十三章 【剣術訓練】星崎・今岡コラボパート
文字数 3,046文字
剣術の実地訓練。
そう、剣術はなにも剣士見習いだけが習えばいいというものではない。
なぜなら召喚士や魔法使いだとて、実戦では剣術使いを相手に近接戦闘を行う場合だってあるのだから。
また、「将来はバランスのいいパーティーを組むので、前衛は剣士に任せる」という場合でも、剣士がどう動き、どう攻撃してくるものなのか、知っているのと知らないのとでは、格段の違いが出てくるものである。
それゆえこの授業もまた、召喚士見習い・剣士見習いなど専攻に関わらず合同で行う授業となっている。
校庭の剣術訓練場には、やはり当然のことながら、ナオミ、ルーチェ、レオナルドの姿もあった。
そして、彼らの前には威風堂々たる剣術師範が大剣を構えて立っていた。
ちょっと待ってよ!
どうしたの、ナオミ?
知ってると思うけど、召喚士見習いでも、
この剣術訓練は受けなきゃいけないんだよ?
そこはいいのよ!
そこは!
そうじゃなくて、
なんで剣術師範がゴリラなのかを聞きたいのよ!
アイコンのせいでオークっぽく見えるけど、
ウッホウッホ言ってるんだから、
ゴリラでしょ、あれ!
ゴリラって……。
知性があまりあるようには見えないのだけれど……大丈夫なんですの?
ああ見えて、強く賢く優れた剣の使い手であると見た
そうかしら。
って、あなたは?
はじめましてですわよね?
本日より鍛冶屋見習いとして授業に復帰した、諸君らと同じ1年ということになる
まだ膝は完治していないが、鍛冶と剣は得意としている。
此度の授業にはとても興味がある、と言わせてもらおう
さすがブラック。
獣人だけあって、さすがに見た目に惑わされないんだね。
たしかにあのゴリエール先生の剣の腕はたしかなんだ。
ちょっと待って!
あのゴリラ、ゴリエールっていうの?
でもってレオ、そこの獣人とも知り合いなの!
ああ、さっき食堂で会ったときに話したんだ。
見た目と違って、いろいろと見識が深いやつなんだぜ。
ウッホウッホウホウホ!
ウホウホウッホ、ウッホホウ!
ウッホウホウホ、ウッホッホ!
私語は慎むように。
貴殿らの戸惑いはわからないでもないが、
私が剣術師範のゴリエール三世である!
……と言っておるのう。
やはり凄腕か!
復帰していきなりこのようなお方と巡り合えようとは、運命の赤い糸が見えるようだ!!
これはまさに、鍛冶屋ではなく剣を握り修羅と化せという天からのお告げ!!
ゴリエール三世教官殿。失礼を承知で所望する。
このオレと模擬戦を――
うっ……矢を受けた膝の傷が……ッ!
む、無念……膝に矢さえ……膝に矢さえ受けなければ……!!
全然治ってないじゃありませんの!
というか!!
なぜここに学園長がいるんですの!?
通訳なしでも大丈夫な先生を雇うって考えはなかったの……?
ああ、なかったのね……。
そうよね。
この学園だものね……。
ウホ、ウッホウウホウッホウッホ!
ウッホウッホウウホウウホ!
ウホウホウッホ、ウホウホウッホ!
ウウホウウホウッホッホウ!
ウッホウッホウホウホ!
ウッホウホウホ、ウッホッホ!
さて、剣術訓練では実戦がなにより大事。
そこでまずは模擬試合をやろうと思う。
各組の剣士見習いのミライとレオ、
一先ず私にかかってきたまえ。
君らはそのいつも手にしている剣でかまわない。
私はこの竹刀で相手になろう。
…と言っておるのう。
ちょっと、待って!
竹刀ってあれ?
たしかに刃はついてないけど、
あれどう見ても
オークが持つような棍棒じゃないっすか!
興味深いと言わざるを得ないぞ、教官殿!!
ええ~~~~い(レオナルドに斬りかかる)
(ミライの腕を掴んで止める)
幻術によって、レオくんまで先生に見える。
どっちが本物か……こっちだね!!
(ルーチェを振りほどき、レオナルドに襲いかかる)
うおっと!
危ないな~~。
こうなりゃ、仕方がない。
なんとか現状ある手で、先生に一手しかけるしかないか。
ミライの斬撃を紙一重でかわしたレオは、そう独りごちるや、大胆にもミライに背を向け、相対すべきゴリエール先生へ、真正面から斬りかからんとした。
しかし一歩踏み出したはいいが、打ち込む隙がないと見てか、一瞬躊躇するレオ。
と、それを千載一遇の好機と見たミライが、この機を逃さじと、再びレオの背後から斬りかかってきたではないか。
危ない!
誰もがそう思ったはずだった。
が、これはレオの誘いであった。
なぜならレオはその攻撃がくるや、にやりと笑い、いとも簡単、ひらりとかわしてみせたからだ。
おかげで勢いの止まらないミライ。そのままゴリエール先生へと切り込む形となってしまった。
そして、レオはそこへさらなる上乗せとばかり、早くもその脇からゴリエール先生への二撃目を繰り出していた。
この連撃は、いかな先生といえど危うい!
しかし、ゴリエール先生は手にした棍棒を、その桁外れな膂力でふるい、何事もなく防いでみせたのだった。
ホウ。
ウホホウホ、ホホホウホ。
ウホウホウッホッホッホ、ウホホウホホウ。
ウホッホホ、ウホホウッホ!
ウホウ、ウホホウウホホ、ウホホホウッホ!
ほう。
おもしろい攻撃をするな。
バラバラなように見えて、連携が取れている。
お前たち、見どころがあるぞ!
しかし、上には上がいることを知るがいい!
……と言っておるのう。
こうなったら、主人公である私の真の実力を見せるわ!
そう! 私は舞い踊る恋の花!
超宇宙魔法美少女勇者ミライ!!
(剣を捨てる)
ファンのみんな! 私にミラ○ルライトを振って力を貸して!!
ラブリーキュンキュンフラワートルネェェェーーーードォォォォォーーーー!!
泣きとうなっ気持ちはわかっどん、
現実ば直視せんといけもはんど!
ゴンがわりとまともなこと言ってる!?
あれってそこまでのレベルなのね……。
しかも、ゴリエール先生は驚き、とまどっている!
どうする?
コマンド?
全員私の魔法で倒してしまえば、私TUEEE展開の幕開け!!
どこかの王様が王国騎士団に勧誘してきて、いっきに世界の頂点へ登っちゃうかも!?
ウッホ!
ウホウホウッホ、ウホホウホ!
ウホホホウッホ、ウッホウホウホウホウホ!
ウホホウウホホウッホッホ! ウホホ!
いかん!
打ち所が悪かったかもしれん!
止むを得ないが、今日の訓練はこれで終了!
以後も鍛錬を怠らぬように! いいな!
……というわけらしいよ。
動き回った後じゃっで、腹減りもしたな。
なんか食ぶっとしもはんか?
一人相撲で一人ノックダウンしたミライを、
急ぎ救護室へと運ぶゴリエール先生。
見た目とは裏腹な紳士なその態度に安堵しつつ、
一同はまたありふれた学園の一日を終えるのだった。