七章 【飛行訓練】星崎・今岡コラボパート
文字数 2,462文字
飛行訓練の実地授業。
冒険者見習いが習うのは、なにも座学の授業だけとは限らない。
いや、むしろ冒険者として独り立ちするには、実地の訓練は欠かせないものといえよう。
中でも、空飛ぶ魔物、またドラゴンやグリフォンなどの幻獣を相手するには、飛行訓練はなにより必須。
自ら飛ぶもあり、武器を飛ばすもありという観点から、この授業も当然の如く、召喚士見習い・剣士見習いなど専攻に関わらず合同で行う授業となっている。
校庭の飛行訓練場には、これも当然のことながら、ナオミ、ルーチェ、レオナルドの姿もあった。
今日は初めての飛行訓練だな。
ちょっと楽しみだったんだよな、これ。
あんたはいいわね。
なんか気楽で……。
武器を飛ばすのってなんか楽しそうじゃん!
オレ自身も飛んでみたいし、そっち覚えるのもありかもな。
……っと、先生が来たみたいだぜ!
諸君!
私がこの飛行訓練の授業を教える、カレン=ティーハーフだ!
この授業では飛行訓練の実地授業を教える。
たるんだ態度でいると怪我をするから、そのつもりでいたまえ!
そこのツインテールの女!
この授業で一番大切なのはなにか言ってみろ!!
気合ですわね!
気合は大事ですわ!
どうでもいいけどね。それよりお腹すいたなぁ。
ナオミ、なんかお菓子もってない?
あー、あるよ。
ビッ●チョコでいい?
スーさん!!
だから伏字の使い方間違ってるってば!
貴様らっ!
ひわいな無駄口を叩きおって!
人の話を聞いておるのか!
そこな幼女、なぜひわいなものを食べたがる!
って、○が伏せ字になってませんわよ!
どういうことですの!!
先生、早く授業をはじめて!
この世界の主人公である私の実力、見せてあげるわ!!
名は希望ミライ。地球からやってきた、自分がゲーム世界の主人公だと思いこんでいる痛い女の子です。
え? どうでもいい?
あ、そーすか。
もっとも、最強の主人公にして超美少女魔法剣士(自称)の私が負けるはず、ないんだけどね!!
「先生、早く授業をはじめて!」って言っておきながら
その後無視して話し進めようとするのはどうかと思うよ。
ほら、先生うろたえてるじゃん。
う、うろたえてなどいないッ!
ド●ツ軍人はうろたえないッ!
しっか~~し、さっきのツインテール娘!
貴様の答えはなかなかだったぞ!
そう、飛行に必要なのは気合と根性だ!
いい答えをしたので、
貴様の寮、ハッスルパブには10点をやろう!
そんな名前だったんだ……。
でもフ●チンドールよりはいいなぁ……。
なんて卑猥な名前なの!!
確かにシモネタの流れが出来ていたけども! だからってなぜ2つの名前をくっつけましたの!?
くっつけた時点でもう聞き間違いではなく、明らかに間違っているのがわかりますわよね!?
大体、なぜみんな伏せ字を使っている中で貴女は堂々と言いやがりましたの!!
真面目か!
で?
気合と根性で、どうやって飛ぶんですか先生!!(逆ギレ)
お前は大馬鹿ものかっ!
私は大前提をあげているにすぎない!
その他のこともまた大事に決まっているだろ!
それともお前はなにか?
料理に大事なのはまず塩と水だと言われたら
それ以外は一切使わない気か!
ついでにフ、フ、フ、フリ●ンドールも10点減点だ!
グミくれよぉ……
ええいっ、貴様らっ!
たるんどる!
たるみきっておるぞ!
罰として──!!!!
しかし、激高しすぎたのがよくなかったのか、
こぶしを振り上げてそう言いかけた瞬間、
カタンッ──、
乾いた音を立てて、カレンが付けていた仮面が地に落ちてしまったではないか。
咄嗟、自分になにが起こったのかわからず、しばし沈黙のカレン。
しかし、事態を把握するやいなや、さきほどまでの高圧的な態度などどこへやら、
大きくうろたえ、威圧感のかけらもない、黄色く甲高い悲鳴を上げたのだった。
きゃ、キャーーーーー!!
な、なんで……?
どうして、わ、私の仮面がっ……!?
そんな可愛い先生には、スイーツが合うよね♪
ということは……?
ヒ、ヒィッ……!!
の、呪われてなんか、
いないんだからねーー!!!!
身の危険を感じてか、生来の対人恐怖症のためかはわからねど、
カレンはお気に入りの般若の面を手に取るやいなや、それこそ、
「サラマンダーより、ずっとはやい!!」
と言わんばかりの猛スピードで飛び去っていったのだった。
現役トップクラスの風魔法の使い手という肩書どおり、
まさしく疾風の如く去っていったカレン。
その姿を目で追いつつ、生徒たちは呆気にとられるほかはなかったという。
しかし、これもまた彼らの日常。
ありふれた光景の一つであった。