第20話 最強兵器

文字数 1,411文字

 地球から二〇光年離れた所にある小さな星に、ある生命体が息づいていた。彼等の知能は高く、人類をはるかに凌いでいた。

 ある日、この星の支配者が満面の笑みを浮かべて部下に言った。

「ようやく最強兵器が完成したな」
「閣下、おめでとうございます」
「うむ。この重力波砲さえあれば、我々が全宇宙を征服するのも時間の問題じゃ」

 高らかに笑う支配者を見て、部下が怪訝そうに尋ねた。

「しかし閣下、果たしてこの兵器にはそれだけの力があるのでしょうか」
「なに? おまえは疑うのか」
「いいえ! 滅相もございません。ただやはり、一度は試してみませんと……」

 支配者にも部下の思いが伝わった。

「ふふふ……心配するな。その点は考えてある」
「ほう! と言いますと」

 支配者は出来上がったばかりの兵器を頼もしげに触っていた。

「この砲の最大射程距離は約二〇光年だ。しかも打ち出した時は直径が十センチの射出径だが、次第に広がって行き最大射程距離に到達する頃には、半径七五〇〇キロの範囲で全ての物を一瞬にして消し去ることが出来るのだ」
「それは凄い! それで」
「そこでじゃ。どこかに都合の良い標的は無いものかを探しておったら、丁度太陽の周りを回っている惑星で『チキュウ』という星があったのじゃ。そこは丁度二〇光年離れていて大きさも直径が一万三千キロ。この兵器の破壊範囲にすっぽりと入る。丁度いいとは思わんか?」
「そうですね。試してみるには、まさに打ってつけと言えましょう」
「私はこの星を狙ってみようと思う」
「それは良いお考えです。それでその発射はいつ?」
「無論、早い方がよかろう。今夜じゃ」

 二人はニンマリと笑うのであった。


 その日の夜、二人は広場に設置された兵器の横で夜空を見上げていた。

「まさに天も祝福しているようです。閣下、良い天気でよろしかったですな」
「うむ。全くじゃ。では早速準備をするか」

 支配者は兵器のコントロールボックスを開けると、幾つかの数字を打ち込み、さらに赤い大きなボタンのロックを解除した。

「では、いくぞ!」

 部下が濃いサングラスをかけ、両手で耳をふさぐようにすると、支配者は力を込めて赤いボタンを押した。

 すると兵器の上部に取り付けられている砲身の先が赤くなったかと思うと、オレンジ色の光線が夜空に向かって吸い込まれるように、真っ直ぐ進んで行くのが見えた。時間にすると三〇秒ほどであった。

「よし! 発射は成功だ」

 支配者は嬉しそうにボタンから手を放した。

「おめでとうございます。それで結果はいつ頃分かりますでしょうか」
「そうだな。重力波砲は限りなく光の速さに近い速度で進むから、チキュウに到達するのは二〇年ほど先かな。そしてその結果が我々の目に届くのは更に二〇年後じゃから、あと四〇年ほどすればこの兵器の凄まじい威力が分かるじゃろう」

 おおらかに笑う支配者の横で、部下は複雑な顔をしていた。


 重力波砲が発射されて二〇年後の地球。
 源三は朝起きると思いきり窓を開けてベランダに出た。新緑の香りが彼を包み幸せな気持ちにした。

「こんな気持ちのいい朝は久しぶりだ。きっといい事があるに違いない」

 ふと隣の部屋のベランダを見ると、いつも憧れている洋美の姿が目に入った。

「これはついてるぞ。洋美さんに声をかける絶好のチャンスだ」

 源三は隣の部屋との仕切り板まで行くと、思い切って声をかけるのだった。

「あの、洋美さん。おは









             ―了―
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