三章 今岡単独パート
文字数 1,718文字
どうした?
溜息なんかついて?
いえ、いろいろあってね……。
それにしても相変わらず、この寮の名前には慣れないわね。
そうか?
オレは面白くていいと思っているぞ。
あるわけないじゃない!
なによ、フリ●ンドールって!?
出オチ感はんぱないじゃない!
「おもしろっ!」って思ったけどな、オレは。
それはあんただけよ!
だいたいなんかくたびれた帽子がはじめ寮の名前を呼んだとき、
寮生の人たちもちょっと恥ずかしそうにしてたでしょ!
はて?
いったいフリチンド●ルの、なにがそんなにおかしいんでごわすか?
ちょっ……!
伏字の使い方間違えてるからね?
うん?
フリチンド●ルじゃあ、駄目でごわしたか?
強そうで、よか!
おはんも男なら、このロマンわかっとじゃなかか?
バカと言われるおぼえはなか!
そもそもバカなんは、おまんさァのほうじゃ!
言っちょいたじゃなかか!
呼びにくくはなか!
おいの名は鈴木権三郎(すずき・ごんざぶろう)じゃと、
なんべん言うたらわかっとか!
いやぁ、スーさんの怒鳴り声はいつ聞いてもおもしろいわ。
たまになに言っているのかわからないのが、またいいよな(笑)。
ん?
おいの言葉が聞きとりにくかは、しょうがなかことじゃって。
いちいち腹ぁ立てもはんど。
いや、そっちじゃなくてね……。
スーさんっていうのはいいのかって聞いてるの。
おいの名は鈴木権三郎じゃ。
敬意ば払(はろ)うて、スーさんち敬称つけて呼んでくるっとを、叱る道理はなか。
まぁよか。
今度から気ぃつけてくいやい。
これ以上とやかくは言いもはんど。
じゃっどん、ないごて溜息なんぞ吐いておじゃした?
…………それはもういいのよ。
まさか寮の名前に嫌気がさしただけってことはないんだろ?
それだったら別に今にはじまったことじゃないんだしさ。
(言えるわけないじゃない…………)
(またあいつらに憎まれ口をたたいたことに自己嫌悪しただなんて…………)
まぁ、いろいろ悩んことばあると思(おめ)もすが、
素直になるっとが一番(いっばん)大事じゃっど。
はて?
なんのことでごわしょ?
とぼけないでよね!
いくら召喚獣でもやっていいことと
やっちゃいけないことの区別ぐらいつくでしょ!
え?
なになに?
どういうこと?
もういいのよ!
もう私は部屋に帰るから、ついてこないでよね!
そいはすまんことをしもした。
では、責任ばとりもんそ。
え?
どこいくの?
うん?
ナオミさァの部屋ば決まっておりもんそ。
じゃっどん、心配じゃって、しょうがなか。
たとえばの話になりもすが、ナオミさァが着替えちょる最中に敵に襲われでもしたら、一大事じゃっど。
召喚獣としては助ける必要がありもんそ。
……それは一大事だね。
仲間としてオレも見捨てておくことはできないな。
そいでこそ、おいが見込んだよかにせじゃ!
じゃあ、決まりでごわすな!
(※注:よかにせ=いい男、見込みのある若い男性)