第19話 スープとパン

文字数 393文字



おいおい、新聞に出てるぞ。
カナリアが行方不明。
国を挙げて捜索だってよ。
お祭り騒ぎだな。
なんて書いてるんだい。
字が小さくて。
えーっ、探してる日本人ってのは、おまえさんなのかい。
そうかい、そうかい。
こんなとこまで、よく来たなあ。
疲れただろう。

うちでなんか食べるか?
腹も減っただろう。
ちょっと待ってなよ。
気にするな。
ちょっと待ってくれ。
かあちゃんに電話してみっから。

あーもしもし、温かいスープとパンを用意してくれ。
もう少ししたら、東洋から来た青年と一緒に帰る。
あと、10分くらいだ。
よろしく頼むよ。

ああ、何も気にするな。
今夜は泊まっていってもいいぞ。
体を少しやすめなさい。
困った時はお互い様さ。
そう教えてくれたのは、日本人の技術者さ。
私たちに酪農を教えてくれた。
俺様はもう引退して、今は息子が頑張ってるさ。
ささやかな恩返しさ。
そんな国から来た青年をほっとけるわけないだろ。
泊まっていきなさい。
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