって、全てを話せる訳じゃない。それに佐伯さんと俺の言う事が違っていたらおかしいだろう?」
融は答えた。
「・・分かりました」
由瑞は言った。
「有り難う御座います。では後日、日時をお知らせ致します」
融はそう言うと電話を切った。
あの男も厄介な何かを背負っている。
それはあの夏の終わりに偶然出会ったあの時の一瞥が物語っている。
一瞬で自分達の奥深く潜むモノを感知した。だが、彼には特別な何かを感じる事はない。彼はただの人間だ。異常に感覚が鋭いだけの人間だ。
では史有が6年前に山奥で出会ったその得体の知れない男は何者なのだ?
それこそが疑問だ。
「人の姿をしていたけれど、あれは人じゃない」
史有はそう言っていた。
そいつが探していたのが「サヨ」。赤津の従妹。
意識不明で眠っている赤津の身内。
そしてその男も赤津の同族だと史有は言う。
赤津の一族は一体何者なのだ。
これは早めに彼等について調べた方が良いかも知れない。
由瑞はそう思った。