第29話 自由と銃

文字数 547文字



ついさっき見たぞ。
あのカナリアはお前が飼っていたのか。
何度も見たぞ。
この空を自由に飛んでたぞ。
でも今は・・・・・・
どこに行ったのやら。

悪いが、今はそれどころじゃないのはわかるだろ。
この国の未来のために。
子供たちの未来のために。
戦っているんだ。

会社の管理職として俺は。
一日中パソコンとにらめっこしてた・・・・・。
妻と子供は隣国に避難させた。

今思えば
もう少しだけ、家族と一緒の時間をつくれば良かった
もう少しだけ、会社のみんなに優しくしておけばよかった
もう少しだけ、話を聞いておけばよかった
読みたい本、観たい映画、行きたかった観光地・・・・・・
この戦争ですべてパーさ。

今の俺は。
お前のカナリアが自由に飛んでいたこの空に。
こうやって銃を撃つ。
撃つ。
撃つ。
こうやって何度も。
何度も。
子供たち、妻、家族、会社のみんな、友達に会いたい。



お前の国、日本もかつて国を護るために戦った若者が多くいた。
そのことを決して忘れるんじゃないぞ。

もうこの国にカナリアなんかいないさ。
もしかしたら、隣の国に行けばいるかもな。
この国と戦っている隣の国に。

隣の国でも俺と同じように、全てを投げ捨て。
ただただ銃を打っている男たちがいることだろう。

気を付けて行きなよ。
ほらヘルメット、防弾チョッキも着けて。
行け。
行けばわかるさ。
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